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好きになっちゃっちゃった  1964.9
   作詞:武内伸光 作曲・編曲:宮川 泰
   演奏:オールスターズ・レオン

   歌:藤田まこと コーラス:ザ・ピーナッツ

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★ ★★★★★

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いよいよ、2004年6月2日に、この録音のCDがリリースされます。
まさか、これがデジタル化されるとは夢にも思いませんでした。
同時に、林屋三平さんが歌う「ふりむかないで」のバックコーラスをした
録音も入るそうですから、お笑い関係をまとめて「めんどうみたよ」かな。
林屋さんの歌はお世辞にも上手いとは言えなくて、面白さが狙いですが、
藤田まことさんは、ちょっとした歌い手顔負けの歌唱なんですね、これが。

この歌はB面でありまして、じゃあA面の曲はなんなのか説明いたしますと、
「赤いダイヤ」というのは小豆(あずき)のことなのです。
小豆相場という先物取引を題材にした梶山季之の経済小説をテレビ映画化。
これも有名な「図々しい奴」の後番組としてTBS系列で放映されました。
この番組は舞台となっている相場の知識がなくても(ないからこそなのか)
とてもスリリングで、まるで紙芝居のように、さあ、この次はどうなるのか、
と心配したり、政治家も絡んだ汚いやり口に腹を立てたり、次回も次回も
観ずにはいられないという上手く出来た番組でした。

このテレビ映画(ビデオロケではない方が絵に迫力があった)の主演は確か
まだ有名ではなかった大辻伺郎さん(後年、漫談家の父親の大辻司郎を襲名)
が見事な演技で登場。野際陽子さんがドラマ初出演でこれが物凄い美人で、
茶の間にもバカ受けした。この放送は夜遅い時間だったけど視聴率も高騰。
このヒットを劇場映画化した時の主役が藤田まこと。この映画は見ていない。
あの長編テレビ小説みたいなストーリーが劇場映画化出来たのだろうか??
A面の説明おしまい。(豆の話だけど...ピーナッツとは関係なかったね)

上の写真は、昭和39年6月公演の「まこと!6月だよピーナッツ」の舞台。
ここで「好きになっちゃっちゃった」を披露していますが、まだタイトルは
「恋をしちゃった」という仮題がついておりました。

藤田まことさんの歌唱力は植木等さんに匹敵するのではないかと感じましたし、
この録音でも、コミックソングとはいいながら、これだけ歌えるのは凄い。
そもそも植木等さんの歌唱力は抜群だと常々信じているし、歌真似番組などで
植木ソングに挑戦する無謀な人が居ないわけではなかったが、無惨な結果に。
あれだけは余人には達成不可能な領域なのです。
藤田まことさんの歌も、このように歌ってみろと言われても出来ない筈です。
コミカルな歌というものは案外とても難しいのではないでしょうか。

ザ・ピーナッツのバック・コーラスがまたこれが抜群に上手い。
恐らくピーナッツご自身の性格からは、こういうセンスが出てこないと思う。
これはかなり鍛えられた結果じゃないでしょうか。
シャボン玉ホリデーでの経験がなければ、こんな風にはなかなか出来ない。
アドリブやフリートークでは出来なくても、台本とか譜面があれば出来る。
リハーサルで完成する演技という感覚がピーナッツにはつきまといます。
それが悪いのじゃなくて、芸能というものはそれでいいのだと信じます。
適当に面白いという感覚に現代人は慣らされ過ぎているけど、違うと思う。

こういうレコードまで買ってしまうというのは「ピーナッツ病、膏肓に入る」
という状態ではないか、とかドーナッツ盤を抱えてバスで帰りながら思って
我ながら困った人種だと半ば嘆いていたような覚えがあったのであるが....
一回聴いて、あ、これは凄い、何が凄いかわからないのが素晴らしい......
全然グローバルには無価値かも知れないけど、自分では自分を褒めたのです。
やっぱり、これは買って正解なんだ、いや、絶対に買うべきだったんだ。
そうなんです。そう確信しましたね。

このレコードに限った話ではないのですが、このレコードでしか聴けない
ザ・ピーナッツの歌の味わいというものが確実に存在するのです。
多様性を秘めた歌手であるのか、彼女らが努力してそうなっているのかは
判別することが難しいのですが、明らかにここでしか聴けない歌の魅力が
あるのです。それは「お茶目なピーナッツ」なんです。
他にも「あなたなんかもういや」とか「カモン・ナ・マイ・ハウス」とか
面白い歌い方をしているレコードがありますが、それともひと味違います。

この路線なら後継者は居そうだな、と感じました。キャンディーズです。
このグループなら別の面白さもあったでしょう。
カトちゃんとキャンディーズでもお似合いかも知れないなあ、とかね。
マジで私、この歌、大好きなんです。
宮川さんは本当に面白い歌を作れるんだな〜と感心しました。
伴奏もけっこう弦楽器なんか充実していて手抜きもしてないんですよ。
冗談音楽もきちんと下ごしらえしているからこそ楽しさも出てくる。

ちょっと悲しくなったのは、ピーナッツのセリフ。
「私たち、予約すみなんですの」なんて言われると、ああ、そうだろうな、
ピーナッツも誰かのところへお嫁さんになって行ってしまうんだよな〜と
胸を掻きむしられるような切ない想いを抱いてしまうのです。
それは、理性では自分のところへ来る筈がないのは重々承知しているのに
そういう現実を想うだけで落ち込むのだから、どうしようもないバカです。

母に、どっちが好きなのって聞かれて、どっちも好きだから二人欲しいと
言ったら、ほら、現実味がないじゃない、と笑われました。
う〜ん、そうなんだけど、わかっちゃいるけどやめられない。

あ、そ〜だ。
この歌、ドイツでも歌ったらしいですよ。
むこうの人、どう感じたのでしょうね???

(2004.5.1.記)