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恋のカーニバル  1972.03
   作詞:安井かずみ 作曲:中村泰士  編曲:高田 弘
   演奏:オールスターズ・レオン

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★* ★★★★★ ★★★★★

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女(ひと)シリーズの最後である「リオの女」のB面に収録された歌です。
リズミカルでかっこよくて、今聴いてもけっこういける曲だと思います。
アレンジにも流行りみたいなところがあって、これは当時の代表的なサウンド。
これ以上に楽器を詰め込んだり、電子楽器などを盛り込むとやりすぎなので、
無理矢理音の隙間を埋めるようなところもなくて、いいバランスだと思います。
この丁度良さが懐かしい感じがします。
今と同じようなマルチトラック録音に既に変わっていた時期ですが作り物の
イメージが少なくてとても聴きやすいです。

何何賞受賞とかベストテンとかそういうランク付けが大嫌いなので知らなかった
のですが、☆ピーナッツ・ホリデー☆のプロフィール記事を眺めていたら、これ
東京音楽祭に参加している曲だったようです。
何も受賞されなかったのかも知れませんが、そんなことはどうでもいいのです。
音楽を大衆が評価するのも馬鹿げていますし、専門家が評価するのも正しくない。
音楽というものは評価するものではない。これは歴史がちゃんと証明しています。
現在、大変な名曲と言われているクラシックの曲は初演当時は散々な評価に終わり、
ご本人がお亡くなりになってから大評判になるということは珍しくないのです。

とんでもない時期に、なにかの拍子に「恋のカーニバル」が再評価される可能性も
全く無いとは言えません。問題なのは埋もれさせてしまうことだと思います。
歌謡曲やポップスの流行なんてものは、曲の出来不出来とは違う次元で生じるので
世間評価なんてものは無視しなきゃ、良い歌を聞き逃してしまいます。
あの素晴らしい「シャボン玉ホリデー」を放送した日本テレビが視聴率を誤魔化す
インチキに奔走しちゃうなんて、もう世も末です。
「シャボン玉ホリデー」は視聴率が物凄かったわけではありません。
見る方にもセンスが要る番組なので、猫も杓子も見たわけではないのです。
それでも私は、全テレビ放送史上最高の番組だったと思っています。

このシングル盤はお買得だったように思いました。宮川さんじゃなくて残念ですが、
とても人懐っこいメロディーを作られる中村泰士さんがAB両面を作曲されており、
あれっという面白いアレンジを編み出される高田弘さんが編曲をしています。
麻丘めぐみさんのアレンジにもちょくちょく登場されてます。
(他にもあるのでしょうが、自分の持っているレコードでしかわかりません)
お二人ともヒット・メーカー路線の人で、ザ・ピーナッツ以外での活躍が有名です。
これらは完全にヒット曲作りの路線だと思うのです。
しかしながら、もう既に知れ渡ってしまっているザ・ピーナッツという存在には
世間の話題性もなくて、なんとか流行らせようとはしたのでしょうがダメでした。

作詞の安井かずみさんはピーナッツの作詞ではお馴染みの方でありまして、古くは、
レモンのキッス(1961年)の作詞で「みナみ・カズみ」のペンネームで登場。
青空の笑顔(1964年)で初めてオリジナル曲も手がけています。
以後、ピーナッツの活動全般を通じて欠かせない作詞家となられております。
ご自身としても四千曲も作ったそうですから、ピーナッツ向けはほんの一部ですが、
その才能で、ピーナッツが唄うに相応しい歌詞を提供されつづけた方でした。
ピーナッツの、明日になれば、という歌は、
 ♪煙草の煙で あのひとを想う という歌詞から始まるのですが、まだ若い時に
奇しくも肺ガンでお亡くなりになったそうです。合掌。

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恋のカーニバル  1968.12録音(未発表曲)
   作詞:なかにし礼 作曲・編曲:すぎやまこういち

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★ ★★★★*

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さて「恋のカーニバル」という歌は、実はもう一曲、ピーナッツが唄っていたのです。
同じ題名で二曲あるなんてのは前代未聞なのですが、これから紹介する方は実際には
「お蔵入り」だった曲なので、現役時代にレコードを出したわけではなかったのです。
同じタイトルになったのはたまたまなのか、プロデューサーがその題名を気に入って
何時かはピーナッツの歌で復活させようとしたのか、そこは定かではありません。
未発表曲としてザ・ピーナッツ・ドリーム・ボックスに初めて登場した歌でした。
したがって、日の目を見たのは、1991年でした。

録音された時期は「恋のフーガ」が大ヒットし、「恋のオフェリア」や「恋のロンド」
等の、なかにし礼さんの作詞曲が次々にピーナッツの歌に登場していた最中でした。
ですから、この時期のピーナッツの歌につきまとう幻想感があってなかなかの佳曲。
しっとりした曲想でややけだるいような鬱屈した哀しみを秘めた歌です。
発表はされませんでしたが、作り手も歌い手も、リリースしないなんてことは夢にも
想っていなかったでしょうから、他のピーナッツの曲に比べて劣るような要素は皆無。
このように完全に埋もれていた曲が発表されたのもCD化を迎えたから出来た企画か。
こういう喜びは何時までもじっくりそれに浸ることが出来てこんな嬉しいことはない。

何も記載がないから推測するしかありませんがバック・コーラスはフォー・メイツと
考えられます。印象的なフルートの音色と豊かな弦楽が素敵な雰囲気を醸し出します。
ピーナッツの歌は一段としなやかさを増しています。
みんな同じピーナッツの歌ですが、それぞれに歌い方には趣向を凝らしているようで、
この歌にはこの歌ならではのピーナッツが聴かれるのです。
これは大変なことだろうな、と思います。
ソロの歌手の場合はそういう面が一層顕著に聴き取れる面もあろうかと思うのですが、
コーラスで歌っていても、いつでも同じにはならない工夫があるのではと感じます。
それがどういうところかは私の貧弱な感性ではわからないのですが、違うとは思う。

そして一旦確立した歌唱はもう時代を経ても変わらないのがピーナッツ。
16年歌っても、可愛い花は、デビューした時と異なる歌い方はしなかったのです。
アレンジは全く違っても、歌は恒久的に一緒でした。

ザ・ピーナッツ後援会がまだ存在していた時期に、新緑の集いというミニコンサート
をファンのために新宿で小さなホールで催してくれました。
それは従来の茶話会では、なかなかファンもピーナッツも寡黙なので盛り上がらず、
やはり、歌を歌いたいのがピーナッツで、それを聴きたいのがピーナッツファンだ、
という、むしろ自然発生的にそうなったようなものでした。
あまりこういうのは今時はないだろうと思います。
500人くらいしか入れない会館でしたが、ピーナッツの熱心なファンはその程度。

そこで感心したのは、リクエスト・コーナーというのがあったことです。
それまでに歌わなかった歌から、3曲くらいのオーダーを募ったのですが、あれは
確か「二人の高原」だったと思いますが、客席はやって欲しいと盛り上がりました。
しかし、ピーナッツはあまりステージでは歌っていなかったので歌詞を忘れていて、
そしたら、ソノシートの本をスタッフが出してきて、その歌詞で歌ったのです。
伴奏はシックス・ジョーズで、この方達は譜面もありません。
宮川さんと松宮さんがコードをさささっと打ち合わせるだけでこれが出来るのです。

名人道具を選ばずとでも言えますが、宮川さんは作った本人ですから前奏は知ってて、
会館のちょっと貧弱なアップライトピアノで見事に弾きはじめるとサックスも何故か
付いてくるし、あらら、なんで出来るのかな〜、音楽ってそういうものかと驚いた。
さて、ピーナッツの歌もこれもまあ見事なもので、本当に歌詞も忘れたのかしらと
不思議に思うくらい、歌い出したらいつものレコードで聴く歌と同じになったのです。
なにか、とんでもない奇跡に遭遇したような感覚でした。
さすがに、何でも歌いますよって宣言しただけのことはあります。
アドリブのきかないピーナッツとか言いますが、これはアドリブじゃないからです。
歌詞は忘れてもハーモニーはもしかしたら一生忘れない方達かも知れません。

<2003.11.30.記>


アマクサのシロさんよりレス  2003/12/01(Mon)

「恋のカーニバル・別曲」はMテープで発売されました
「ザ・ピーナッツ・指輪のあとに・さよならは突然に」アポロンPS-1039に
収録されています。
発売時期はよく憶えていませんがS47年前後だと思います、
初めて聴いたときは何かの間違いではないかと耳を疑いました。
ついでに曲目を明記します。

サイドA「指輪のあとに」「さよならは突然に」「最終便」「許されない愛」
    「夜汽車」「恋の衝撃」。
サイドB「リオの女」「「終着駅」「夜行列車」「さよならをするために」
    「結婚しようよ」「恋のカーニバル」
の以上12曲です。
私の所有しているピーナッツ単独のMテープはこれ一本とオムニバスの一本が
あるだけです。


アマクサのシロさんのおかげで、 という大変な事実を知ることが出来ました。
キング・レコードも「未発表曲」と明記していたのだから、無意識だったのかも。
この時期は、リオの女のリリース後なのだから当然、新バージョンであるB面の曲を
入れるべきだと思いますが、何かの手違いで同名の曲のマスターテープから作成して
しまったのでしょう。そうとしか考えられません。

アマクサのシロさんが、ぶったまげた様子がわかるようで、傑作なエピソードです。
こういうことがわかるのだからネットというものは面白いですね。