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♪愛しい人にさよならを    1969.03
  作詞:なかにし礼 作曲・編曲:すぎやまこういち
  演奏:オールスターズ・レオン
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★* ★★★★★ ★★★★★

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まだ「シングルス」という2枚組4セットのシングル盤コンプリートのCDが
発売される以前に「アナザー・サイド・ピーナッツ」というCDも出ました。
それはシングル盤のB面推薦曲を集めたものでありました。
何故このような企画が生まれたのか、それは、ザ・ピーナッツのB面は貴重だ!
それに企画者が気づいたに違いないと思うのです。
その思いを徹底させたのが「シングルス」ではなかったのか、そうに違いない。
シングル盤のB面までも全曲完全収録。これは偉業であり、異仰ですよね。

ザ・ピーナッツはご存知のように渡辺プロダクションに終始所属していました。
そして、引退まで、ずっとキング・レコード専属でもありました。
渡り鳥がいけないとまでは言いませんが、これが特徴であることは間違いない。
キング・レコードはデビューの前から、伊藤シスターズに執心であったことは
担当プロデューサーの牧野さんの手記にもあります。
全社的に支店長、セールス、宣伝の全スタッフが乗っているところを渡辺社長に
見せて(インチキもあったようですが:笑)、遂に東芝、ビクターを出し抜いて
ザ・ピーナッツとして専属に迎えたそうです。

その並々ならぬ熱意は引退迄〜引退後も終始一貫して変わらなかったと感じます。
人気・販売実績というものを超越したスペシャルサービスが行われていると思う。
引退して四半世紀以上も過ぎた過去の歌手でありながらも延々と続くCD化現象。
恐らく当時のスタッフは定年退職されておられると思うのだがザ・ピーナッツは
キング・レコードに代々伝わるお宝である伝説が活きているのでしょう。
その証拠に、当時の出来うる限りの最高のクオリティで録音がなされています。

録音テープというのは磁気を保持するものですから年代を経ると徐々に放磁という
現象が起きてしまい、とくに高音(高い周波数)ほどその傾向が顕著です。
ところがザ・ピーナッツの復刻CDでは殆どそんな様子は感じとれません。
例えば「月影のナポリ」はステレオ録音であり、この時点で歌謡曲ポップスでは
ザ・ピーナッツは内外でも数年先行した最新鋭の録音であろうと思われます。
これがいまだに目の覚めるようなクリアさで再現されいささかも色褪せていない。
これは大変なことだと思うのです。マスターテープの素材は恐らくハリウッドで
鍛えられた米国のものと推察されます。まだまだ国産のは著しく未熟でした。
それを大切に環境の影響を避けて経年変化を最小限度に喰い止める保管の配慮を
されていると考えられます。デジタルならばこんな心配は要らないのですが。

前置きが長くなりましたが、さて、その「アナザー・サイド・ピーナッツ」にも
収録されていた、言い換えれば、B面ベスト20に入ったということにもなる
佳曲がこの「愛しい人にさよならを」です。
ピアノが中央で単調な和音を奏で、左右に散ったミュート付きのトランペットが
不吉な感じのする印象的なメロディーを奏でます。ドキドキする導入部です。
恐らく、すぎやま先生はこのアレンジ込みでの全体的なイメージを抱いて曲想を
練られたと思われます。編曲とメロディーが一体化していて分離不可能です。
録音も秀逸。この頃からマルチ録音へ移行したように感じられますが同時録音を
経験されたスタッフによる確かな耳で作られた音場は破綻がありません。
あとは聴いて頂くしかありません。
B面はスタッフが好きなことを思いきってやった場であったのかもしれません。
<教訓>B面にも捨てる曲は無い。

                     2002/08/24投稿



<ウシオさんよりレス> - 2002/08/25


> <教訓>B面にも捨てる曲は無い。

「知らなかった」「銀色の道」「愛のフィナーレ」「愛しい人にさよならを」
「たった一度の夢」「夕陽に消えた恋」「しあわせの誓い」「青白いバラ」
「北国の恋」「恋のカーニバル」「ひとり暮らし」「季節めぐり」・・・

まさにピーナッツの「アナザー・サイド」的側面を引き出すかのような楽曲群。
活動当時は注目されなくても、CD化によって再び陽の目を見ることになって、
僕にとってはピーナッツの幅広さを再認識することとなったのでした。