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♪ずいずいずっころばし
1960.04
(わらべ唄)
編曲:伊藤素道
演奏:伊藤素道とリリオ・リズム社中
コーラス:リリオ・リズム・エアーズ
録音:1959.12.18
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★★★ | ★★★ | ★★★ |
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この録音で大活躍をしているのが、故伊藤素道さんとそのグループです。
まだお元気なのかと思っていたのに、2003年8月7日に亡くなられてました。
75歳という今の時代ではまだまだお若い年代なのにね。
ザ・ピーナッツの録音に関わっている方は、なんか早世される才人が多いですね。
なんでなんだろうか。ますます淋しい気持ちになってしまいます。
伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズといえば「ローハイド」主題歌の日本語版を
コミカルに歌ってヒットさせた記憶が強いのですが、レコードでもああいう風に
歌っているものなのでしょうか?
あれ? ああいう風にじゃ意味伝わらないですよね。失礼しました。
正直言って私、横文字が大の苦手。もっとも得意な学科なんて元々ないけれど。
だもんで、「ローハイド」のフランキーレーンの物凄い歌声は超かっこいいけれど
何言ってるのか、さっぱりわかりません。(今でも)
大体、たいしたこと言っていない歌詞なんだろうけど、横文字で歌うと意味深で
なにやら大層素晴らしく聴こえます。
この我々の一般的な素養の無さ加減を巧みにお茶らかしたのが伊藤素道さんの歌。
♪オッテケレッツのパ〜
なんて歌詞が英語に挟まって突然出てくるのです。これでは歌謡漫談です、
途中まで真面目にやってるから、この馬鹿馬鹿しさが光るのでしょう。
本来は歌の合間に、いやあ〜というかけ声と共に鞭でパシ〜〜ンという効果音が
入るところをスリッパで代用するのが定番で、わかってても面白かったです。
元来、ちゃんとした実力を持つジャズ・コーラス・グループなのですから、上記の
ような記憶しか紹介出来ないのは愚衆の一人に過ぎないことを露呈しているようで
恥ずかしいことだと思います。
ステージでもザ・ピーナッツと一緒に歌ったことがありましたが、ナベプロ同士で
ありますし、苗字も「伊藤」なんで、お兄さんのような関係の感じがしました。
どういうわけか、音楽をやる方というのは古今東西洒落ッ気があるように思います。
ユーモアの素養がある方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
もしかすると、このような脳の使い方が出来ないようでは、良い音楽を書いたり、
人を感動させたりする才能がない、という面もあるのではないかと思います。
おいおい、ベートーベンやブラームスがお茶目だとは思えないぞ、という声も
聞こえてきそうですので、例外なくとは申しません。
でも、もしかすると記録にはなくたって、そういう人間性ではなかったという
確証もないので、環境が変れば、面白いことをした人達かも知れませんからね。
「リリオ社中」なんていう表現もわざと古風を気取っていて面白いと思います。
社中という表現は、邦楽などで同門の仲間を表すので、ジャズ・グループとしては
これも洒落のようなものですが、とにかく、伴奏までやってくれているのです。
渡辺プロダクションの実力は今では単に人気者が居た位にしか評価されませんが、
タレントの実力たるや大変なものでした。
しかし、あくまで大衆目線で幅広い層の耳目を惹き付けるというのが渡辺社長の
信念であったようなので、難しいことが出来ても、それは能を隠しても大衆が
わかるように表現することを第一義に考えていたように思います。
ですから兎に角、観客を、または茶の間の一家団欒の目と耳を傾注させるために
どうやったら楽しませることが出来るかを追求していたプロ集団だったのです。
ザ・ピーナッツはテレビが生んだアイドル歌手第1号です。
それ以前の人気歌手はラジオや映画で人気が盛り上がっていた方です。
しかしながら、今のアイドルとは質が違います。
この、わらべ唄に過ぎない「ずいずいずっころばし」を、これだけ聴かせることが
デビュー1年足らずのアイドル歌手に、今、出来るものか想像するだけでも彼女ら
の本質的な実力の高さがわかるというものです。
ザ・ピーナッツはどんな唄も難しそうには歌いません。技術をひけらかしたって、
そんなものはちっとも楽しくないからです。
だけど、簡単に真似が出来るようなレベルじゃないのです。ここが重要なんです。
植木等さんの歌唱力だって、あれは大変なものです。でも、その力量を秘めた形で
面白可笑しく歌うところに値打があるのです。
日劇の「ピーナッツ・ホリデー」を初めて観た時は驚きました。
「シャボン玉ホリデー」も今の番組のようなダラダラグダグダと間延びした感じの
進行ではなく、ハイテンポ&ハイテンションで凝縮した楽しさや音楽性が満ち満ちて
いました。むしろ、現代のスピード感を40年前に先取りしているようです。
この感覚の超デラックス&絢爛豪華なのが、「ピーナッツ・ホリデー」でした。
単なる歌手のショーなんてレベルじゃなく、あれを超える舞台は今後ありえません。
そういうモノ作りの大切さが、世の中から消えてしまったからです。
絶対にお薦め、これは必聴です、というほどの出来栄えではありませんが、これらを
積み上げることで、聳え立つザ・ピーナッツ音楽のピラミッドが見えてくるんです。
(2006.4.26記)