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スク・スク   1961.07
 SUCU SUCU
   作詞:音羽たかし 原曲:Taratenos Rojas-F.Bonitay.A.Ferreri
   編曲:宮川 泰 演奏:キング・シンフォネット
   台詞:スマイリー小原

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★

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この「スク・スク」は、ドドンパのように日本で大流行させようとナベプロが
大々的に企画したものの、ブームにならず見事な空振り三振に終わった曲です。
この写真は、当時のミュージックライフ誌の記事です。

もう少し拡大してみましょう。

各社いっせいに競作となっているという記事ですが、これはナベプロが仕掛けた
戦略で、競作にしてもらうように働きかけたから、そうなったのでしょう。
事実、多くのレコードが各社から発売されましたが、リズムや踊りは世間では
流行はしませんでした。
それでも、ザ・ピーナッツのレコードだけは良く売れました。
他の歌手、特に新人でこれに賭けた人にはお気の毒なことをしたものです。

ザ・ヒット・パレードでは、夏から秋にかけて、ずっと第一位を維持してました。
制作が自社ですから、多少は得票数をごまかしていたのかも知れません。(笑)
人気のあったプロレス中継と一緒で、ショーとしての演出のようなものです。
ザ・ピーナッツのレコードは年末まで売れ続け、紅白もこの歌で出場しています。
キング・レコードとしてはおいしいヒットであることはまちがいありません。

曲そのものは幼稚園の子供にでも歌えそうなかんたんなメロディーと構成です。
しかし、シンプル・イズ・ベストという言葉があるように単純だからいいのです。
この曲が大好きな☆ピーナッツ・ホリデー☆のアンカーさんは世界中から集めた
この曲の手製アルバムを作られて、カーステレオで聞かせて頂いたことがあり、
それはそれは多彩なもので、そういう楽しみ方さえ生まれてくるものなのです。

単純な歌であるということは、そのままでは面白くありません。
付加価値が勝負なのです。こんなこともやっています。

この面白い効果音は「スク・スク・ドール」でも使われました。

まあ凄いものだと今更感じるのですが、このリリースは7月なのでありますが、
丁度このタイミングで「モスラ」が封切られているんです。
正確な数の公表は見たことがありませんが、当時までの特撮映画の観客動員数を
超えたというのだから、恐らく1000万人に近い大変な数の日本人が見た事に
なるはずですから、茶の間ではあの小美人がスクスクを歌っていることになって
異種媒体によるこの相乗効果は想像を絶するものではなかったでしょうか。

当時の日本はまだまだ貧しい国家でありまして、成長期ではありましたが庶民の
娯楽といえば映画の存在が大きく、そこへ急速に普及したテレビの存在は圧倒的。
行く所がないから映画でも見ようか、とか、ただ単にテレビをつけておくという
現在の状況とは大違いで、映画もテレビも文字通り熱中して見ていた時代です。
特に若い世代は本当に夢中でモスラもスクスクも受け入れたのでした。

先日放映されたドラマ『ザ・ヒットパレード〜渡辺晋物語』をご覧になった方は、
きっとこのスクスク作戦もあの10メートルほどもある細長いコタツで行われる
ブレーン・ストーミングで生まれたのだろうと容易に想像出来るはずです。
きっと茶の間に浸透したスマイリー小原さんの存在を活かすことが出来ないか、
という命題がテーマになったのでしょう。
ザ・ピーナッツとスマイリー小原のセリフの掛け合いがお楽しみとして加わった
ことによって、このレコードの魅力が倍増したのは間違いありません。

演奏はキング・シンフォネット(スタジオ・ミュージシャン)でスカイライナーズ
ではありません。スマイリー小原さんだけが声の出演です。
ステージなどでは、別のアレンジを使いビッグ・バンドならではのかっこいい音が
聞けるように編曲されていまして、これがまた凄かったんだ。
しかしながら、いつもいつも指揮者のスマイリー小原さんとピーナッツが組んで、
お仕事をするわけではないので、そういう場合はセリフの掛け合いは出来ません。
そこで、ピーナッツ単独の時は、

 ユミ「ねえ、エミちゃん」
 エミ「なあに?」
 ユミ「スクスクって不思議なリズムね」
 エミ「ハートでじかに感じちゃうのね」
 ユミ「なんだか身体がムズムズしてくるわ」
 エミ「わたしはワクワクしてくるわ」
 ユミ/エミ「きっとこれがスクスクね!」

と、こういう具合のセリフに置き換わるのであります。
ノートの切れ端に書いた私のメモが「スクスク」のEPレコードに挟まってました。
なんでも捨てないで持っていれば、役にたつこともあるんですネ。(笑)
さて、これもお話のネタとして面白いと思うのですが....
この「スクスク」のレコードには二つのバージョンがあることがわかっています。
CDも二つのバージョンがさりげなく存在します。注意してないと判りません。
両者の違いは、歌詞にあります。

 ♪麻薬によく似たスクスクの味
  ↓
 ♪なんともいえないスクスクの味

このように変えています。オリジナルは上の方ですが、麻薬が素敵だと歌っている
かのようになるので、これはマズイと変えたものと思われます。(たぶん正解)
今では演奏先行で歌は後で入れますが、当時は同時録音ですから、演奏もやり直し。
演奏と録音を含めた全体の出来としては、オリジナルの方が私は気に入ってます。
あまりこういうことを書くと、オリジナル録音が消されてしまう可能性もあるので
ここだけの内緒話にしておきましょうネ。

↑ 歌詞改訂版のスク・スクが入っているCD。


(2006.6.1記)(2009.1.31追記)