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さよならをするために  1972.(推定)
   作詞:石坂 浩二 作曲:坂田 晃一 編曲:宮川泰(推定)
   演奏:記載なし    (オリジナルの編曲は坂田 晃一)

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★ ★★★★

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昭和47年(1972年)の日本テレビのドラマ「3丁目4番地」の主題歌。
 「3丁目4番地」(1972.1.8〜4.8)(土)21:30〜22:26
 プロデューサー:早川恒夫/中島忠史
 脚本:倉本聰 演出:石橋冠 他
 出演:浅丘ルリ子/原田芳雄/森光子 他
ヒット・ドラマ「2丁目3番地」の姉妹編。森光子を家長とする女系家族の下宿屋
一家が織り成す人情コメディー。兄弟デュオ=ビリー・バンバンが歌った主題歌は、
上記前作ドラマで浅丘ルリ子と共に主役を演じた石坂浩二がその縁で作詞を提供。
ドラマ終了時にはオリコン・チャート25位だったが、その後1位を4週連続で獲得。
息の長いヒット曲となった。フォークソングの定番。
作曲の坂田晃一は美しいメロディー・メーカーとして定評がある。

この年、最もレコードが売れた曲だったようで、参考までに以下売れた順に並べると、

さよならをするために ビリー・バンバン 友達よ泣くんじゃない 森田健作
瀬戸の花嫁 小柳ルミ子 雨のエアポート 欧陽菲菲
旅の宿 よしだたくろう 悪魔がにくい セルスターズ
京のにわか雨 小柳ルミ子 恋の追跡 欧陽菲菲
ひとりじゃないの 天地真理 波止場町 森進一
三善英史 待っている女 五木ひろし
ちいさな恋 天地真理 赤色エレジー あがた森魚
ひまわりの小径 チェリッシュ 鉄橋をわたると涙がはじまる 石橋正次
太陽がくれた季節 青い三角定規 こころの炎燃やしただけで 尾崎紀世彦
別れの朝 ペドロ&カプリシャス あなただけでいい 沢田研二
芽ばえ 麻丘めぐみ だれかが風の中で 上条恒彦
女のみち ぴんからトリオ サルビアの花 もとまろ
夜明けの停車場 石橋正次 ハチのムサシは死んだのさ セルスターズ
結婚しようよ よしだたくろう 男の子女の子 郷ひろみ
ふりむかないで ハニー・ナイツ 哀愁のページ 南沙織
虹をわたって 天地真理 狂わせたいの 山本リンダ
せんせい 森昌子 喝采 ちあきなおみ
許されない愛 沢田研ニ 愛する人はひとり 尾崎紀世彦
純潔 南沙織 雪あかりの町 小柳ルミ子
子連れ狼 橋幸夫 ともだち 南沙織
北国行きで 朱里エイコ 同級生 森昌子
終着駅 奥村チヨ 出発の歌 上条恒彦+六文銭
どうにもとまらない 山本リンダ 悲しみよこんにちは 麻丘めぐみ
この愛に生きて クール・ファイブ 耳をすましてごらん 本田路津子
夜汽車 欧陽菲菲 虹と雪のバラード トワ・エ・モア

...と、まあ、こんな感じです。前年からのヒット曲も入っていますが、これ以下の
100位ほどまで、殆ど知っている曲ばかりというのは物凄いヒット・ラッシュの
時代だったんだな〜と感心してしまいます。(洋楽も入れるともっと凄いんです)
当然、私が若かったから流行歌に乗り遅れなかったという面もあるのでしょう。
私の感覚以上に現代だって、同じようにヒット曲はたくさんあるのかも知れませんが。

つくづく感じるのは、これだけ流行る歌が登場しちゃったら、ザ・ピーナッツの歌は
埋もれてしまうのはしょうがないのかな〜ということです。
この年のザ・ピーナッツのシングル・リリースはたったの2枚だけでした。
「リオの女/恋のカーニバル」「さよならは突然に/夜行列車」なのですが、これは
売り上げの100位にも入っていません。
私はそんなにダメな歌じゃないのに、とは思うものの、上の表の曲のパワーにはもう
圧倒されてしまっているな〜と感じます。流行歌隆盛の時代だったのですね。

時代はどう変ろうとも私のザ・ピーナッツのレコードに期待する気持は微塵も変らず、
キングから発売されるレコードは必ず購入して来ましたがアポロンから出たテープは
見送っていましたので、こうやってCDで再発売してくれるとタイムカプセルを開け
たような感覚で、おお! と感動してしまいます。
ビリー・バンバンのシングルは買って聴いたし、放送電波で嫌というほど流れたので
耳タコで、正直言って腹一杯で飽きたというイメージでしたが、ザ・ピーナッツのは
今まで聴いていなかったわけですから新鮮です。

この頃からフォークブームなんてのが始まったのかな? もっと後だったっけ??
フォークソングというジャンルの定義は一体何なのか? 私には良くわかりません。
ニュー・ミュージックとかも一緒。それまでの歌謡曲とは何が違うの?
既存の作家の作風じゃなくて、自分達の感覚で、ということじゃないのは明らか。
「さよならをするために」は、ビリー・バンバンの作品じゃありませんからね。
プロ作曲家のお仕事ですし、アレンジなんかもうクラシックの手法で古典的ですから。

笑ってしまうのは、NHKでやってる「フォーク大全集」みたいな番組です。
レコーディングのバージョンは「昔からの定番のオーケストラがバック」なのに、
ステージではギターだけで歌って、フォークはいいですねえ〜なんてやっているのが
多くて、詐欺じゃねえのか、と言いたくなる。(笑)
「さよならをするために」のどこが新しい路線なものか、何にも変っていませんよ。
弦楽器のアンサンブルで始まるから素敵なんでしょ? ギターじゃないじゃんか!

今も昔もそうなのですが、若者を騙す手法なのです。
既存の音楽とは違う僕たち私たちの音楽を聴こう歌おうという業界の巧みな誘導に
乗せられて操作されて騙されて熱くなって財布から金を出すのです。
「新しい音楽」という体系は、もう今後一切、絶対に生まれないものなのです。
リズム・メロディー・ハーモニーというのが音楽の要素でこれの応用だけなのです。
ヒップホップだかラップミュージックだか知らないが、これだって原始回帰音楽の
ようなものじゃないかと思います。新しいのではなく、滅茶苦茶に古代なのです。

ある時ジャズを定義してほしいと言われたデューク・エリントンはこう答えた。
「この世には2種類の音楽しかない。それは、いい音楽と悪い音楽だ」。
歌謡曲にも、いい音楽と悪い音楽があり、フォークにも、いい音楽と悪い音楽があり、
クラシックにも、ジャズにも、何にでも、いい音楽と悪い音楽があるんです。
「さよならをするために」はいい音楽だと思います。
NHK「フォーク大全集」で、したり顔で出て来る大御所の歌う馴染みのない昔の
歌は、フォークソングの中の悪い音楽の範疇に入るのが大半でしょう。

年寄りは頑固だといいますが、若者は狂信するので、もっと手に負えません。
歌謡曲しか聴かない、とか、ジャズしか聴かない、というのは本人の自由ですから
勝手にしたらいいのですが、傍から見てると「俺はラーメンしか喰わない」なんて
おっしゃってるように思えてしょうがない。ご損な人生なのになあと思えてくる。

日頃、テレビを見ていて感じるのは、ギターばっがりだなということ。
ギターは簡便で、電子回路の表現も借りると繊細でありダイナミックにもなります。
でも、所詮はギターです。表現能力の限界があり、多彩さにも限りがあります。
だから、ギター、ベース、ドラム、シンセ編成のバンドの響きにはうんざりしてます。
よく飽きないものだな、若者なら、もっと他の表現にも挑んで欲しいなと感じます。

ザ・ピーナッツの世界は、ノージャンルです。
「いい音楽」なら歌い「悪い音楽」は歌わない。これっきゃないのです。
悪く表現すると「もどき」という面もあります。
クラシックもどき、ジャズもどき、歌謡曲もどき、ポップスもどき、プログレもどき、
もう、何でもあります。歌の百貨店。スーパー、コンビニ、量販店。
この「もどき」部分がザ・ピーナッツ風味。優しく分かりやすく馴染みやすい。
巷に流れたヒット曲もこういう風に歌うと、ザ・ピーナッツになりますといった塩梅。
楽しい録音を残してくれたものです。

(2004.11.7.記)