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知床旅情  1972.(推定)
   作詞・作曲:森繁久彌 編曲:宮川 泰

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★

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この曲は、はっきり言って愛聴しておりません。私は好きじゃないのです。
百歩譲って、カラオケなどで自分で歌って気持ちよくなる歌なのでありまして、
歌詞でも、飲んで騒いで、と歌われているように、自ら口ずさむのが似合いで、
じっくり傾聴するような曲じゃないというのが持論です。
ザ・ピーナッツに歌ってもらいたい曲としては他に何もなくなった最後の最後で
歌ってもいいという程度かなと感じてしまうほどです。

冒頭のメロディー・ラインが「早春賦」に似ているというのは有名な噂なんですが、
この唱歌を作られた中田章は「心の窓にともし灯を」を作曲された中田喜直さんの
お父さんです。
そういう因縁もあるので、ザ・ピーナッツが歌って残す曲としたら、こっちじゃなく
「早春賦」の方をお願いしたいところと感じるのは私だけでしょうか?
メロディーも歌詞もずっと気品があって、私は大好きです。

カバーは加藤登紀子さんで十二分であって、たとえアルバムでもザ・ピーナッツが
歌う必然性は何もありません。こういうのを才能の無駄遣いというのではないかと
思いますし、宮川先生もそれなりに懸命なアレンジを施していますがお気の毒じゃ
ないのかなと感じてしまいます。SEの波打ち際の録音もわざとらしいしね。
この録音の生い立ちを考えればカーステレオ向きなのであって、自宅のステレオの
前で神妙に聴く類いの商品ではないわけで、ザ・ピーナッツの歌声で歌謡ヒット曲を
お気楽に聴くというBGM用途が狙いであれば納得出来る面もあります。
そういう聴き方が身についていないので私が勝手に違和感を感じるのだと思います。

日曜日の夜だったかのNHKアーカイヴスで、たまたま「知床」という1971年の
映像作品を観ました。
重厚な作風で、知床の厳しく美しい景観が紹介されており、そこには人間の気配は
なくて、自然だけが写し出されていました。
これもたまたまですが、来月には、ユネスコ世界自然遺産として登録される見通しに
なっているそうで、実現すれば、日本では13番目の世界遺産となります。

1964年からは既に知床半島は国立公園に指定されており、すぐれた自然景観、
原始状態を保持している地区として保護が徹底されています。
したがって、知床旅情というタイトルではあっても、決して物見遊山で遊興気分で
出かけるような場所ではないのではないかと思うのです。

 ♪飲んで騒いで丘に登れば→バーベキューの残飯や発泡スチロール屑を散らかす。
 ♪旅の情けか酔うほどにさまよい→ビールの空き缶やら吸い殻を放り投げる。
どうも私はこんな酔っ払いの行動を思い浮かべてしまい、人間の存在はこの景観を
害するだけじゃないのかと思ってしまいます。
 ♪忘れちゃ嫌だよ気まぐれ烏さん
のような人間臭さは似合わないようにも感じました。

NHKの映像だけで実際に行ったことがないので(泣)、この歌に相応しい場所も
あるのかも知れません。
ユネスコ世界自然遺産に決まれば、またこの歌がリバイバルして流行るのかしら?
そういうのはバカバカしくて好きじゃないけどなあ。
(2005.6.27記)