■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

♪季節めぐり   1974.09
  作詩:千家和也 作曲:すぎやまこういち 編曲:すぎやまこういち
  演奏:オールスターズ・レオン
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★ ★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この歌はB面ですが、A面の「お別れですあなた」同様にすぎやまこういち先生の
作曲によるもので、1969年の「哀愁のヴァレンチーノ」以来5年ぶり久々の
登場ということになりますが、この後の最後のシングル盤も宮川泰先生がAB面を
作曲するこれも久々の登場であって、勘ぐった見方をするとどうもこれは有終を
飾る布陣ではないのかなと思ってしまいます。これは還暦現象ではないかしら。
ある程度の関係者間でそろそろ引退という了解事項があったのではなかろうか?

それまでの5年間、沢田研二作品や当時の売れっ子作家による競作のような趣があり、
すぎやま先生は他の歌手で大忙しだったし、宮川先生はピーナッツのステージ関係や
アルバムのアレンジが中心となって、シングルは流行作家にお任せだったようでした。
私の聴き慣れたザ・ピーナッツのロマンチック世界とは違う実験的意欲作の感覚が
大勢を占めるようになり、これが今となっては逆に後期のザ・ピーナッツ作品群は
捨て難い。後期に捨てる曲なし、というウシオさんの名言も飛び出す程です。

当時、山口百恵の過激な歌詞で一躍有名になった千家和也さんが詩を書いています。
でもピーナッツのはいかにも、なかにし礼門下生らしい感情文学という感じです。
最近の歌にも多いのですが、言葉が多くセンテンスが長く、覚えにくい気がします。
弾むような軽快さではないし、かといって、さめざめと泣けるような深刻さもなく、
また、いかにも上手いだろうという聴かせるツボもつかみどころがない感じだから、
かなり歌の表現が難しいと思います。
そうでありながらも、この詩とこの曲とアレンジの一風変わったバランス上で一つ
の世界を創出させてしまうのは、ザ・ピーナッツの並々ならぬ力量だと思います。

気になる噂、ひとり暮らし、愛のゆくえ、さよならは微笑んで、お別れですあなた、
と、この1974年のシングルは他の歌手が歌ってもどうにもならないような感じの
歌をちゃんと聴かせてしまうこの凄さに気づいたのは恥ずかしながら今世紀に入って
からなのでした。そしてそれは、ウシオさんやアンカーさんの影響なのです。
正直に言って後期のザ・ピーナッツについては私はあれはピーナッツ・ワールドとは
違う別の歌手達の世界であって、らしくない、と良い感触を持てませんでした。

しかし、後期の3年間にリリースされた作品をじっくり聴いてみますと、これもまた
ザ・ピーナッツなのであり、ザ・ピーナッツでしか表現出来ない世界なのでした。
面白いことに売れっ子作家が目白押しに登場しているこの時期にも、一つの一貫した
テーマのようなものさえ感じられるのです。
それはザ・ピーナッツ歌謡というジャンルを新たに作ろうとしているかのようでした。
これが営業的にどうだったかの結果は別にしてカバーでもない和製ポップスでもない
また、フォーク調や演歌調でもない新歌謡路線を目指していたように思うのです。

きっとこの真価をウシオさんやアンカーさんは気づいていたのだと思うのです。
頭の固い私には、どうにも得体の知れない、つかみどころのない歌が続くようなので
もっとロマンチックな歌を頼むよ〜と悲鳴ものだったのです。
このセンスの良さがなかなか理解出来なかったし、当時の大衆もそんな感じでしょう。
やはり、17年のキャリアは活きているし、前へ前へ華やかに飛び出してくる感覚や
溢れんばかりの愛らしさとは違うのだけれども、奥へ内へと惹き付けるような歌唱は
やっぱり他では得られない大したものだったのです。

投稿日:2003/06/25