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シェリー  1963.08
 SHERRY
   作詞:漣 健児 作曲:B.Gaudio 編曲:宮川 泰
   演奏:レオン・サンフォニエット
   (コーラス)ザ・ヒット・パレーダース
   録音:1963.06.12 文京公会堂

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★ ★★★★

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シェリーと言えば1960年代の代表的なアメリカン・ポップスのヒット曲です。
本場ものであるオリジナルはフォーシーズンズというグループが歌ったのですが、
日本では九重祐三子ソロでダニー飯田とパラダイス・キングの歌で流行しました。
九重祐三子さんは近年でもオールディーズの番組なんかでよく歌っております。
「さあ〜出ておいで〜」という低音の男性ボーカルも楽しい聴き所なんですが、
ザ・ピーナッツ版はここは英語で歌っていますね。

かなりのザ・ピーナッツ・ファンでないと、二人がこの曲をカバーしていたのは
知らないのではないかと思います。このLP買わないと判りませんからね。
私も当時、あれ、こんなの歌うの? と少し驚きました。
フジテレビのザ・ヒット・パレードではザ・ピーナッツはレギュラー歌手なので
ありとあらゆるヒット曲を番組内では歌って来ましたが、それらが全てレコードに
なるわけではなく(そんなことしてたら大変なことになる)、持ち歌とは違って
ベスト・テン番組だから歌っていたというだけでした。

ですから、これがレコーディングされたことが意外でしたが、タイミング的にも
別に競作というものではなくて、ただ単にいい歌だからザ・ピーナッツも歌って
みました、どうぞ聴いてください。というLP盤でのファン・サービスなんです。
事後カバーという感じなのです。
バック・コーラスのザ・ヒット・パレーダースというグループはほとんど無名の
存在みたいですが、ザ・ヒット・パレードの番組のために結成したコーラス隊。
当然、番組ではバック・コーラスを主に担当していました。

パラキン以外には誰が歌っていたのか記憶にありませんが、ザ・ピーナッツ版は
度々CDボックスが出るから、このような古いポップス曲も聴くことが出来ます。
当時のカバー曲というのは日本人が歌う場合は十八番の歌手が決っていた感じで
あの歌ならミコちゃんで、あれならカヨちゃん、これはゆかりで決まりなどなど
それなりに結構思い出に残る歌だったのにと思っているのですが、カバー曲だと
思い出に残る100曲なんてテーマでテレビ番組が作られるとこれらの曲はまず
入って来ません。こういうのは懐メロ・ポップスで、と分離されてしまうのです。

放送局がそんなに大衆の風俗、歴史をステレオ・タイプみたいに決まった形式に
整然と並べるなんて必要はないのではないかな、といつも感じています。
それと、貴方の人生の応援歌となった歌だとか、転機になった歌など、視聴者の
一生の思い出の代表曲をなんて選び方やかならずなにやら凄く重々しいテーマで
絞るものだから、かなり大真面目な歌やら大演歌ソングやらNHK臭プンプンの
国民歌謡みたいなやつやら、青春歌謡やら、とお決まりのコースばかりなもので、
どうにも私はバカバカしくて見聞きしていられません。

そんなに平均的日本人のパターンの追求ばかりしててどこが面白いのだろうか。
「上を向いて歩こう」など名曲には違いないが、出て来るぞ、ほら出た、なんて
わかっていて、それを、ああ、みんなが好きなんだ、私も大好きなんだものね、
と、みんなと同じだと安心するなんてのは、そういう時間が勿体ないなと思う。
こういうのはもう皆さんの頭の中で鳴ってて、十二分に反芻している曲でしょ?
今更、誰が歌ったって、なにも面白くもないし、こういう名曲はプロの歌手の
歌唱力が要らない歌だという気もするんです。

この年代は、この年はこういうことがあって、こういう歌が流行ってて、という
標準化放送ばかりなものだから、いつの間にか我々の記憶もそういう風に整理が
されてしまいそうで怖いような画一化がされるようにも感じます。
皆それぞれ一人一人の昭和時代があった筈で、思い出もさまざまであったろうし、
好きな歌もそれぞれ違っていた筈なんです。
「シェリー」はどちらかというと余りピーナッツはテレビでは歌いませんでした。
だから録音して残すなら、もっと違うフィットした曲があったように思うのです。
レコードというのはいつまでも残るから奇妙で、ちょっと私的には意外な録音と
いう感じが今でも根強く残っています。

そもそも漣健児さんがザ・ピーナッツ用に訳詞を書き下ろすという事はなかった
と私は認識しています。ザ・ピーナッツ向けには他の作家がいつも筆をとってて、
漣健児さんの訳詞と異なるバージョンだったのが面白かったくらいです。
ですから、ザ・ピーナッツの「シェリー」はカバーのカバーみたいな感じです。
でも、さすがにザ・ピーナッツなんで、ちゃんとピーナッツ風味で聞かせます。
こういう違うバージョンがあるのが本当は多様性があって楽しい筈なんです。
じっくり傾聴するという大袈裟な感じはなく、気軽に楽しむ録音だと思います。
(2005年4月12日)