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♪あの町この町  1971.02
     作詞:野口雨情 作曲:中山晋平 編曲:若松正司
     演奏:オールスターズ・レオン
     録音:1970.11.12 キングレコード音羽スタジオ
    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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この歌は「赤とんぼ〜あの町この町〜叱られて」とメドレーで歌われる2曲目です。
これを収録したLPはリリース年月からわかるようにかなり後期にあたります。
しかし、テレビやラジオ、ステージでは、ザ・ピーナッツのこの手の歌は何度も流れ、
既に定評があったと思います。
童謡・唱歌がこんなに似合う歌い手はザ・ピーナッツが古今白眉であると思います。
ポップス系歌謡曲路線の歌手ではありますが童謡歌手よりもフィットしています。
そんなに童謡・唱歌が上手なのか、というと、それは違う。上手いわけではない。
ではなんなんだ...それはね、童謡・唱歌の本質に適合してるのだと思うのです。

こういう歌を音楽学校で教わる発声法、歌唱法で歌うのは適切じゃないと思う。
そもそもが「傾聴する」歌ではないのです。自分で歌う、子供に聞かせるという
範疇の歌です。素人にも歌える音域なのに、無理な高い音域で歌うべきでもない。
安田姉妹も他の童謡歌手も皆そうだが、難しそうに付加価値を与え過ぎてる。
プロなんだからそうであって当然で、それが悪いというわけではないのですが。
ザ・ピーナッツは自然体だ。小学校〜中学校の音楽の時間に歌っているようなんだ。
女の子が二人で歌えばすぐにこれに近いものになると思う。商品にならない程だ。
だけど勘のいいスタッフはこれがどうして素晴らしいものだと気づいたと思います。
他のプロの歌手では得られない希少な温かみがピーナッツにはあるんだ、と。
地元の贔屓目で、ダ・カーポもお薦めしたいのですが、どうだ、みんなよく聴きな、
といったごう慢さが微塵も感じられない。そういう歌い方じゃないのです。

上手く言えないのですが、ザ・ピーナッツってプロ中の超一流プロではありますが、
一方では銭を稼ぐプロではないような面もあり、自我の希薄な歌手でもあるような、
自分ならではの世界を確立させて、なにがなんでも目立って、他を蹴落として、と
いった生き残りに汲々とはしていないんです。
童謡・唱歌を他の歌手より見事に歌ってみせようとも思っていないようなんです。
とても和む歌になっています。現代風に言うと「癒し系」。

あれもこれも捨て難いのですが、やっぱりこれのCDは何が何でも手元に置いて
たま〜に聴くとすばらしいです。まだの方は死にものぐるいで入手しましょうね。
私は「里の秋」の旋律がこっちの琴線と共鳴して、うっと胸苦しくなります。
必聴!
必聴! なんて書いたけど、これ10枚組ドリームボックスにしか入っていないのか!
大至急、キングレコードさん何とか復活してよ。みんなが聴けないじゃないか。
ついでにこの収録曲も全部入れてしまえば、ちょうどCD一枚になるんだけどなあ。

追伸/2009.04単独CDアルバムとして,どちらもリリースされました。