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最終便  1973.02
   作詞:安井かずみ 作曲:加瀬邦彦 編曲:馬飼野俊一
   演奏:オールスターズ・レオン
   録音:1972.11.27 キングレコード音羽スタジオ

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★*

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この歌は「指輪のあとに」のB面ですが、A面はキャンペーンなどしましたが、
こちらは歌われた記憶がなくなってます。
前作の「さよならは突然に」のB面「夜行列車」の続編という感じもあります。
奥村チヨの「終着駅」が2年前に大ヒットしましたので、このタイトルからも
それを連想した覚えがありました。全然曲調も違うし、おかしな連想ですが...
その「終着駅」をまさかピーナッツがアポロンでカバーしてたとは知らなかった。

「最終便」であって「最終列車」ではないので、そろそろ旅行や別れも飛行機で
という時代に入ったことがわかります。
ザ・ピーナッツの活動時期は長く、それは実際の16年余という絶対的な時間より、
日本が非常に大きな変動をしていた時期だから、感覚的なものは初期と後期では
かなり違っているのです。
海外旅行も一般化の兆しがあって、恋のバカンスの時代は言葉だけの憧れであった
所へも実際に行けるようになったのであり、ためーいきの出るようなは江ノ島程度。
その時代に「最終便」を歌ってもピンと来なかったことでしょう。

空港ものといえば、私は、テレサ・テンの「空港」が好き。
テレサの声音はピーナッツが一人で歌ってるような気がして(気のせいです:笑)
声そのものが、もうそれだけでたまりません。
ピーナッツの歌声では、これだけの哀しみは表現出来ないような気がしますが、
欧陽菲菲の「雨のエアーポート」も大好きなので、ピーナッツの歌もこういう線で
そんなに悲痛に聞くのじゃなくて軽快な悲しみ(変なの)でいいのです。

この時期は宮川泰先生のオリジナルを歌わなくなった数年間の真只中でありまして、
「ザ・ヒット・パレード」は終息し「シャボン玉ホリデー」も終わってしまったし、
東京での劇場公演も全く無く(横浜・川崎もさっぱり)、なにもかにもが失われて、
ピーナッツはどこへ行ってしまったのかと私的には不平不満が充満していました。
実際、ピーナッツはかなり自由時間があったのではないでしょうか。
しかし、踊りも歌も魅せる場があってこそなので、張り合いもなかったでしょうね。

だから、せめてレコードだけでも宮川ワールドを貫いて欲しいと渇望してたのに、
どういうことか、当時一番熱気のありそうな作家群に依託しているようでした。
もちろん、今聴いても、いい歌だとは思いますが、宮川さんのあの生活感のない、
現世から飛び出してしまっているロマン性が私は愛おしくて仕方がなかった。
最後期の3年間に出たシングルの中では「浮気なあいつ」「よこがお」が圧倒的に
私は素晴らしいと感じるからこそ、もったいない時間を費やしてしまったのでは?
という感じを捨て切れません。

歌はもう実に危なげ無く完璧でありまして安心して聴いていられます。
その一方ではファン以外の人にはピーナッツの歌の安定性が逆にインパクトが無く
聴き過ごしてしまって耳に残らないという感じかな〜という面もあるかも。
また、この録音はマイクが一本なのか、ニ本での収録を合成したのか判りませんが
歌声をモノラルで中央定位にしています。これも単調さの一因でしょう。
この方法だとザ・ピーナッツのユニゾンは二人の声には聴こえない程一致します。
まるで、1.3人が歌っているような摩訶不思議なモノラル時代の再現となります。
あくまで個人的な嗜好ですが、歌声は分離されている方が私は好きです。

さて、話題はころっと変わりまして、
5/7(金)夜にテレ朝系の「ミュージックステーション」にW(ダブルユー)が
出演しました。ご存知(?)のように、辻希美と加護亜衣のユニットです。
「恋のバカンス」を歌ったわけですが、まあなんと可愛かったです。
こういうのはチャーミングで豪華な学芸会風で良いわけなので、これでいいのだ。
それと電子楽器使ってても、意外にも、まともなアレンジだったのであります。
どういうことなのだろうと考えるためにネット記事を見ていたら、ありました。
テーマは「家族団らん」で「家庭内カラオケ行事などで盛り上がって欲しいから」
というコンセプトなんだそうで、とんでもないアレンジにはしなかったわけです。

サビの1回目と2回目のアレンジを変化させる小技はグッドで拍手ものですし、
お茶目でキュートだから楽しい、出来れば間奏も入れて可愛く踊って欲しい。
薬用クリーム洗顔のCMなども始まるそうなので、これも薬用スキン・ライフの
後継(会社が違うって)か、などと思ってしまいそう。
このチームは「悲しき16才」「月影のナポリ」「情熱の花」も歌うそうですが
まあ無難な選曲でしょう。恋のフーガなどはオクターブのハモリだから困難だもの。
健気にも(一応プロだし)ハーモニー付きなのはいじらしくて大変結構です。

別に悪ふざけで褒めているのではありません。
技術的な完成度を重点的に聴きたければザ・ピーナッツ盤を聴けばいいのですから
ここはビジュアルに楽しければいいので、これでいいのだ。(やけに肯定的:笑)
テレビの歌番組は最近、すっかり見なくなってたのに、お揃いのコスチュームが
ちらっと眼の隅にでも入ろうものなら、忽ちさっと緊張感が走って硬直するのは
不治のピーナッツ病患者に顕われる症状のようです。
(2004.05.09記)