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♪恋人よ我に帰れ
 LOVER COME BACK TO ME
   作詞:scar Hammerstein 作曲:Sigmund Romberg 編曲:宮川泰

    

    →さよならコンサートライブ

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★* ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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「恋人よ我に帰れ」は「朝日の如くさわやかに」と同じく1928年に上演されたブロー
ドウェイ・ミュージカル「ザ・ニュー・ムーン」のために書かれた作品。
「空は青く、高く、昔、恋人が現われることを願いながら見上げたのと同じ新月が
浮かんでいる。そしてその想いは成就したかに思えた。しかし幸せな日々は過ぎ去り、
恋人に去られた今、空も月もあの日と同じであることが、私には一層切ないのです。
どうか恋人よ淋しい私の元へ帰ってきてください」
といった歌詞の内容で、数多くのミュージシャンに歌われて、演奏されてきた有名な
スタンダードの一曲です。(以上は、あちこちの解説情報の要約引用です)

この歌はかなり早い時期からザ・ピーナッツはスタンダードナンバーの持ち歌として
歌いこんでいました。
最近の例をあげるならば安田姉妹のトルコ行進曲のようなもので、歌唱テクニックを
ご披露する感じがあると同時に、トルコ行進曲がオリジナルそのままなのに対して、
アレンジの面白さを際立たせる面もあったと思います。
ジャズなどのスタンダード曲はその譜面というもの自体は本当にあっさりしています。
これぽっちしかないの? と驚くばかりです。
アドリブも含めた「変奏」に、その魅力があるわけで、それが真髄というわけです。

ザ・ピーナッツのアレンジを途方もないほどに手がけた宮川先生がこれも書いてます。
多彩に聴こえる歌になっています。そして何より、この歌の魅力を最大限に引き出し、
ジャズに凝った方でなくても、わかりやすく親しみやすい仕上げになっています。
音楽的な構成もさることながら、演奏効果の演出も考えられているのです。
舞台映えするアレンジです。ビックバンドを背に歌うことを前提にしているのです。
こういうのは楽しいです。無理だけど...是非、舞台で見聞きしたいものですね。

ピーナッツの歌には不思議に双生児のように似たコンセプトの歌がペアで存在する。
これは私の勝手な学説(笑)なのですが、えっ、何が似ているの、と思われるかも。
実は「山寺の和尚さん」がそっくりだと感じている次第なのです。
これもビックバンドを背にピーナッツが歌うことを前提にしているのです。
バンドとの掛け合いの妙味、面白さがここに溢れているのです。
これも宮川先生アレンジの大傑作と思いますし、宮川節というものが堪能出来ます。

ザ・ピーナッツは皆様ご存知のように、エド・サリバン・ショーに出演しました。
その詳細は、
☆ピーナッツ・ホリデー☆の、ザ・ピーナッツのプロフィール&活動の記録の中から、
『エド・サリバン・ショウ』放映、を参照してみてください。

さよならコンサートでも、この歌を歌っていますが、その前に紹介トークがあります。
 <圭三=高橋圭三(司会)、ハナ=ハナ肇、宮川=宮川泰、植木=植木等>
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圭三「さっきも(コント再現を)拝見してましたけど、シャボン玉ホリデーね、
   ハナさん、ピーナッツもあれで随分勉強もしたでしょうね」
ハナ「そうですね、16年間の活動の中でもシャボンの占めた位置と言うのは
   宮さん、大きいね、これは」
宮川「やっぱり、シャボン玉=クレージーキャッツ=ザ・ピーナッツですよ。
   シャボン玉の凄い品のいいところはピーナッツが担当してね、品の悪い
   とこはクレージーが..」(会場爆笑)
圭三「あ〜なるほど、そういう解釈もある。なるほど、なるほど」
ハナ「それでね、いわゆるショー番組の中で、最近こういうような番組なくなった
   んですけれども、むこうのポピュラーを取り入れて踊りを入れたり、そう
   いうような形で色んな難しい曲もピーナッツは沢山歌ったんじゃないかな。
   圭三さんね、僕が思うことはピーナッツというのはやはり日本の歌手の中で
   このパッと華やかなオープニング向きの歌手はいないんですよ。それという
   のはシャボン玉の中での踊り、あの中で歌った歌、それがまた、たまたま、
   あちらのテレビにも認められて、エド・サリバンのショーに....
   エド・サリバンのショーに出たというのは日本人で初めてじゃないですか」
圭三「というよりも、一人だけ、いや(ピーナッツだから)二人だけじゃないですか」
ハナ「エド・サリバンのショーというのは、むこうでは大変権威のある、昔から
   有名なものなのです」
圭三「大変なものです」
植木「カテリーナ・バレンテ・ショーとかね、色々ショーはあるけども、エド・
   サリバン・ショーというのは歴史が古い....江戸時代からやってる」
   (このギャグに会場大爆笑...)
圭三「今日に限って(ジョークを)勘弁することにしましょう」
ハナ「そのエド・サリバン・ショーで歌った、シャボンで歌ってそのままむこうへ
   持って行った、LOVER COME BACK TO MEを皆さんに..」
圭三「それではその時のアレンジのままで、お聴き頂きましょう。
   LOVER COME BACK TO ME です」  (注:会話なので妙な文章もあります)
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というおしゃべりの後で、恋人よ我に帰れをピーナッツが歌うのですが、舞台でも
スタジオ収録のCDになんら劣らぬ見事な歌いっぷりで、見事なものでした。
この録音はドリーム・ボックスに収録されています。

さて、宮川先生は別の機会にこのアレンジのことを語っています。
ピーナッツが出演の際に日本から意気揚々とご自身のアレンジした譜面を沢山抱えて
同行したそうなのですが、あちらのスタッフに見せたところ、これもダメ、あれもと
お眼鏡にかなったのはただ一曲、この「恋人よ我に帰れ」だけだったと語ってます。
この話はとても微笑ましく感じました。
別に話の信憑性はもう誰も知り得ないのですから、どれも素晴らしいアレンジだけど、
なかでもこれが一番良いと褒められた、と、虚飾したってわからない筈なんですね。
それを正直に、これしか認めてくれなくて、がっかりした、と語ってしまうところが
宮川さんらしくて楽しいじゃありませんか。

なにはともあれ、堂々とあちらのスタンダード・ナンバーを、日本人のアレンジで、
日本人が歌ったのだから、かっこいいじゃん。それで十分じゃないかと思います。
評判がどうだったとか、私はどうでもいいとも思います。
ヨーロッパで、そして、アメリカで歌ってみたかった、ということでしょう。
渡辺美佐さんも、ピーナッツも、それが夢だったのでしょう。
それを実現させたのでしょう。よかったね〜ピーナッツ!!!!

(2004.1.11記)