■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

♪カカオの瞳    1961.07
AUGEN HAST DU WIE KAKAO
   作曲:Rigual-Bradtkte 作詞:音羽たかし 編曲;宮川泰
   演奏:キング・シンフォネット
   録音:1961.06.13 文京公会堂
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この歌をピーナッツはカテリーナ・バレンテ風に歌っているとライナーに書いて
あります。後年には、そのバレンテさんのショーにも出演したり、おつきあいが
生じるのですが、これも因縁でしょうか。
バレンテさんのLPも買いましたが、この曲は入っていませんでした。だから、
彼女の代表的なヒットというわけでもなさそうです。
面白いことに、島あけみさんという歌手が「スクスク」とこの「カカオの瞳」を
歌っていたんですね。(当時は逆にこれは知りませんでしたけど)

さて、ピーナッツの「カカオの瞳」ですが、「スク・スク」のB面なんだけど、
私、めちゃくちゃ大好きです。これは絶対にお似合いの歌ですよね。
以前も書いたけど、最初に買ったのが、インファントの娘/草原情歌のシングル。
スク・スク/カカオの瞳、と、あれは十五の夏祭り/スクスクドールが同時で、
これが、2、3枚目だったのです。だから、とにかく聴いた聴いた、何回も。
当時はモノラル電蓄だったけど、それ以上の贅沢な音を知らないのだから幸せ。
たぶん、今、聴いたら耐えられない音だったと思う。

ザ・ヒット・パレードでは当時「スク・スク」がず〜と第一位を独走中であって
この「カカオの瞳」は、8位くらいまでしか行かなかったと記憶している。
このベスト・テンは中学2年の私でも、これはハガキの投票で決めていないな?
とか、疑ってましたね。(笑)
ミッキー・カーチスのヘラヘラとした語り口でも、そういう感じが滲んでた。
どうもプロダクションを含めた制作者側の意図で順位をつけているのではないか?
だって、視聴者の投票で作るんじゃなくて自分達がリードしたいと思うのが当然。
また、子供の私でも、それが悪いなんて全く思わなかった。ショーなんだから。

つまり、A面のスクスクが売れてくれれば良いわけで、B面を強調する必要性は
なにもないから、スクスクばかりが、キャンペーンの主役になっていたのだった。
こういう仕掛けが何となくわかったものだから、流行らない歌はつまらない歌だ
という誤った固定観念を持たずにすんだ。
スクスクもいいけど、私は、こっちが大好きだし、これ、いい歌だと思ってる。
いきなりドイツ語が出てくるのだけど、モスラの歌でファンになった私にとって
歌詞の意味なんかあまり問題ではなかった。響きが良ければそれでよしなのだ。
この癖が抜けないから、いまだに歌詞軽視症。覚えやすいのが好きなだけ。
シーシーとか、ノーノーなんて声が、いや、本当に可愛くて、こういうの好き。

私がこういうものなのかあ〜と不思議に感じたのは「演奏メンバー」の多様さ。
最初の一枚が、インファントの娘で、キング・レコーディング・オーケストラ。
レコードの録音なのだから、レコーディング・オーケストラという楽隊なんだな、
と、そう思っていた一枚だったのでしたが。
あれは十五の夏祭りでは、AB面ともに、シックス・ジョーズ。
そして、スク・スク/カカオの瞳は、キング・シンフォネット。
レコード一枚づつ、伴奏する楽団が違うのですね。凝ってるものだと思いました。
それとよくわかんないのが、ジャケットに書いてあった「指揮:宮川泰」でした。

そりゃもう、今なら全然、ああ、またやったのね、てなもので見慣れた風景(笑)。
だけど、中学生の私は「指揮」というものは大専門家がやるもんだと思ってました。
宮川泰さんという方が、頭をスポーツ刈にしてピアノの弾いてるお兄さんなのだと
はザ・ヒット・パレードを見ていればわかるけど、指揮という風貌じゃない(笑)。
それに踊ってばかりいるけど、スマイリー小原さんは指揮のエキスパートの筈。
この方が一緒にいるのに、なんで、宮川さんが指揮をするのだろう。謎だらけ。
アレンジャーが指揮をすることが多かったというのは最近知ったのでありました。

なんとなく雰囲気はシンセサイザー的なサウンドにまとまって聴こえるのですが、
この時代にそんなものはありゃしないのです。ここを錯覚してはいけません。
右でハモンド・オルガン(しいていえば電子オルガン)とティンパニーが大活躍。
このティンパニーの「ボゥ〜〜〜〜ン」という上昇音は職人芸でありますぞ。
右ではバリトン・サックスと思われる図太い音と、華麗なフルートが対抗します。
中間ではドラムセットが軽快にリズムを刻みます。
この演奏のノリはペレス・プラード楽団の「パトリシア」を彷佛とさせます。
この左右に展開したザ・ピーナッツのコンデンサーマイク特有の美しさの極みを
感じさせる歌声。こういうのは本当にいい音だな〜と痺れてしまいます。

詳しい検証をする興味はないのですが、ザ・ピーナッツは流行りうたの歌手の
録音としては日本では抜きん出てステレオ録音を行った先駆者である筈です。
ただそれだけじゃなくて、その最初の録音から素晴らしい出来映えなのですよ。
むしろ、ステレオ収録が始まったころの時代の録音が信じられないくらい見事だ。
これは、日本でのトップクラスが、控え目に言ってもキング・レコードの最高の
録音技師がご担当されたに違いないと私は考える。

こんな凄い録音シリーズは並大抵の技術では出来っこない。
まだ豊かな時代ではなかったにせよ、最小の規模の機材ではあっても、その品質は
世界最高レベルのマイクやレコーダーなりテープを使っていたに違いないのです。
そしてその機材ごとの特性を活かして、ピンポイントに近い、最適の空間地点に
セッテイングして、これ以上ない、という巧みなバランスで録っておられるのです。
以後も恐らくザ・ピーナッツの録音をするというのは仲間内でも名誉だったのでは。
不思議とも思えるほど沢山のザ・ピーナッツCDが今も作られている現実の陰には
こういういいものを作ったという誇りがキングレコードにあるからではないのか。
私は時代を超越した名録音。文化遺産としての録音芸術がここにあると信じます。

              投稿日:2003/02/25



Re: <アンカーさんより>2003/02/26


>右でハモンド・オルガン(しいていえば電子オルガン)とティンパニーが大活躍。
>このティンパニーの「ボゥ〜〜〜〜ン」という上昇音は職人芸でありますぞ。

右のスピーカーから聞こえるのはハモンド・オルガンなんですか。
僕もこの当時はまだシンセサイザーはないはずだから
どんな楽器なんだろうと思ってました。
あとはやっぱりティンパニーの「ボゥ〜〜〜〜ン」という音、
これがいっそう効果的で大好きです。
カテリーナ・ヴァレンテの「カカオの瞳」もピーナッツのものとそっくりです。
(というかピーナッツの方があとからカバーしたんですよね)
演奏時間もカテリーナ2分22秒、ピーナッツ2分23秒。
ほとんど何もいじってないというカバーです。
変にあれこれいじる必要もない曲なのでしょう。

でも一つだけ、
カテリーナさんのほうにはピーナッツ盤ほどティンパニーは
使われていないんです。
特にピーナッツ盤の一番最後の「ボゥワ〜〜ン」はこれで決め!
という感じですごく良いですよね。
カテリーナ盤にはこれはありません。

これは宮川先生のサービス精神なのかな。
こうすれば聴く人がきっと楽しいだろう、という気持ちが
表れているようで、本当にピーナッツにぴったりの
楽しい曲だと思います。



Re:<インファントの楽器犬2003/02/26


ハモンド・オルガンについて(電気オルガンと書いた方がより適切でした)。

http://www.m-net.ne.jp/~takagih/hammond/beginner/index.html#Organ
それから、左にはギター(松宮庄一郎風?)も活躍してます。ベースもね。
この録音は少人数編成です。しかし際立った名人芸が聴けます。