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♪あるおちゃめな物語 (昭和36年3月録音)
   作詞:横井 弘 作曲:飯田三郎 編曲:飯田三郎
     

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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まあ、なんて可愛らしい曲なんでしょうか!
こういうのを発展させてメルヘン歌謡路線みたいなものがあってもよかったのに。
好きだなあ。ザ・ピーナッツのファンにならなければ一生巡り会う機会はなかった?
そう思うととても幸福感が胸に充満します。そんな歌だ。
私にとっては、ザ・ピーナッツは他の歌手とは全く別次元の存在なので、この歌は
まるで天国から舞い降りて来たような、この世のものとは思われぬ秘宝です。
お金で買ってもいいものなのかしら? よくぞ残してくれました。

昭和36年3月録音ですから、私がピーナッツ贔屓に目覚める前なので、この歌が一体、
どういう経緯で作られ、どこかで歌われたことがあるのか、など一切不明なんです。
キングレコード創立60周年特別企画としてザ・ピーナッツ・ドリーム・ボックスに
収載され、慌ててこれを購って初めて耳にした歌でした。
曲のタイトルからして、これは期待できそうだと直感したし、また期待以上だったし、
まだ他にもこういう録音残っている可能性は、などと欲張ってしまいたくなりました。
なんだよ、こんなのつまんない、と感じる方々が多いのではないかとも思いますが、
これだけ自分の趣味趣向にフィットし、感情周波数が一致してしまうのが恐ろしいと
感じるほどにこれは私のツボにぴったりです。

作曲の飯田三郎さんはこの年に後でリリースした「今池音頭」でご縁がありますね。
そちらでは高橋掬太郎さんと組んでますから、啼くな小鳩よ&ここに幸ありコンビ。
作詞の横井弘さんは「心の窓にともし灯を」「いつも心に太陽を」でもお馴染み。
キング・レコード専属という線から生まれたものだという推測は成り立ちます。
しかし、この歌は、あっても当然のようで、また、唐突のようにも思える不思議さ。

この時期にもしレコード化されていれば「心の窓にともし灯を」に次ぐオリジナルの
第二弾ということになっていたわけで、まだ宮川先生の作曲路線が始まっていない。
また、シングル盤を企画したにしては、AB面として組み合わせる相手がいない。
ポップスカバーの「十七歳よさようなら」と「しあわせがいっぱい」の狭間にあり、
この歌を歌ってどういう売り込みをするのかの流れが見えてこないんです。
推測ですが、とにかく、いい歌が出来たので、録音だけはしておこうじゃないか、と
収録はしたものの、適当なカップリング曲がなかなか出来なかったんじゃないかな?

あえてオリジナルをリリースしなくても、ザ・ピーナッツの出すカバーレコードは
かなり堅実に売れている時期だったと思います。
レコード会社としては勿論、爆発的な大ヒットが生まれるのは嬉しいのだけれども、
安定した企業活動としてはほぼ着実にある一定の枚数を販売出来るザ・ピーナッツの
存在は経営者や従業員としても有り難いものだったのではないかと思うのです。
カバー曲なんだから箸にも棒にも引っ掛からないような愚作は元々ないのですから。
でも遂に発表出来なかったのは製作した関係者は残念だったでしょうね。
しかし、30年間も倉庫に眠っていたとはねえ。

私なら、これ一曲だけでもし2万円というプレミアがついてても買ってしまいます。
だからドリーム・ボックスというのは本当に夢のような超お買得品と感じました。
この古色蒼然というか懐かしい風情の演奏、録音もそれがたまらなくいい感じです。
宮川先生の編曲のようにオカズが沢山ついてこない、あっさり味もなかなかですし、
演奏陣のコメントはなくまた、大掛かりではないのですが、キング・レコーディング
オーケストラというイメージが当てはまる年輩の枯れた職人芸のような佇まいです。
コンガというラテン打楽器の皮を指で擦って発音させる「ム〜」という音もいいよ。

それにまあ、なんてチャーミングなピーナッツの歌声の響きなんでしょう。
鈴を転がすような、という形容はこの時代のザ・ピーナッツの歌声を表わすための
言葉として世に存在するのではないか(笑)と思ってしまいたくなります。
こういった懐古ムード漂う曲なので、なんかこれレコードで聴いてみたいな〜、と
ないものねだりもしてみたくもなります。

レコードジャケットはどんな感じのデザイン、イラストが似合うのでしょうか?
ピーナッツの背中に妖精の羽をつけて...あれ、それは、あのモニュメントのLP
ザ・ピーナッツ・ラスト・ライヴ風になってしまって..そ..それは悲しいな....
この曲を聴いていると時間の流れる速度が現世とは違って時計の針がゆっくりで、
10番〜20番と歌詞があって、いつまでも終わらないでほしいような気もして、
いや、ほんとにタイムカプセルを開けたような気持ちになる素敵な歌だと思う。
もう一度、子供時代に戻ってテレビでピーナッツの歌を見たい、聴きたいよう!


2003年4月24日この曲を作られた飯田三郎先生が90歳で逝去されました。

ご冥福をお祈りします。