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♪青空の笑顔    1964.09
  作詞:安井かずみ 作曲:宮川 泰 編曲:宮川 泰
  演奏:レオン サンフォニエット
  録音:1968.07.26 イイノホール

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★* ★★★★ ★★★★

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ザ・ピーナッツの歌には底抜けに楽しい歌がいくつかあります。これもその一つ。
これだけ脳天気なメロディーとアレンジは余人では出来ない。宮川専売でしょう。
他人はどう思うかな、とか、全く考えて作っている風ではありませんね。これは。
私ら俗人は、レコードかけるのさえもどこか気恥ずかしくなるおおらかな曲です。

こういうのを聴くと、ここ20年位はこのような率直な歌がなくなったと思います。
どこかに照れがあるんです。かっこつけてるんです。誠実ではないんです。
どこかで隠してるんです。ありのままだ、とかを表面化するものあって嘘くさい。
今風の歌って流行ファッションの為に無理して聴いてる人も居るんじゃなかろうか?
だって、このクソ寒いのに超ミニ制服とルーズソックス。それでオーバー着てる?
この高校生は、寒いのか、暑いのか、一体、どっちなんでしょうか?
個人的には誰が考えたのか、あのスタイルは大傑作。グットデザインだと思う。
非常にユニークで、キュートだよね。本人達の意思とは逆に可愛いらしさがある。
だけど厳冬にあれは体に良くはない。親達は子供の健康にもっと気配りしなきゃ。
でも仲間もそういう格好だから寒くても無理して着てるんじゃないのかしら。
同じように流行って仲間が聴いてる歌を知らないと仲間外れにされるんで本当は、
どこがいいのかわからないのに無理して何度も聴いてるうちに「慣れてしまって」
難しいリズムパターンなのに若くて柔軟だから何とか覚えて歌えるようになる。
そんな感じではないのかな? 本当はもっと馴染みやすい歌が好きだと思うんだ。

話を宮川ワールドに戻すことにします。若い方だって宮川さんが好きな人も居る。
恐らく宮川先生は何処で何をしている時にもピーナッツの曲作りが意識にあって、
何かの拍子に閃くと、さささっと五線紙に書き付けちゃったんだと思います。
そんな時にはお酒を飲んで騒いでいても急に頭の中がピーナッツの歌声で新しい
旋律がハーモニーまで伴って充満してしまうのではないでしょうか?
普通の人である私でも考え事をしているとバス停や鉄道の駅を乗り越してしまいます。
そういう時は電車の騒音や女生徒さん達のよく通るおしゃべりなんかも聴こえません。
「心頭滅却すればミニスカートもまた眼に入らず」とか葡萄狩りに行った時聞いたぞ。
あれ、これは無念無想でなければダメなのね。無限夢想なら得意なんだけどなあ。

日本ポップス界の巨匠と敬称される大御所になられた先生ですが、いい歌を量産して
おられた頃のメロディーメーカー宮川泰はけっして著名人ではありませんでした。
むしろ作曲をしなくなってから有名になりましたが、ちょっと寂しい気がします。
音楽に関しては昔の人がやり尽くしちゃったから今はもうやることがないんだよって
弱気なことを言っておられますが当時と何も変わっていないんじゃないかと思うんだ。
もっと昔にはクラシックの世界であらゆる試みがなされていたんだから一緒だよね。
オリジナリティを創出するのはもう無理だとか言ってますが、全然そんなことはない。
宮川先生自体がご自身がオリジナリティ溢れてて、誰にも似てなんかいやしません。
「恋のバカンス」や「ふりむかないで」が結果的に何かの曲とコードが一緒だって、
そんなことまるで関係ないです。

昨日、南こうせつさんがNHKBSで「夢一夜」はベートーベンの曲が発想源だとか
言っていましたし、「上を向いて歩こう」だってベートーベンの曲に似てはいます。
「恋のフーガ」は明らかに「セビリアの理髪師:序曲」からヒントを得ていますよね。
でも全くアイデンティが違うんだから、ルーツ探しなんて意味ないんだと思います。
そんなこと意識もしないで次々に作っておられたんじゃないのでしょうか。
もっともっと長生きされて、作曲も今一度元気を復活させて欲しいなあと思います。
世の中には私の知らない曲が無尽蔵にあるようで、恐いくらいに知らない事が多い。
ピーナッツの曲は唯一の太陽のように感じていても、君は何も知らないんだねえ、
太陽程度の恒星は宇宙には数え切れない程あるんだ、それと一緒だよ。と言われそう。
でも、すぐ近くにあって、誰にでも、すごく分かりやすいじゃないんでしょうか?
分かりやすすぎて喰い足りない方も居るでしょうが、高度でなくてもいいじゃん。
シンプル・イズ・ベストとも言いますよね。易しいことは優しいことにもなるんです。
「青空の笑顔」はそんな歌です。貴方にも私にもとても優しい歌です。

2002/01/27(Sun) 投稿