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♪金毘羅舟々 1960.04
(民謡:香川) 編曲:宮川 泰
演奏:シックス・ジョーズ ウイズ ストリングス
録音:1959.12.23
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★★★ | ★★★ | ★★★モノ |
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♪金毘羅舟々 追い手に帆掛けて しゅらしゅしゅしゅ
回れば四国は 讃州那珂の郷 象頭山金毘羅 大権現 も一度廻って
歌詞には更に二番三番と続きがありますが、ピーナッツの歌では一番だけが
繰り返し歌われます。
このレコードで聴かなくても歌も歌詞も知っていましたが、今の人達には
馴染みはないかも知れません。何故知っていたのか、私自身が曖昧です。
元の歌は短調みたいな古風な節回しですが、このレコードでも新しい楽譜で
歌われています。戦後かも知れませんが、民謡を全国に広めるために易しい
節回しに変えようという活動があって、その影響だろうと思います。
戦後、アメリカのジャズも解禁され、ジャズだけじゃなくてラテン音楽なども
次々に民衆のものとなった時代に、もう一方で昭和に入ってから日本各地の
民謡や童謡を採譜する新日本音楽という活動があって、これらがミックスされて
民謡が新しい解釈で楽しく歌われていた時代だったと思うのです。
元々が素朴な歌だった筈ですから、それを西洋の五線紙で表現するにあたっては
メロディーも歌いやすいように変化させられたと思います。
そういう運動で有名なのは町田嘉章さんでしょう。
そういえば、ピーナッツのお父さんのお名前も「嘉章」さんだったと思います。
脱線ですが...ザ・ピーナッツのお父さん、お母さんって、とても純朴そうで、
ああ、このお二人から生まれたんだから、そうなんだなあ〜と納得してしまう、
きっと暖かいご家庭だったように感じます。
5人の子供の、3、4番目ですが、きっと上京した二人が心配でならなかったと
思いますし、結局、すぐにビッグ・タレントになったので皆が一緒に世田谷で
暮らせるようになったのも良かったなと思います。
恐らく子供の頃から大事にされたのだろうと思いますし、歌手になってからも
保護者みたいな方が周りにそれはそれは沢山居たので、愛情に包まれていたし、
高校の同級生の井本さんまでが引退迄15年も付け人をされていたのですから、
平穏で波風のない歌手生活だったのだろうなと思います。
ザ・ピーナッツは、温室栽培の清浄野菜のようだとメディアで評論されました。
それは良くも悪くも当たっているなと感じます。
芸事以外では苦労もなくて、性格がひねくれるような環境になかったからだし、
どうしても悲愴感や陰鬱さを表現することは苦手であって当然なのでしょう。
色っぽいのはもっとダメだったかも知れないのですが、色気がないというのは
絶対的な物差はないので、私はピーナッツに凄く女っぽさを感じていました。
これは対象の異性が自分の好みか否かで随分と感じ方が違うと思うのです。
私は松坂慶子さんが編タイツ姿で「愛の水中花」を歌っても、体格のいい人だ、
くらいしか感想が持てないくせに、ピーナッツがただ歌っているだけで恍惚と
なってしまいます。ある一面、これは正常ではないのかも知れません。(笑)
「金毘羅舟々」から縁遠い内容になってしまいましたから、軌道修正。
この歌ならばお父さん、お母さんにも馴染んで頂ける歌だったろうなと思うし、
特にこの歌がピーナッツの持ち味を活かしているとも思えませんが、アレンジの
面白さを味わうような感じだろうと思います。
昔の子供が何かの遊びで歌ったかも知れないし、酒席で芸者が歌ったのでしょう。
そういう庶民の歌ですから、格別な歌唱力など必要ない素朴な歌だとも思います。
必聴盤というほどの大袈裟な作品ではないので、恐らく永遠にデジタル化などは
実現しないであろうという印象でもあります。
さて、ここからが、ザ・ピーナッツの歌がどこまで好きなのかという問題です。
ぶっちゃけた話が、ザ・ピーナッツが私は大好きなんです。それだけです。
歌が上手いとか、編曲がなんてのは後知恵なんであって、好きなのが先です。
好いてしまえばアバタもエクボとか申します。何でもとにかく好きなんですね。
また、娘十八、番茶も出ばな、とも言いますが、この時、ピーナッツ18歳。
一番可愛い盛りなんです。後年もっと綺麗になりますが、とにかく18歳です。
だからかもしれないけど歌声が澄んでいてやっぱりいいんだな、これが。
とにかく、これが音楽商品になるというのが不思議な位のあっさり味です。
それでも、このさりげない歌であっても、宮川先生の編曲が光ります。
宮川先生の魅力は「音楽の演出が巧みである」ということに尽きると思います。
勿論、このLPのアレンジ全部をご担当された頃は殆ど無名の存在でしたが、
その演出的な才能はもう既に随所に発揮されています。
そもそも、この「金毘羅舟々」などという曲は箸にも棒にも引っ掛からないような
どうにも聴かせどころのない曲だろうと思うのです。
それをちゃんと楽しく聴かせてしまうのは、これは大したものだと感心します。
ひょっとすると民謡を洋風にアレンジさせたら日本一なのかも知れないなあ〜。
日本調がお得意なのかも知れない....なんとも不思議な先生です。
そういう面で、どうでも良いような面と、これも捨て難い面とがあるのです。
結局、ザ・ピーナッツのレコードでこれは要らないというのは一枚もないのです。
(2004.4.11.記)
2009年1月21日 遂にCD化が実現されました。バンザ〜イ!!