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さよならは突然に  1972.09
   作詞:山上路夫 作曲・編曲:鈴木邦彦
   演奏:オールスターズ・レオン
   録音:1972.06.09 キングレコード音羽スタジオ

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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この「さよならは突然に」がリリースされた時、私は引退してしまうのかな、と
早合点したことを覚えています。
このあとすぐに「シャボン玉ホリデー」も放映終了となったこともあったので、
何時、正式に発表されるのだろうか、と気を揉んでました。
実際には、その後2年半は活動を続けていたのですが、ザ・ピーナッツとしても
この頃から引退の意志を固めていたのではないかと推測します。

日曜午後6時半の裏番組にアニメ・サザエさん(1969.7〜)が登場してからは、
同じアット・ホームな路線であるシャボン玉は視聴率が急落したと思われます。
やがてクレージー・キャッツのメンバーもバラ売りが始まって抜けてしまったし、
スタッフの熱気も冷めてしまったのか、ファンの私が身贔屓で見てもつまらない番組
に堕落してしまったのです。
それでもザ・ピーナッツだけは健気にというか、真面目な責任感で一生懸命に歌い
踊っていましたが、番組としてはどうしようもない状態になったなと感じました。

日本テレビも終わらせたくはなかったのか、やけくそのようにあの手この手の趣向を
やってみたのですが、ザ・ピーナッツの人気だけでは、日曜日のゴールデンタイムの
視聴率を支えられるわけではなくて、消滅ということになってしまいました。
傍目でも、まだ続けているのが異様だと感じられたので無理もないことでした。
ザ・ピーナッツもインタビューでは、長い年月凄い負担になっていた番組だったので
残念というよりもホッとしています、というようなあっさりしたコメントでしたが、
それは本音ではないだろうと思います。この時点で歌手としての役割も終わったんだ
というような淋しい気持だったのではないでしょうか?

それからは何時引退宣言が出るのだろうかと思っていましたが、同時に、この曲で
引退したら良かったのではないかとも感じました。
それは「さよなら」なんだけど、軽快で、いかにもザ・ピーナッツの引退の曲に
相応しいのに、と思ったからです。
この後も「さよなら」のタイトルが付く曲が2曲続きましたが、この曲ほどには
インパクトもなく、おい、こんなんで終わらせないで、と切に願っておりました。
最後の最後は宮川先生オリジナルに先祖回帰して「浮気なあいつ」「よこがお」で
幕を閉じたのは、なかなか洒落ていて、ブギウギの軽快さが素晴らしくて、これで
ザ・ピーナッツらしい最後を飾ることが出来たなとしみじみ感じました。

したがって、この歌はまだまだ元気で頑張っているわけですし、この時代の曲と
いうこと抜きにしても、かっこいい歌だなと思います。
変な言い方ですが、この歌もそうだし、ガラスの城なんかも、ザ・ピーナッツじゃ
なくて、もっと若いピチピチの新人女性歌手が歌ったら大ヒットになったかも?
そういうことを思うのは残念なことなのですが、大衆=愚衆の男性どもは若い子の
ミニスカートか、やたらに色っぽいお姉ちゃんにしか眼が行かないのです。
三十路過ぎのザ・ピーナッツにはそういう魅力はありませんでした。

そういうビジュアルな売り方は、実はピーナッツ自身がテレビでの歌手の見せ方を
確立したからなのです。種は自分で播いたようなものなのですね。
しかし、この時点でもザ・ピーナッツの容姿はなかなか優れてはいました。でも、
男性の眼を捉えるのではなくて、むしろ同性のファッションのお手本としての視線
を受けるようになったようです。この頃、女性ファンの方が多くなったようです。
まだ、カラーテレビが一般化する前に辞めてしまったのですが、そういう面からも
勿体ないなあと感じる次第です。写真で見ると色彩感覚も良かったんですからね。

さて、曲の内容に戻りますが、作曲は1968年「天使の誘惑」で日本レコード大賞
を受賞した鈴木邦彦さんで、他には「恋の奴隷」「長い髪の少女」「酒場にて」等が
有名ですね。ザ・ピーナッツには、
 夜行列車(さよならは突然にのB面)
 恋の稲妻(LPにのみ収録)
 渚の白い朝(LPにのみ収録)
 都会の出来事(LPにのみ収録)
 哀愁のテーマ(LPにのみ収録)
を約1年半くらいの間に提供しています。
テンポの早い曲の方がザ・ピーナッツに似合っているように私は感じます。

この歌は第23回(1972年)のNHK紅白歌合戦でも歌っていますが、レコードと
全く遜色ない見事な歌唱と、マリオネットの動きのような振付けで魅せました。
「ザ・ピーナッツ・オン・ステージ」の録音でも「ザ・ピーナッツ・ラスト・ライヴ」
の中でも歌っていますが、当たり外れなしの見事な歌唱です。
紅白といえば、この「さよならは突然に」は、ご自身の作曲でも編曲でもないのに、
宮川先生が派手なタキシードで指揮(?)されてましたね。あれは楽しかったなあ!
余りにパフォーマンスが凄いので、翌々年は柵の中に入れられてしまいましたね(笑)。
あの頃が先生も一番楽しかったんではないかと思います。
(2005.1.11記)