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♪監獄ロック(民音ステージライブより:1972.12)
JAILHOUSE ROCK
  作曲:ジェリー・レイバー 編曲:宮川泰 演奏:高橋達也と東京ユニオン
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★ ★★★★

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1957年のエルヴィス・プレスリーの主演映画「監獄ロック」の主題歌。
そりゃもう、日本人歌手の誰が歌っても彼にかなうわけがありません。
それでも懐メロポップス番組を作るには、
 ♪しゃーれた看守の計らいで監獄でパーティがあったとさ、
というこの歌が定番曲です。
別にザ・ピーナッツが得意にしてたわけでもなく、むしろ歌わない方でした。
しかし、ポップスタイムトンネルでポップスメロディーの総決算となれば出て来て
当然といった曲です。ピーナッツが歌うとやっぱりかわいいもんですね。

私はこのロカビリーというのが余り得意ではありません。
賑やかな歌が嫌いなわけではないのですが、聴く人までが大騒ぎするのはどうも...
そもそも乱痴気騒ぎをするためのBGMのようで、聴くという姿勢で楽しむ音楽では
ないのかもしれません。
そういう意味では何とも不思議なジャンルがここから始まったのでしょうか?
だからポップスのスタンダードという位置付けにはなっていてもロカビリーの時間は
風呂に入ってしまったりするんです。

ロカビリーとロックンロールはやや違うらしいが、もうそういうのが全然わからん。
「踊る」という行為とペアになって成り立つ音楽のようでもあります。
同じ踊るのでもグレンミラーとかベニーグットマン、 トミー・ドーシーなんかだと
ステレオの前でじっくり聴ける面もあるのですが、ロカビリーはそうはいかない。
一人でじっと聴く音楽ではないような気がします。
だから下品だとか言うつもりはなくて、楽しみ方が違う音楽なんだなあと思います。
自分へ音楽を取り込むのじゃなくて、逆に内にこもったものを発散させる感じですね。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」なんで、黙って聴いていては
この場合、似つかわしくない。舞台と客席が一緒になってお祭り騒ぎしなければ損損。
ところで、ちょっと意味が違うのかも知れませんが、客席との一体感ということでは、
歌手が客席に降りていって、お客さんと握手をしたりしながら歌う場面がありますね。
ああいうのをザ・ピーナッツは殆どやらなかったと思うのですが、如何?

演出がそれを求めていない場合が多かったのか、そういう歌が少なかったのかなどと
色々推測してみるのですが、そういうことではないのでは、と思いました。
やはり、ピーナッツは華やかなステージでフットライトを浴びてこそ生きる歌手で、
また、ブラウン管の中でのバーチャルなお伽の国にいる歌手なのではないでしょうか。
元来がもし一人でその辺を歩いていたら目立たないような普通の人だと思うのです。
もしかするとあまり人前に出るのは本当は照れくさく好きじゃないのかも知れません。

近眼なんだしスポットライトで恐らく客席の一人一人の顔は見えないので良いのかも。
舞台だから出来ることが客席では出来ないという面もあると思うのです。
レギュラーのテレビ番組の出番では気心の知れたチームでの仕事が多かったと思うし、
プロダクションのトップタレントとして扱われていたので気を遣うのは廻りなんだし、
芸以外のサービスが得意ではなかったという気がします。

私が観たザ・ピーナッツのショーというのは、東京オリンピックの開会式さながらに
秒刻みで進行し、展開され、だらだらしたところはまるでなくて、すべてが音楽に
頼っていて、トーク場面という要素は皆無。おしゃべりがあってもそれは台本通り。
早い話が、舞台もシャボン玉ホリデーの延長線上にあったのです。
スケールアップしたシャボン玉だったのです。その演出は見応えがありました。
舞台と客席はまるでテレビ画面のフレームのように区切られて、エプロンステージの
向こうは別の夢空間であって異次元の素晴らしい幻想がそこに繰り広げられたのです。

私も馬齢を重ねて人となんとか話が出来るようにはなりましたが元来が引っ込み思案。
どうも人付き合いは苦手で、初めての人と多く逢った日はあとで頭痛がします。
そんなに意識しなくてもいいのに、何か話さなければ..と考えて疲れるのです。
あれだけ、日本中の人の前で歌って踊ってコントもやったザ・ピーナッツなのですが、
どうも直感として、同類の人種のような気がしてならないのです。
だから、引退後、全くどこにも登場しない、したくない気持ちもわかります。
出演映画などの昔のビデオを見るのも恥ずかしいのかも知れません。

それでもCDに残された歌の数々には、いい仕事をしたという自信があるのでは、と
推察します。こればっかりは時代を超えて素晴らしいものだと思っていいのだし、
これは今後も多くの人に聴いて欲しいと思っておられるでしょう。
特にヒット曲コレクション物よりも企画アルバムには凄いものがありますからね。


投稿日:2003/05/25