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♪おはら節(鹿児島県民謡)
録音:1970.06 初発:1970.08
編曲:宮川泰 コーラス:フォー・メイツ
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★ | ★★★ | ★★★* |
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このCD(元は8トラック・テープ商品)で歌っているのは「鹿児島おはら節」です。
ほかにも「秋田おはら節」「津軽おはら節」がありまして、この津軽と秋田の民謡は
曲の成り立ちが姻戚関係にあるようですが、鹿児島のはルーツが全然違います。
興味のある方は「おはら節の由来」でネット検索をすれば沢山の情報が得られます。
しかし、ピーナッツのおはら節は土着感覚とは程遠く、素材として民謡を扱ったので、
本来の原曲の持ち味を活かしたものではなくて、アレンジとコーラスの魅力が聴き処。
そもそもが、どのおはら節にしたって、ザ・ピーナッツの歌としては似合わないなあ、
幾多の民謡の中でも、これはちょっとな〜というのが聴く前の率直なイメージでした。
だから、民謡だというイメージを一旦捨ててしまった方が良いのかも知れません。
ようするに狙いとする処は「みんなが知っている歌をピーナッツが歌うとこうなるよ」
という面白さ楽しさ、音楽の多様さを味わって頂こうというのが主旨なのであって、
民謡の真髄を聞かせようなどとは夢にも思っていないのですからそれは期待出来ない。
そんなことは簡単に想像が出来るでしょうから、買って文句いう人もいないでしょう。
アレンジは、一体何が始まるのだろうかという大変にユニークなものでありまして、
「おはら節」とは一番遠いところにある音楽とを融合させた奇妙さが売り物です。
星新一さんというショートSFの第一人者が作品作りの秘訣として、全く異なる物を
一つの話で結び付けると面白いものが出来ると語っておられました。
また、多くの発明や、特許、実用新案などもこのような発想に基づいているようです。
つまり、民謡をアレンジしたというより、新しいモノを作ったという線だと思います。
さて、面白いなと私が感じるのは、じゃあ、ピーナッツ自身はどのようにユニークな
解釈や味付けで歌っているのであろうか、という点です。
これが何もないのですねえ。ここが、ポイントだと思うのですよ。
ザ・ピーナッツさんたちというのは極めて常識的な人間性の持ち主だと感じますね。
周りのスタッフが次々に新しいアイディアを持ち寄ってきてそれぞれの担当分野での
得意な面を活かし、総合的にサポートするという優秀なチームワークだったのでは。
ピーナッツ自身も勿論、勉強も訓練も工夫もしたのではありましょうが、基本的に
古風で伝統的な歌い方ではないかと思います。歌唱には新しさは感じられません。
これは民謡だけではなくて、歌唱そのものは常にオーソドックスなのであります。
それが悪いわけではないのです。歌までハイカラになってしまっては対比としての
面白さが逆に失われてしまうからです。
世間で評価されているイメージとは違うかも知れませんが、私はザ・ピーナッツは
ポップス歌手よりも基本的に歌謡曲向けの歌い手という感覚を抱いているんです。
ただし、アクが強くないのでフレキシブルで何でもいける面があるとも思います。
こんなジャズ風のアレンジをされる宮川先生にも同じ感覚を私は持っています。
偉大なポップス・アレンジャーというのとは違うのではないか?
歌謡風のメロディーに私は自分の親戚ではないかと錯覚するほどの親しみを感じます。
ピーナッツも宮川さんも日本人の感覚から脱却出来ない方達だと感じます。
また、新しい、とか、進んでいる、という面も持ち合わせていなかったと思われます。
これはとても重要なことです。人間の感性、日本人の感性なんて殆ど不変なのです。
新しい、とか、進んでいる、という音楽は、実は「目先を変えているだけ」と思う。
それらは実は本物ではないのではなかろうか?
本物の良さが判らなくなっているのは音楽の世界だけではなくって、今の風潮です。
とにかく世の中に「落ち着き」がないのです。じっくり吟味するゆとりがないのです。
音楽まで近道で味わおうとしているように思います。
さて、視点を変えて、いつもピーナッツを強力にバックアップしているチームの話。
スクール・メイツから選抜〜結成されたと思われるフォー・メイツがそれです。
この歌でもそのフォー・メイツの活躍が大きく、ピーナッツと対等に歌っている感じ。
この掲示板でメンバーを紹介頂いたので、再録しましょう。
ベース :山崎イサオ バリトン :吉野カズオ
セカンド・テナー:渚 一郎 トップ・テナー :川原タケシ
ベースの方の声が特に素晴らしいですね。この「おはら節」ではソロも歌っています。
聴き方を変えると、フォー・メイツ大活躍というピーナッツCDが沢山ありますよ。
投稿日:2003/01/25