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スターダスト   1970年頃録音
 STARDUST
   作詞:Parish, Mitchell 作曲:Carmichael, Hoagy
   編曲:宮川 泰

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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ザ・ピーナッツのファン・サイトで、スターダストの解説が要るのか? そんな疑問
さえも生じる程の定番中の定番のスタンダード・ナンバー。名曲中の名曲です。
もっともシャボン玉ホリデーでザ・ピーナッツがエンディングで歌わなかったら、
日本人にこんなに親しまれる曲とはならなかったかも知れません。
ただし、当時からこの歌のレコードがあったわけではなく、シャボン玉ホリデーの
放映が終わろうとしている1970年代のアポロン音楽工業のテープ商品企画の中で
やっと録音され、現在、これを聴く事が出来るのです。

テレビで歌っていた録音も、このテープ商品の録音もどちらも宮川先生のアレンジと
思いますが、歌い方は全然違います。
シャボン玉のエンディングは、まだザ・ピーナッツが10代の頃の歌でもありますし、
なんの技巧もないような極めてストレートで、かつ文部省唱歌のような清々しい感じ
で外国曲でありながら、誰にでも歌えるようなピーナッツ節で親しみやすく歌ってて、
英語なのに英語じゃなくピーナッツ語になってるし、何ともいえない魅力があります。
これは欧米の人が聴いたら、ずいぶん、変なアクセントじゃないのかとも思います。

しかし、このザ・ピーナッツの歌を作曲者本人が絶賛したというのだから面白いです。
詳しくは、日本テレビ出版の「シャボン玉ホリデー<スターダストをもう一度>」を
読んで頂ければ、14ページにわたって詳細に書いてあります。

ザ・ピーナッツ、そして、故人のハナ肇さん、渡邊晋さんにとって、この歌は特別な
意味を持っていたようです。
肝臓ガンで闘病中のハナさんの病室での様子を中尾ミエさんが語っている...

 「ハナさんが最後のときもピーナッツが来て『スターダスト』を唱って、病室でね。
  それでホントに、あのシャボン玉のエンディングみたいだネって状況の中でハナ
  さんの生涯は終わりましたから…………」
 「もう本当に身体の一部になってたんだと思う、みんなが。病院に行ってもハナさ
  んは臨終間近なんだから……。それでもピーナッツがいて、植木さんがいて、
  クレージーのメンバーがいて、私たちがいたら、もうコレは『シャボン玉』以外
  のなんでもないわけじゃん」
 「それは渡辺プロのメンバーが集ったとか、昔のメンバーが集ったとかの次元じゃ
  なくて、もう的確にこれは『シャボン玉ホリデー』だネって状況なわけよ」
 「……で、ハナさんを送る音楽はやっぱり『スターダスト』だったし…………」

先日、テレビで放映されたザ・ヒット・パレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語の
ベースになった「芸能ビジネスを創った男_渡辺プロとその時代」(新潮社刊)。

この中にもスターダストの曲が流れているのです。
ハナ肇さんの臨終の場面と双生児のように渡邊晋さんもスターダストのメロディーに
送られたのです。もちろん亡くなったのは晋さんの方が8年前なのですが....

 危篤に陥り、意識を失っていた渡邊晋さん。呼吸も小さくなっていくその枕元で、
 長女の美樹さんがそっと歌い始めた……
 美樹は父親を音楽で送ってあげたいと思った。病室にはステレオは無かった。
 自然にメロディが口をついて出たのであった。万由美、美佐もハミングで続いた。
 歌声が止んだ時、晋はすでに永眠していた。
 そのメロディとは『スターダスト』なのであった。
 晋が最も愛したメロディだった。
 シャボン玉のエンディングでピーナッツに歌うことを薦めたのも晋なのだった。

シャボン玉ホリデーでのザ・ピーナッツのスターダストの歌唱が終わると、その後に
余韻を醸し出すのが、ロス・インディオス・タバハラスのインディアン・ハープで
奏でられるスターダストです。
(2006/09/30、woopieから掲示板にご投稿を頂き、この音色はギターであり、
 インディアン・ハープではありませんよ、とご指摘がありました。
 私が上記でインディアン・ハープと記述したのは、この曲のシングル盤の表記と
 合わせたものであり、また更に、この随想の中でご紹介している日本テレビ出版の
 「シャボン玉ホリデー<スターダストをもう一度>」の内容記事とも合っており、
 これで良いものと考えたからです。
 しかし、レコードのライナーなどというものは余り信用がおけないものだという
 事例は数知れず、特にこのグループの成り立ちに関しては謎だらけであったとか。
 インディアン・ハープというレコード表記も日本ビクターの担当者がインディアン
 のスタイルをしている彼等の写真から妄想を膨らませたのかも知れません。
 インディアン・ハープという楽器の構造を知らなかったので、ギター形状をした
 彼等の楽器なのかな、というのが私のイメージでした。
 ところが、ご投稿を頂いてからネットで調べると、これはあくまでハープの一種。
 可愛いので大好きな上松美香さんが演奏しているアルパ(中南米の小型の竪琴)
 のお仲間がインディアン・ハープだということがわかりました。
 そうであれば、あの演奏がインディアン・ハープでないことぐらい素人でも判る。
 ハープは調弦とペダル操作でしか音程を変えられないからビブラート奏法は不可。
 もしやろうと思ったら人間じゃなく千手観音のような生き物でないと出来ない。
 日テレ出版の記事も恐らくシングル盤を見た齋藤太朗ディレクターの談話を基に
 書かれたものなのでしょう。
 もしかするとインディアン・ハープ奏者という経歴もデタラメかも知れません。
 ということで……
 この演奏は間違いなくギターでありますので、訂正させて頂きます。
 「普通より音程を高く調弦している」と
woopieから教えて頂きましたので、
 レキント・ギター(五度高い)使用、あるいは特製の楽器なのかも知れません。)

宮川泰さんも、歌に続くこの演奏の、その取り合わせの絶妙さを絶賛している。
この見事なクロージングの演出は日本のテレビ番組において最高のものであった。

このロス・インディオス・タバハラスのレコードも殆ど無名の存在であったことを
皆様はご存知だろうか?
彼等の当時のベスト盤LPにはスターダストは入っていないのであります。
これは演出を担当した齋藤太郎さんが資料室から探してきたホコリをかぶったEP盤
が音源だったのである。このEP盤を後日、私も買いました。
現在、家の中で行方不明なので、見つけ次第に写真をアップします。

2006.10.14.見つけました↑(笑)。ギターって書いてあったじゃん。(爆沈)

シャボン玉における、このタバハラスのレコードもピーナッツの歌も特徴的なことは、
ヴァース(前歌)を抜かして、歌の途中から歌っていることなのである。
この手法は決して独特のものというわけではなく他にも事例はあるのだがシンプルに
ストレートにスターダストという曲の良さを活かした好例であることには違いない。

この歌が始まると、ああ、来週までさよならなのか(火曜日にヒット・パレードが
あるので、まあ、我慢出来るのだが...)とか、ああ、もう休日はお終いで、明日は
また学校(または会社)に行かなければ、という落ち込むような、切ないような..
なんとももの淋しい気持にもなるのでありました。

そして今は、これほどノスタルジーをかきたてる歌はないというほど若かった時代の
苦悩を含めた色々な出来事も一緒に思い出す大切な曲となっています。
これは私だけではなく、当時を生きた人にとって、様々な思いが一緒に詰まっている
永遠のスタンダード・ナンバーとなっていく名曲だと思います。
(2006.6.15記)