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Nagasaki-Boy  1965.04.14録音
   作詞:Hans Bradtke 作曲・編曲:Heinz Kiessling
   演奏:Heinz Kiessling Orchester

   
   <現地録音盤音源のCD↓>
    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★★ ★★★★*

   <国内でボーカルのみ再録音したバージョン>
    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★* ★★★★★ ★★★★*

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この「長崎ボーイ」は「レア・コレクション」や「Souvenirs aus Tokio」に
入っているドイツ録音のオリジナル・バージョン以外に恐らく日本国内での
キング・レコードでのボーカル・パートのみの再録音という二種類があって、
これらの録音が余りにも音の佇まいが異なるので、今回はその秘密に迫って
みることにしました。

下の図は、この歌の冒頭の部分です。(全て片方のチャンネルのみです)

↑この波形は「Souvenirs aus Tokio」のCDです。
↓この波形は「レア・コレクション」のCDです。

同じ録音だから波形は似ているのにレベル(音の大きさ=グラフの幅広さ)が
まるっきり別物です。

↑この波形は「ザ・ピーナッツ・ドリーム・ボックス」のCDです。
レベルだけじゃなくて丸みを帯びていて、全然違う録音であることが判ります。
ちなみに「ザ・ピーナッツ全集」のCDの音の波形はドリーム・ボックスのそれと
全く同一でした。同じマスターであることがわかります。

CDによって音が違う現象は気のせいかという面もあったりしますが、今回の
違いはかなり明らかなので、試しに取り込んで波形を見たらこんなに違います。
この違いはどこからくるものなのでしょう。それを考察してみたいと思います。

まず、下の二つは日本のキング・レコードでのデジタル・マスタリングです。
基本に忠実で、安全な音量設定となっています。
一番上は輸入CDでドイツでのデジタル・マスタリングで作られています。
はっきり言ってレベル・オーバーです。
このように大きな音量で入れる必要はどこにあるのでしょう。
実は、これはここ数年の世界的な流行なのだそうです。

クリッピング(瞬間的に収納不能な過大な音量になること)がどんどん起きて
しまうように全体の平均音量を大きくしてしまうのです。
通常はこんなことをしたら「音が歪んで」しまい、聞くに耐えない音になり、
商品にはなりません。
だが、デジタル処理が高度になったために、リミッター(限界制御)を多用して
コンプレッサー(効果的に音量を圧縮する)処理を行うことで、かなり自然に
全体の音量を高いレベルに保つことが出来るようになったそうです。

さて? このようなマジックを使うと何かいいことがあるのでしょうか?
利点としては、
あまり音の解像度の良くないミニ・コンポやラジカセのような小さな装置でも
かっこいい音が聞けるようになる。
大きな音量にしないと従来は聴こえてこなかったようなバックの演奏がぐっと
前に張り出して、楽器や音の数が増えたように聞こえる。
総じて、そういう加工をしないCDに比べ、一聴して音質が改善されたように
聞こえるので、同じソースでも買い直そうという気が起きる場合がある。

「リマスタリング」というキーワードが流行っておりまして、そう書いてあると
素晴らしく音が良くなっていると思いがちですが、担当の技術者がどのような
ノウハウを用いてマスタリングをし直しているのかが大きな問題です。
まず、素人相手なのだから、上で書いたようにすれば忽ち騙すことが出来ます。
ようするに「音が大きくなっただけ」なのに「良い音になった」と錯覚します。
最大音量は潰れているのですが、もともとピークはデカイ音なので潰れても
そんなに気にならず、細かい楽器の音などが聴こえてくるので、これはいい、と
納得してしまうのです。

でも、世の中、利点ばかりじゃありません。
ど〜も私の耳には輸入CDは「音の縁取りがはっきりし過ぎて自然じゃなく」
「ピーナッツの声が乾いていて、ざらざらした感じがあり、聴きづらく」また、
「歌を聴かせるCDじゃなくて演奏が主体にも感じ」「ザ・ピーナッツの声音を
良く知らない人がやっている」ような気もするのです。
これは、あくまで推測ですが、ほとんど機械的にハイレベルにしてリミッターを
かけただけ...という感じがしてなりません。
(こういうことが出来ないからレコードの方が自然だという意見もあります)

この歌はオリジナルの録音では、こんな感じに聴こえます。
(●はピーナッツで、○は楽器たち)

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左← ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ○ ○ ○ →右
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一方、国内でボーカルだけ録音し直した(と思われる)録音では
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左← ○ ● ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ○ →右
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こんな感じで、また、楽器は後方に展開している感じも出ています。
両方あった方が面白いですが、どっちか一枚だったらキング・レコードの録音を
聴きたいですね。餅は餅屋。ピーナッツはキング。これ定説か???
(2004.6.19記)