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♪ゴッド・ファーザー 1972.12
LOVE THEME FROM "THE GODFATHER"
作詞:L.Kusik 作曲:Rota, N. 編曲:宮川泰
演奏:高橋達也と東京ユニオン
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★★★★ | ★★★★★ | ★★★★* |
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当時、爆発的な評判になった映画「ゴッド・ファーザー」からの「愛のテーマ」。
この壮大な音楽をピーナッツも張り切って歌い上げています。
ニーノ・ロータの作品では映画「道」における「ジェルソミナ」をアルバムで
歌っているので、ニ度目のご縁になります。
どちらもザ・ピーナッツの持ち味に必ずしもフィットしている曲という風には
感じられませんが、それでもバッチリ決めちゃうのがザ・ピーナッツなんです。
元々劇的な音楽ですが、宮川先生の編曲によって一層メリハリの効いた仕上がりで、
さぞかしステージ効果もあったことでしょう。
民音コンサートの録音ですが、ライブでもこれだけかっこよく聴けるのが凄いです。
ザ・ピーナッツは当時の最大手のプロダクションに所属していた関係でしょうが、
地方の興行師などが催す歌謡ショーなどには出る機会はなかったと思いますので、
私も日劇のステージと某大企業の顧客御招待のショーに潜り込んで見ただけです。
いずれも大編成のオーケストラの伴奏による堂々たる音楽が聴けました。
「民音」や「労音」など利潤を目的としない音楽を聴くための組織が芽生えていて、
私の勤め先では「音協」というのが組合で斡旋するチケットルートだったのですが
ザ・ピーナッツのショーはなかったのが残念でした。
それでもよく色んなコンサートに行きました。お値段が通常の半額以下でしたから。
出来れば女の子と一緒に行けばロマンチックなのでしょうが、いつも独りでした。
だからクラシックの演奏会の方が好きでした。一人でもおかしくない雰囲気だった。
悔し紛れに書くわけじゃないけど、独りで帰途にじっくり聴いた音楽を反芻すると
いう面だってあるので淋しいけども、それはそれで良かったと思いますね。
さて、ステージ・ライブのザ・ピーナッツ録音ですが、これは数多くはありません。
当時は他の歌手のライブものが沢山出ていたのに、なかなかピーナッツのそれは
出ることがありませんでした。このアルバムなど貴重なものだと思います。
ステージだって物凄く上手いし、ダイナミックな歌声を聴く度に、これも録音で
出してくれないものかなとか何時も思っていました。
何故なのかは、実際にライブ盤が出て謎が解けたように感じました。
やはりミュージシャンとして完璧に近いものをリリースしたかったに違いない。
それは、どうしてもスタジオ録音には及ばない面が出ているなと感じます。
完璧なタイミングとハーモニーではないな、と、このライブでは感じられます。
わずかのコンマ以下秒のほんのちょっとしたズレが出てしまうようです。
それにステージではかなりノってしまうので、声を出てしまい過ぎるといった
贅沢なんですが、抑えがきかなくなっているようにも感じます。
それだけに逆に歌の熱気や生々しい音楽としての躍動感があったりして、これも
捨て難い良さがあります。
たぶんスタジオでは互いの息遣いまで聴き取り、感じ合って、それこそ奇跡的な
録音の数々を残せているのだろうと思います。
でも、ステージではお互いのことより意識は客席に向いているようで、思いきって
歌い切ってしまうようです。歌声を合わせようとなんかもうしていないみたいに。
それでも崩れはしないのは、もう培った互いのカンしかないのではないかしら。
こんなにお腹の底からワ〜オと歌っちゃって、それでもちゃんとハモって聞こえる
コーラスってこれからもたぶん...居ないでしょうね。
ライブ録音ともなると、どうしても映像が一緒ならいいのに..と思ってしまいがち。
でも私はそんなにザ・ピーナッツの映像や画像が見たいとは思わない面があります。
映像って、すぐ飽きるような気がするのです。
なぜなんだろうと以前から考えていたのですが、今日、ふと思い当たったのです。
それは、もしかするとですが、映像は余りにも人間の視覚情報処理能力に比べたら
お粗末過ぎるからではないのかな、ということです。
映画ならまだしもテレビ画像では、箱庭みたいなミニチュアですから違いすぎるし、
第一、立体感がないのは致命的なのかも知れない。
あまりの不足感で、ああ、もういいや、わかったわかったとこちらの情報処理面が
安直さに飽き飽きしてくるのかも知れません。
そこへいくと別に多チャンネルでなくたって「音」という情報はかなり実際のものに
近い再生が出来ているように感じます。
それも最近じゃなくて、すくなくとも「月影のナポリ」のステレオ録音の時点から
それが出来ていて、そこからの進歩は実は「耳」にとっては大した変化はなくって、
むしろ味わいの深さが勝負みたいなところがあるようにも思えます。
元々のあの時代の録音でも結構細密なのであって、だからオーディオにこだわって
聴けば聴くほどに多彩な面を持っているので、飽きが絶対に来ない。
映画化されたって原作の小説には全く違う味わいがあります。
読み手の感性で味わう深みが違うところがあって、その偏差は映画を見た人ごとの
感動の差異より絶対に大きいはず。
そういうことが「音」に関しても「画」と徹底的に違いがあると思うのです。
このゴッド・ファーザーのステージも実際には観ていなくても想像で色々な照明や
衣装などの変化が脳裏に浮かんで、その仮想空間をイメージすることが出来ますし、
眼を閉じれば、そこに、ザ・ピーナッツ・オン・ステージが展開するのです。
このCDはまだ入手可能じゃないかと思うので是非なくならない内にお求め下さい。
(2004.3.13.記)