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♪あの時、もし   1973.07
   作詩:安井かずみ 作曲:加瀬邦彦 編曲:星勝
   演奏:オールスターズ・レオン
   録音:1973.05.07 キングレコード音羽スタジオ
    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★ ★★★★

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あのエキサイティングな「情熱の砂漠」のB面曲なんですが..これは..ちょっと...
私には訴えかけてくるものが何なのか感じ取れず、空虚にサウンドだけが響きます。
そのサウンドも無理に作ったような感じで、必然性とか自然感がないと思います。
ザ・ピーナッツの後期の歌は現代の音楽と相通ずるような良さも悪さもあるような
そんな気がしてなりません。
どうしても「音」にしか、気持ちが向かないので、今回の主題はサウンドにします。

昭和47年8月の「さよならは突然に」から昭和50年3月の「浮気なあいつ」まで、
本当に突然にザ・ピーナッツのボーカルがモノラル録音状態になってしまいます。
勿論、録音はステレオなんですが、声の収録がマイク一本で録ったようなんですよ。
おまけに、その間にリリースされたシングルレコードはめっきり少なくなって、
 夜行列車〜指輪のあとに〜最終便〜情熱の砂漠〜あの時、もし〜気になる噂〜
 ひとり暮らし〜愛のゆくえ〜さよならは微笑んで〜お別れですあなた〜季節めぐり
2年半でたったのこれだけですが、これが全部、歌声だけがモノラルなんです。
そして、どういうわけなのか本当に最後の最後のシングルB面「よこがお」に至って
やっとザ・ピーナッツの歌声が久々にセパレートされたのです。
これは一体何事なのでありましょうか?

「さよならは突然に」から突然に録音プロデューサーのサウンドポリシーが変わった?
担当が他の方になったのでしょうか? 理由がさっぱりわかりません。
この録音方法は、はっきり言って、駄目です。
ザ・ピーナッツの魅力を失わせるような、無意味な方向転換としか思えません。
「よこがお」が良い時の録音に戻って、本当に良かった。悲しい程嬉しかった...。
でも、これでお終いなんて....(泣)。

ザ・ピーナッツの声を左右に寄せてしまうのはステレオ初期の録音手段でピンポン的
効果であって、専門用語でトンネル現象とか中抜けという実体感をそこなう方式だ。
というのが変革した録音エンジニアの言い分ではなかろうか、と思われます。
しかしながら、全くモノラルにしてしまって中央にピーナッツを定位させてしまうと
いうのもおかしい。二人はあくまで二人であってソロではないのだから。
妙に演奏だけが素晴らしい解像度で展開するものだからボーカルが死んでしまってる。
本当に残念だ。今さら取り返しがつかないが、惜しまれてならない。

中央寄りに低位させながら、ちゃんと歌声は分離していて、それで空間でハーモニー
が合成される、これがザ・ピーナッツの歌の魅力を活かす録音技術だと私は思う。
モノラルにしてしまうと、そこにエコーを付加すると土管の中でピーナッツが歌うと
いうような響きになってしまって全く冴えない。情けない。
どういう趣味? どういう耳の持ち主なんでしょうか?
以前のピーナッツのレコードは聴いてみなかったのでしょうか?
モノラルの方が好きなのでしょうか?

せっかく「月影のナポリ」から、瑞々しく伴奏と一体感のあるピーナッツの拡散する
歌声の麻薬的な魅力が、「可愛い花」〜「悲しき16才」の時代の内にこもるような
そこだけ別の音が鳴っているような感じになって楽しさが激減してしまった。
演奏だけを先に録って、後で歌声だけをペタリと貼付けたような違和感を感じる。
「恋のフーガ」あたりからマルチトラック化はしてるとは思うのだが、それらでは、
歌声の響きが左右に拡散しているので演奏とは馴染んでいるように聴こえる。
要はこちらを上手く騙してくれれば良いのである。騙しも技術なんだから。
しかし、上記期間の録音は全く頂けない。サウンド的に歌声はこもってしまっている。

シャボン玉ホリデーも終わってしまい。たまに出るレコードがこれなもんだから....
ピーナッツの良い時代は終わったんだな〜と、とても淋しく悲しい時代でありました。
ただし、今聴くと、現代の録音方式に近いと思うので、ミニコンポなどではグッドな
効果として他のCDとは逆に違和感なく聴けるという面もあるのかも知れません。
特にバックの演奏は最近の録音と比べてもクオリティはなかなかのものだと思います。
むしろ上手すぎるような整いすぎてるような、グラフィックアートのような感じで..
いま、そこでリアルに弾いているという感覚とは程遠いような..作り物のような...
完成度だけが異様に高いような....これも今風に近い線かもしれません。