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情熱の砂漠  1973.07
   作詞:山上路夫 作曲:加瀬邦彦 編曲:星 勝
   演奏:オールスターズ・レオン
   録音:1973.05.07 キングレコード音羽スタジオ

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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一体どのくらいの人達が居るのかつかめませんが、若い方達がザ・ピーナッツの
歌を好んで聴くという現象があるそうなのです。
ザ・ピーナッツの映像はPRする必然性が何もないので殆どテレビで見られません。
ご本人たちも映像が頻出することを決して喜ばないことでしょうし、見たいと思う
ファンもいるのですが、なかなか叶わないのが現実だと思います。
そんな状況にもかかわらず、そういう状況だからこそ、新しい聴衆が出て来るという
ことは大変に素晴らしい、いや、凄いことではないでしょうか。

まだまだ数としては小さいかもしれないし、ブームになるような規模には膨れ上がる
こともないとは思いますが、ザ・ピーナッツには他では得られない何かがあるぞ、と
気づく機会がどこかであったのではないかと推察します。
実際、そんなに深刻に鑑賞するぞ、といった姿勢などザ・ピーナッツの歌には不要で、
なんか感じいいじゃん、で十分なのです。元々その程度のお気楽なものなのです。
歌い手や演奏者は、それは陰で大変な練習やら苦労はしているのでしょうが、それを
看板にしてはいないし、楽しんでもらえることが最終目的のはずなんです。

この「情熱の砂漠」は、代表的な「全曲集」という一枚もののCDアルバムに入って
おりますし、曲調からも若い方にも受け入れられる要素がたくさんあると思います。
とにかく「かっこいい」歌なんです。
ザ・ピーナッツも後年は年令に相応しい歌を歌うことも相当、意識はされていたので
しょうが、結局はこのような年令不詳、国籍不詳の歌が似合っていたと私は思います。
生活臭のあるドロドロした歌は合わないし、この歌でも色っぽい歌手が歌ったならば
随分と違う印象を与えるでしょうが、ここはあくまで軽快なピーナッツ調なんです。

シングル盤というのは「流行歌路線」なのであって売れることが主要な目的ですから、
後期は作詞・作曲のザ・ピーナッツ定番という作家を起用せずに、流行する歌を作る
ことに徹底したようですが、かえって打率が下がった結果になったのかも知れません。
その中でもこの曲は旧来路線の延長線上にあるような面も合わせ持ってますし、また
新しいアレンジャーによって、従来とは異なった新鮮なサウンドも聴く事が出来ます。
この間奏など実に良く出来ていると思いますし、面白い音楽になっています。

若い方という書き方に今回、こだわったのは、若い方達にこそ聞き直して頂くことを
期待するからです。
ザ・ピーナッツの歌は昔よく聴いたから、よく知っているなどという年寄り連中は、
実際には当時、この歌など見向きもしなかった唐変木で上っ面だけの歌謡ファンで、
ピーナッツの歌を知っているなどと語る資格などないんじゃないかと思っています。
それというのもザ・ピーナッツ以外に、強い話題性のある歌手やグループが台頭し、
大衆の興味は大きくそっちにスライドしていったので仕方がないことなのでしょう。

ザ・ピーナッツは演歌歌手のように同じ事をやっていれば安泰という立場じゃなく、
常に革新的で時代の最先端を行くという使命のようなものもあったので、ジャンルの
新しいものの登場やニューフェイスがライバルとなる苦戦をいつも強いられました。
そのような環境下でありながらもよくやっていたものと感心する面もあります。
流行歌手の宿命で、これだけのいい歌ではあっても売上は中位に低迷していた筈で、
レコードを買った人もあまり多くはないと思います。

サウンド的にも文句のつけようがない程充実していますが、マルチトラック録音が、
個人的にはそっけなくて、歌と演奏がバラバラの響きになっている気がするので、
あまり好きではありませんでした。(レコード盤の方はそんな感じは少ないのに)
ところが、ザ・ピーナッツ・メモリーズBOXでは滑らかな音色に改善されました。
ザ・ピーナッツの歌声に血が通っている感じがしますし、バック演奏も繊細です。

しかしながら、この変化は重箱の隅をつつく程度の違いかも知れませんし、装置の
相性もあるでしょうから、絶対的な評価ではありません。私がそう感じるだけです。
その曖昧な感じで、全てを評価していますので、信憑性はありませんから、そこは
皆様の耳で再確認してください。メカニックなサウンドも魅力なので硬質な響きが
必ずしも否定されるべきではないとは私も客観的には感じます。
(2005.5.29記)