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スーヴェニール東京   1964.10.25録音
 Souvenirs aus Tokio
   作詞:Jean Nicolas 作曲/編曲:Heinz Kiessling
   訳詞:岩谷時子(日本語版)
   演奏:Heinz Kiessling Chor und Orchester

   

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★

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この曲はキング・レコードから日本語で吹き込まれたシングル盤が出ており、同時に
キング系列洋楽レーベルであるセブン・シーズ・レコードからもドイツ語でのEPが
リリースされていました。もちろん、両者とも発売と同時に買いました。
更に昨年のベア・ファミリー・レコードから発売されたCDアルバムでは、この曲が
レーベル・タイトルにもなっています。ドイツでは一層有名な歌なのでしょう。
当時のザ・ピーナッツ・ファンにとっては馴染み深い曲で、さよならコンサートでも
披露されましたが、ショート・バージョンであったのでライブ盤には入っていません。

このように著名な歌なので最近になって「ピーナッツ・レア・コレクション」という
CDアルバムに収載されるのは、おいおい、今更、ちっともレアじゃないだろう、と
首を傾げたくなる。(本当にレアな曲も入っているので掘り出し物なのですが)


<レコードのライナーより>

 ザ・ピーナッツは昭和16年4月1日生まれ、本名を伊藤日出代(エミ)、伊藤
月子(ユミ)の一卵性双生児、歌手として本格的にデビューしたのは昭和33年末、
当時17オでした。現在ラジオ、テレビ、レコード、舞台、映画で活躍中です。
1963年度のレコード大賞で編曲賞を受けた、「恋のバカンス」(宮川泰作曲)を
同じ年の春来日した「歌う通訳」カテリーナ・ヴァレンテと共演する幸運に恵まれ、
その後のザ・ピーナッツは一躍国際舞台に進出し、国際的なスターとしてクローズ・
アップされたと申しても過言ではないでしよう。それが証拠に昨年の9月にはヨーロ
ッパ旅行、帰国まもなくして、12月には「カテリーナ・ヴァレンテ・ショー」に招
かれ、オーストリアのテレビに出演、なお一そう親交を探めて釆ました。

今年になって5月に「ヴァレンテ・ショー」を演出したミシェル・フリッカ監督が
西独パパリア・プロの制作する「ショー・ビジネス・イン・ジャパン」の演出の為、
音楽担当のハインツ・キスリングほかスタッフ共々来日、その際にピーナッツの主演
で「スマイル・・イン・ザ・ウェスト」の出演交渉が成立して、11月の26日に
西ドイツのミュンヘンに向って旅立ちました。約一ケ月の滞在中は歌のレッスン、
踊りの振付、ドイツ語のレッスンとギッシリつまったスケジュールが組まれ、ニュー
・イヤー・イヴにオン・エアー(ユーロビジョンを通じて仝欧州に)される75分の
番組の為にこんなにも大がかりなスケジュールが組まれたことにおどろいたり、あき
れたりしたそうです。

 このドイツ語で吹き込まれた「スーヴェニール・東京」、「ハッピー・ヨコハマ」
はカテリーナ・ヴァレンテ及びリカルド・サントスなどの編曲で知られているハイン
ツ・キスリングで、来日した際にも「私が悪いのよ」(岩谷呼子詞)、「いじわる」
(安井かずみ詞)などを作曲しています。彼が受けた日本の印象をメロディーに託
したものとして受けたいと思います。ではお楽しみにお聞き下さい。
(解鋭・加茂亮ニ)


1964年(昭和39年)10月10日のその日は関東地方はどんよりと曇った空で、
あの航空自衛隊ブルー・インパルスによるオリンピック開会式の五輪のマークが大空
に描かれるのを楽しみにしていたのに、こんな曇り空では効果的ではないな....と、
私は心配していました。
しかし、日本は神の国なのでしょうか? 開会式直前になって神風が雲を吹き払って
コバルトの空が....ほんとうに奇跡のような出来事でしたね。
日本が生んだ、あの零式戦闘機(通称ゼロ戦)のグッド・デザインにも匹敵しそうな
名機ノースアメリカンF86Fセーバージェット戦闘機が描いた五色の五輪のマークは
数あるオリンピック開会式のセレモニーの中でも歴代世界最高だったでしょう。

日本中がオリンピックで沸き立っていたこの時期にザ・ピーナッツはドイツに行って
大活躍をされていたのですね。
ライナーにも書かれている「スマイル・イン・ザ・ウェスト」は新年の特別番組で
なんとザ・ピーナッツが主演(出演じゃなくて主演であることに注目)したのです。
全ヨーロッパに中継されて、リクエスト再放送もあったとのことです。
この75分間のフィルム構成による映像は日本で放映された番組全てを遥かに超える
ザ・ピーナッツの魅力を凝縮したような素晴らしいものでした。

この映像は2年後だと記憶していますが、NHK総合テレビで、たしか夜9時過ぎに
放送され、更に後日、今度はNHK教育テレビでも再放送されました。
以前にも掲示板で見た事がある人は居ませんか、と問いかけたのですが、残念ながら
「ショー・ビジネス・イン・ジャパン」の放送は見た人が居たのですが、こちらは
誰もご覧になった記憶がなかったようでした。
恐らく見たけど忘れたのではなくて、実際に見ていないのだろうと思います。
見れば忘れられない筈です。それ程すごい出来だったのです。
ザ・ピーナッツが一ヶ月かかって取り組んだ番組なのですから半端じゃないのです。

思えば、ザ・ピーナッツの活躍した16年余という時期はエキサイティングで中身が
いっぱいに詰まった時代でした。殆ど全てがこの時代に生まれていると思います。
東京オリンピックや大阪万博(これも見にいったなあ)開催もあったし、新幹線やら
高速道路、東京タワーなどのインフラ整備は全部この時代なんだもの。
人類が月へ行ったり世界中が元気でチャレンジしてましたね。
ザ・ピーナッツが共演したモスラ/ゴジラ/キング・キドラ以上の怪獣キャラ以上の
アイデアがその後なあ〜んにも出てこない。なんてこともあります。なんでだろ?

あの時代より確実に進歩したのは半導体技術によるコンピュータの進化です。
ありとあらゆるところにコンピュータ技術は波及し、全ての産業のベースとなったし、
私達の身近なパソコンの登場となって、こうしてホームページも存在出来たのです。
その萌芽はもちろんザ・ピーナッツの時代にまで遡れますが、やはり大きな転機は
Apple社のMacintoshの登場でしょう。パーソナル・コンピュータという概念自体が
ここで初めて生まれたネーミングなのだし、普通の人にも使いやすくなりました。
Windowsは全ての機能がMacintoshのカバー曲みたいなものなので違和感なく使えます。
パソコン以外はピーナッツの時代の文化より凋落してますから、私はパソコンさえ
マスター出来れば世の中に遅れることはないと信じています。(脱線おしまい)

「シャボン玉ホリデー」より優れたテレビ番組というものも現れてこない。
ザ・ピーナッツをメインに据えた高度なショー番組を作りたいというプロジェクトが
テレビ局を口説いてまわり(フジという線もあったらしい)スポンサーを探し廻り、
採算度外視で製作したという、このような熱意が今のテレビ番組にあるのだろうか。
不承不承というかテレビの宣伝効果に無知だった関西のローカル企業の牛乳石鹸が
一躍メジャーブランドとなって生産が間に合わず新工場まで建てる事になったような
新しい世界を切り開いていくという心意気がすごい。

世界が日本に注目していた時期に出たこの曲はタイトルも「東京からのお土産」で、
私達が知らないところでヨーロッパの人達には支持されていたようです。
「スマイル・イン・ザ・ウェスト」では、ザ・ピーナッツの魅力の全てが見られ、
それは現地スタッフが実に良くピーナッツを理解していたかを如実に物語っており、
日本のマスコミには殆ど取りあげられたことがなくとも欧州にはザ・ピーナッツの
記憶は鮮明に残って、ベア・ファミリーのCDが出た背景となっているのでしょう。
「良き時代からのお土産」をタイムトラベラーから頂いたようなものでしょうか。
(2004.6.18記)