■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

愛の告白(狭き門) 1968.12
   なかにし礼:作詞 中村八大:作曲 中村八大:編曲
   演奏:オールスターズ・レオン
   録音:1968.09.05 キングレコード音羽スタジオ

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
美しい曲です。オーケストレーションも分厚く素晴らしい。
「世界名作シリーズ」についての、なかにし礼さんの言葉を引用します。

それはちょうど「恋のオフェリア」がヒットしはじめたころのことです。
 ピーナッツが世界文学の名作を歌ったらきっとすばらしいものになるに
 ちがいないという声が誰いうともなしに聞かれるようになりました。
 題材が題材だけに解釈とか観点の違いは人それぞれでいろいろと問題が
 あるかもしれませんが、幼い日に読んだ時の感動や忘れられない情景が
 目に浮かんで下さればそれ以上の喜びはありません。
  作詩は全体の構成を考えて小生ひとりがたづさわりましたが、作曲は
 日本のポップス界をリードする巨匠連が顔を並べています。
 オーケストレーションも直接筆をおろした傑作ぞろいで、ピーナッツの
 ハイテクニックな歌唱と合まって、みなさんをきっとわすれかけた感動の
 世界へ連れていってくれることと思います。

更に、この曲の紹介文も引用します。
 アンドレ・ジイドの作品「狭き門」より。
 愛と徳に悩むアリサの日記を題材にして、女性なら誰でも一度は出会う
 愛の悩みを歌にしてみました。
  教会にひざまづいているアリサの姿を描いた、中村八大の曲は荘重な
 バラードで始まり、そして、品位ある恋のモノローグを奏でます。

率直に申し上げて、このシリーズの歌はあたかもクラシック音楽のように
とっつきいいものではありません。
だから聴きたくないなあ、でも、それでいいのでしょうか!!!
ここあたりに音楽観賞の本質的な問題があります。
いい歌じゃないから流行らないと信じ込んではいませんか?
流行るなんていうのは単に流行りそうな仕掛けで成り立っているんです。
特に近来の流行り歌は仕掛けに愚衆が踊らされているだけじゃないですか。

とっつきいい、とは、話題性がある、耳あたりがいい、調子がいい、云々。
これは現代だけじゃなく、「運命」「白鳥の湖」「春の祭典」なんていう
名曲中の名曲であっても初演は悪評で、後々で評価されているんです。
とっつきいい、というのは調子のいいプレイボーイ、プレイガールのように
中身はからっぽで味も素っ気も無い、長く付き合えない場合が多い。
クラシック音楽などは「一緒に歌おうよ、踊ろうよ」と誘ってはくれません。
だけど、じっくり付き合えて噛めば噛む程味があります。

この歌は、このシリーズはそういう感じです。良い宝物を残してくれました。
ザ・ピーナッツのファンになって本当によかったとしみじみ思います。
ピーナッツも後年は、
  ♪シスコ〜シスコ〜 かりそめの恋
  ♪あなたしだいで 今夜恋するかも
なんて受け狙いの下卑たフレーズ多発低俗歌謡路線転向を余儀無くされましたが、
「流行歌手ではないザ・ピーナッツ」も自分の感性を磨いて聴き込みましょう。
話題にもならなかったから、で聞き逃してしまうのは余りに自分を見失ってます。
他人の多数決で自分の好みの歌を決めるなんて貧しい精神を持ちたくないですね。
(ちょっと今回は過激に書き過ぎかなあ)

---------------------------------------------2001/11/03(Sat)投稿

<インファントの訂正犬>

クラシック・ファンの方から怒られそうなので訂正を入れます。
「運命」は初演不評ではなく、不評だったのは、交響曲第3番「英雄」でした。
彼(ベートーベン)は自信作だったのにショックを受け、マーケットリサーチを
行い(真っ赤なウソ)、曲が長過ぎるからなのか? と「運命」ではぜい肉を
削ぎ落としたとか。こっちは「田園」と一緒に初演したので好評だったとか。
伝説の作曲家も「受ける」にはどうしたらいいのか苦労してたんですね。