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♪霧のカレリア   1966.05
KARELIA
  作詞:司ひろし 作曲:O.Ita-C.Kaparrow 編曲:宮川泰
  演奏:レオン・サンフォニエット
  録音:1966.02.21 文京公会堂
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★

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スエーデンのエレキ・バンド、ザ・スプートニクスのヒット曲のカバーです。
このバンド名は、ソ連が1957年に打ち上げた人工衛星「スプートニック1号」に
肖って付けたもので、宇宙サウンドというキャッチフレーズで流行しました。
確かにサウンドは当時としては斬新だったかも知れませんが、この霧のカレリアは
サウンドより、その美しく切ないメロディーこそが大ヒットした理由でありました。
もちろん、演奏曲でしたが、歌ってもその魅力が損なわれるわけではありません。
面白いことにスプートニクスのシングル盤ジャケットは「霧のカレリヤ」でした。

この曲のお約束は間奏にロシア民謡「トロイカ」が流れることです。
この間奏とこの曲本来のメロディーの馴染み方といったら尋常ではありませんね。
このような試みはいくらでもあるのですが、こんなに見事な例はないと思います。
これがなければ魅力は半減どころか、ヒットもしなかったかも知れません。
八代亜紀の「舟歌」に「ダンチョネ節」がもしなかったら悲惨です。そんな感じ。
あまり適切な喩えじゃないかも。(笑)歌にジャンルの壁はないからご勘弁下さい。

ご存知のように、ザ・ピーナッツはヨーロッパ進出でけっこう評判にもなりました。
今でも懐かしむ方が居られるからこそ、ドイツでCDがリリースされたと思います。
そういう面と、当時キングレコードは全力でカンツォーネなどのヨーロッパ風味を
重点的に紹介して、所属ポップス歌手総動員という時期にもありました。
そのため、この曲が収録されたLPはタイトルにふさわしく、シングル盤リリースを
寄せ集めたのではなくて、別途にテーマを持った録音を多く収録しています。

ファン心理というのは、LPになってから買えばいいや、と待つことは出来ません。
だからどうせシングル盤は買ってしまうのです。ですから、寄せ集めが多いLPでは
魅力が薄れてしまいますが、これだけ新録音が入っていれば楽しみも大きいわけです。
いつもこの連載を書く時には頭の中に入っているイメージだけじゃなくて再々CDを
聴くのですが、お目当ての曲だけじゃないのも当然ながら入っているので、ず〜っと
聴き惚れてしまって筆が進みません。(笑)

この曲が入ってるCDは「ポップスだよ、ピーナッツ」なのですが、すでに廃盤です。
毎度のことながら、また何かの機会に再発されるのを待つしかなさそうです。
このCDは昭和37年発売の25センチLPと昭和41年の30センチLPの合体盤。
CD一枚に入る時間としては30センチLP2枚分は無理なので、こういう苦肉の
組み合わせを企画することになるのでしょうが、若い時の時間の経過というものは、
たったの4年間が凄く間が長く感じられるものなのです。
だから、この合体は私的には、時代が違うだろうって、凄く違和感があるんです。
でも、リアルタイムでない方にとっては、ポップスナンバーが並んでいて、楽しめる
アルバムとしての良さが素直に気に入ってもらえると思います。

ほんとに個人的な願望なのですが。シングルのCD化はシングルスで完璧達成なので、
LPは合成せずに、一枚ずつ個別にCDアルバム化してほしいものだと思います。
例えば、25センチLPものは、 8〜10曲入りで、1200円
    30センチLPものは、12〜16曲入りで、1500円
こんな価格ではどうなのでしょうか?(笑) もちろんオリジナルジャケットでね。
いや(笑)じゃなくて、けっこう真面目に願っているのです。
これをCD文庫化して、何時でも注文すれば手に入るシステムって出来ないのかな?
これからファンになる人だって居るのに残念でなりません。

アルバムというのは元々LPを作った時に曲順など趣向を凝らしているのです。
録音の時代的な特徴もあるのでバラバラ混入させるよりも好ましいと思います。
この歌が入ったアルバムは全体として聴くととても楽しめます。
どことなく呑気なあくせくしない売らねばならぬ要素なんて無縁で好きなことばかり
やってるような微笑ましい雰囲気があります。とっても軽いしね。

宮川先生のアレンジも完璧に宮川節です。メロメロ、ベタベタの哀愁路線そのもの。
洒落たとか知性的という面は吹き飛んでいまして、こうやりたいのだという感情が
迸っていて、こういうのがとっても好き。
他のアレンジャーからは下品ではないかと軽蔑されそうな歌謡調でありながらも、
間奏では、あらら、とクラシカルな対位法旋律など急に出てきたりして好き放題に。
こういう節操のなさ、これが宮川アレンジの真骨頂だと勝手に思い込んでます。

ピーナッツのレコードとしては、わりとさりげなく存在するのですが、さりげなくが
集まりますと、これが大変な魅力となって、私を圧倒するのです。
アルバムとはそういうものだと、つくづく感じます。

(2003.9.25記)