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♪あれは十五の夏祭り   1961.8
  作詞:岩谷時子 作曲:宮川泰 編曲:宮川泰
  演奏:シックス・ジョーズ
  録音:1961.7.24
  ●あれは十五の夏祭りの踊り方を見る
  ●スクスクの踊り方を見る
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★*

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宮川先生によるザ・ピーナッツのオリジナル路線の第一曲目です。記念碑です。
ここからすべてが始まったというわけです。
注目すべきは「ニッポン放送、ザ・ピーナッツ、今月の歌」というジャケット見出し。
ニッポン放送で毎朝7時から10分間「ザ・ピーナッツ」という番組がありました。
これはDJ的な構成ですが、レコードをかけるのではないのです。
伴奏はすべてシックス・ジョーズが行い、録りおろしの音源(テープ)を用います。
一〜ニ週間分をまとめて収録されていたようです。

天気予報もあって、それは何種類か用意してあるピーナッツの録音を流すんです。
だからピーナッツが予想したのではないのですが、ピーナッツの声で言われると
お天気も絶対にそうでなければならないような気がして、外れることがあっても
それは天気の方が間違えたに違いないと(笑)信じておりました。(嘘です)
このラジオ番組がいつから始まったのかは知りません。
「ザ・ピーナッツ」という番組タイトルも、そのまんまやんけ、で凄いですよね。
今月の歌というコーナーがあり、毎月、岩谷時子・宮川泰コンビで新曲を作るんです。
だから、い〜っぱい作ったんです。

私がこの番組を聴き始めた頃に、今月の歌で歌った歌のアンコール希望ハガキがあり、
以前に放送したものとして「あれは十五の夏祭り」をやりました。
いい歌だな〜とは思ったものの、一ニ回で全部覚えられるものじゃありませんでした。
あとでレコードを手に入れた時は狂喜乱舞でした。
私が始めて買ったレコードは「星条旗よ永遠なれ」でした。(爆)
2枚目が「インファントの娘」です。お金を貰って、自分で買いに行きました。
3、4枚目が「スクスク」と「あれは十五の夏祭り」です。

これは、お袋が仕事の帰りに買ってきてくれたんです。
ザ・ヒット・パレードでは首位連続中でしたので欲しかったんです。
「スクスク」というレコードが2枚あったんだよと母はいうのです。
勿論、お気付きのようにもう一枚は「スクスクドール」で、スクスクじゃない(笑)。
だけどA面はラジオで聴いたあの歌なんで、それはそれは嬉しかったな〜。
母は、15円のバス賃を節約して駅から歩いて帰宅したんですよ。
それなのに、300円のレコード2枚買ってくれたんです。私の母は世界一です。
あれは十四の夏でした。

そういう思い入れもありますが、それ抜きでも、とても素晴らしい歌だと思います。
誰にでも作れそうなシンプルなメロディーですが、宮川作品に常に感じられる音符の
温もり、人間愛の迸りの萌芽がもうここにあるんです。
宮川節はお洒落でゴージャスなのが相場ですが心情ベースはいかにも日本的と思う。
演歌とは違うけど演歌的な感情がメロディーに滲み出てると思います。
だから知名度云々じゃなくて、これも立派な宮川作品だし、ルーツはここですよ。
この歌を作ったというだけで、どういう心根の方かがよーくわかりますよね。
岩谷時子さんにしたって、ここが心優しいオリジナル作詞の原点なんだと思うのです。

♪私がしょってた花笠の紙の桜も赤かった
 ★いいな〜、紙の桜。赤いんだ。内職で作られたようなものなんだろうな。

♪あのこと一緒に噛んでいた紙のニッケも甘かった
 ★私の地方では「ニッキ」と言ったと思います。紙に沁みこませたシナモン。
  なんかまた舐めてみたいような気にもなるような。でも、不味いかもな〜。
  初恋の味なのかしら?

♪ネオンがぼんやり滲んでる空を見ながら泣いたっけ
 ★きっと村祭りではなくて、下町のお祭りなんでしょうね。
  胸キュンのフレーズ。来年十五歳になったらそういうこともあるのかな〜とか
  思ったけれども、何も起きなかったな〜(ずっと寂しい青春だったな〜)。

スクスク音頭なんて書いてありますが、これ全くこじつけと便乗なんでありまして、
「ギーコ、ギーコ」というギロ(Guiro:リズム楽器)の音を付加させただけです。
そもそもスクスクリズムは、1、2、3、4、5、6、ス〜ク、ス〜クなんです。
1〜6までは自由に踊って、7拍と8拍めで腰を横にス〜ク、ス〜クと振るんです。
しかし、スクスク音頭とネーミングしなければ世に出なかった歌なんで良かったス。
だってラジオで歌って消えたオリジナルはいっぱいあったんだから。惜しいなあ。

私もみんな忘れちゃったけど、今でも歌えるオリジナルの「枯葉」が良かった。
ラジオでの放送はバンドがシックスジョーズであることとアレンジが違いました。
曲そのものもラジオが先行なんで、お試し版みたいな感じでした。
この歌も「ふりむかないで」や「山小屋の太郎さん」「二人の高原」なんかも
あとでレコードになったのとはメロディーそのものも微妙に違っていたんです。
レコード版がやっぱり良いのです。
宮川先生はテレビではアホなことばかり言ってますが、けっこう考え抜いていて
最良の結果に練り上げていったのではないかと思います。
決してちょこちょこっと出来てしまうなんてことはないだろうと確信します。

ザ・ピーナッツは歌と踊りだけじゃなくて、舞台でのお芝居も相当お見事でしたよ。
歌手やバンドの人というのは元々が間がいいし、声の高さが実に適切だと思う。
基本的に歌も演技も似たところがあるのかも知れませんね。
でもラジオのトークは向いてなかったなあ。ジョークもアドリブもないんだからね。
ぜ〜んぶ台本を読まれていたと思います。そんな感じでした。要するにクソ真面目。
練習やリハーサルの積み重ねがピーナッツをピーナッツにしているんだ。
現代ではそういう芸はうっとおしくて皆が嫌がるのかも。軽薄な時代だからな〜。
今はふざけ方が面白いなんてのが受けるんだから。金を取れる芸じゃないよ。

                    2002/06/25(Tue) 投稿



<パンプさんからレス> - 2002/06/25(Tue)
「ザ・ピーナッツ」というラジオ番組があったのには驚きです。
ボクも聴きたかったなぁ・・
それにしてもインファントさんの感性の豊かなこと!
何も起きなかった15歳は残念でしたね(笑)
そういう意味では「寂しい青春だった」かもしれませんが、
お母さんの優しいエピソードにはグッときました。
愛されていらっしゃったんですね。
この曲、わたしにはあまり馴染みのないものでしたが、
インファントさんのご幼少の頃を想像しながら
微笑んで聴けそうです。


(切り抜きを添付しました/2007.12.22)