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♪君に夢中   1970.07
GOING OUT OF MY HEAD
  原曲:T.Randazzo B.Weinstein 編曲:宮川 泰
  演奏:オールスターズ・レオン コーラス:フォー・メイツ
  録音:1970.03.25 キングレコード音羽スタジオ
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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またまたセルジオ・メンデスとブラジル’66の曲の登場です。
この曲は単独でレコーディングしているわけではありません。祈り組曲という
メドレーの中に組み込まれているので、さわり程度に歌っています。
この組曲については既に感想を書いていますので下記を参照して下さい。

http://homepage.mac.com/infant/home/066.html
http://homepage.mac.com/infant/home/067.html

文筆家ではありませんから、もうそんなに書くネタはないのでありますが(笑)、
語り尽くせぬところがザ・ピーナッツ音楽の魅力なので、なんのなんの。
このLP(CD)全体にも言えることですが、歌手ザ・ピーナッツが主役ではなく、
楽しい音楽を聴かせるところにポイントが置かれている珍しいアルバムなのです。
殆どの歌謡曲やポップスでは「歌」を「歌手の歌声」を当然メインにします。
ところが、ここでのザ・ピーナッツは二つの楽器という扱いなのです。
ここが私はサウンド的に大変気に入っているのです。

通常はほどほどの音量でしかボーカル系のレコードを聴くことが出来ません。
余り大音量にしてしまうと歌手の声が実際の歌声の大きさからかけ離れちゃいます。
選挙運動の宣伝カーじゃあるまいし、そんなのは不自然です。
等身大の大きさの音像というイメージも壊れてしまいます。
そういう馬鹿デカイ音量のロックコンサートのイメージが好きならば構いませんが、
少なくとも私の聴き方とは別世界です。

この曲では左チャンネルにピーナッツ、右チャンネルにフォー・メイツが配置され、
フォー・メイツは単なるバックコーラスじゃなくてピーナッツと互角の扱いです。
こういう録音も非常に珍しいでしょう。
ザ・ピーナッツが単なるアイドル歌手であったならばこんな構成には絶対しません。
ブラジル66やサーカスみたいなサウンドをグループとして作っているのです。
相対的にザ・ピーナッツの歌声はバランス上、小さくなっています。
このバランスが大好きです。かなり音量を上げられます。こうすることでコンサート
の舞台で聴くような素晴らしいサウンド・ステージが展開されるのです。

これだけの思いきったアレンジとアルバムの企画が出来たのは既に宮川先生が一流の
評価を得た時期だったからだと思います。ピーナッツとともに先生の評価も確立した
時期であったのです。この歌には関係ありませんが、紹介したいコメントがあります。

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<私の恩人 ザ・ピーナッツ>     岩谷時子

  私がまだ東宝の文芸部に居た頃だから昭和36・7年だったと思うが、作曲家の
 宮川泰さんと私が日本放送の「今月の歌」という番組で、毎月1曲づつピーナッツ
 さんのために新曲を書いたことがあった。
  ピーナッツさんも宮川さんも私も新人で、なかでも私などは「お時さんが書いた
 歌はゼッタイ当らない」ので有名だった頃である。
  この番組で思い出せばなつかしい「あれは十五の夏祭り」「山小屋の太郎さん」
 などという歌を夢中で作っているうちに、その中の「ふりむかないで」が、どうし
 たわけか当ってしまった。
  当っていちばん驚いたのは私で、続いて「恋のバカンス」「ウナ・セラ・ディ東
 京」などがヒットし、ピーナッツさんは当らないので名高かった私にとって、一生
 忘れることの出来ない恩人になってしまったのである。
  舞台やテレビの本番は別として、ふだん仕事をしているときのピーナッツさんは
 殆ど素顔で飾り気がなく、歌に対して良い意味でいつもムキになっている。そして、
 そんなピーナッツさんが私は大好きだ。
  悩みなく過ごすことの出来ない人生と歌の道を二人で手をとりあって乗り越え、
 いつまでも私達に美しいデュエットを聴かせて欲しい。そして、いつの日か幸福な
 結婚の歌をかなでてほしい。その時こそ私は宮川さんとすてきな愛の歌を贈って、
 ご恩返しをしたいものだと思っている。
                     (デビュー10周年によせて)
 筆者注:ニッポン放送の「ザ・ピーナッツ」という番組の「今月の歌」コーナーで
     が表現としては正しい。
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謙虚なお人柄にふさわしいお言葉となっていますが、毎年の紅白で派手なタキシード
でリボン付きのニ本指揮棒を振り回す名物指揮者:宮川先生のお姿もザ・ピーナッツ
との邂逅がなければ存在し得なかったかも知れず、運命の綾を感じます。
面白いことに岩谷時子さんは歌劇出版部の編集部員の時代に私の好きな手塚治虫先生
と接触しているのです。どこかで何かが繋がっているんですねえ。この世の中は...
http://www.kobe-np.co.jp/chiiki/rensai/200201hanshin/20.html