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♪北国の青い空  (1972年頃の録音)
  作詞:橋本 淳
  作曲:B.ボーグル、N.エドワーズ、M.テイラー、D.ウィルソン
     (ベンチャーズ)
  編曲&演奏:無記載
  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★ ★★★★

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言わずと知れた奥村チヨさんの代表的なオリジナル曲。
当時人気沸騰のザ・ベンチャーズの作曲ということでも有名になった歌です。
そう大した思い入れでもないですが、私は実は隠れ奥村チヨファンでもありまして、
当然のようにこのレコードも持っていますし、CDも買っております。
その中でも、この曲は大のお気に入りなのです。

今聴いても、当時としても、この歌の異様な程のゆったりペースが心地よいのです。
オリジナル版のアレンジは川口真さんですが、これが素晴らしい。
こんなにのんびりとした天国的なテンポのスローペースをとるというのも勇気が
必要ではなかったかと思ってしまいますが、これがかけがえもなく良いのです。
この天国的冗長さの雰囲気にどっぷり浸るとあくせくする世の中があほらしい。
「ごめんねジロー」もそうなんだけど、こんな息の長〜いフレーズを歌い切るのは
並大抵の歌唱力ではないのではないかと昔から思っていました。

ピーナッツ二の次で書いていますが、彼女らと共にナベプロに所属していた戦友は
皆さん歌が上手かったし、個性的だった。だから皆ご贔屓だったのです。
ずっと後年になるとナベプロからも只の人気だけの歌手も出てきますが、奥村チヨは
私は大変な実力派だと思いますし、シャボン玉ホリデーが放送されていた時期までに
デビューされた方は例外なくパワーを持った歌手ばかりでした。
チヨさんは「恋の奴隷」あたりで大変なブレイクをして人気爆発となったのですが、
もちろん、そういうのも凄くいいんだけど、この「北国の青い空」がやっぱり好き。

さて、そんな思い入れのある愛好曲だけに、ザ・ピーナッツがカバーすることには
個人的には抵抗がありました。あの完成された世界を一体どうしようというのだと。
そんな思いでしたが、いざ、聴いてみると、これも結構いけるんですよね。
なんといういい加減な男だと思わないで欲しい。わけがあるんだから。
わけありというのは、雰囲気ががらっと違うからなんです。
こういうのもありかな、これはこれでいい、と許容出来るからなのです。

奥村オリジナルは北海道の広大な地平線が360度に展開するような伸び伸び感が、
恋人を失った哀しみをその自然が癒してくれるという感覚があって泣けるのですが、
ピーナッツのはもうマカロニ・ウエスタン風に感じられて、同じ北国でも外国旅行へ
行ってしまって北欧あたりで恋人のことを思い出しているような感覚です。
この違いがあるから、これはこれとして楽しめます。
しかし、それでもなお、奥村バージョンは絶対に必聴です。

このカバー曲アルバムはCD2枚分で32曲もあるのが、ウソみたいに凄まじい。
編曲者の名前が記載されていないのだが、恐らく宮川先生だろうと思われる。
1972年頃の音楽テープ用音源なのだが、まあ、好き放題にやっています。
ザ・ピーナッツのシングル・ヒット曲メーカーの立場から遠ざかっていた時期で
レコードも企画もののアレンジをやっていますし、単発の作曲をしているよりも
ご本人としては楽しくてしょうがないという期間だったのかも知れません。
記載がないのに宮川先生と決めつけてはいけませんが、この作風はどう考えても
他の方ではないだろうな〜と思います。

ピーナッツのカバー曲アルバムの中には、これは素晴らしくいいぞ、というお薦めの
歌もあります。この「北国の青い空」はそこまでの魅力はないように思います。
だけど、アルバムとしてトータルで聴くことで、ザ・ピーナッツの新たな歌の魅力を
味わうことの出来る貴重な音源となっています。
CDの時代になって、このような埋もれた作品が再び聴けるようになるのはご同慶の
至りでありまして、こんな嬉しいことがもっと起きないかと更に欲深くなります。

投稿日:2003/07/15