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セプテンバー・ソング   1967.12
 SEPTEMBER SONG
   作詞:Maxwell Anderson 作曲:Kurt Weill
   編曲:宮川 泰 演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1967.10.05 キングレコード音羽スタジオ

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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この歌は、1950年の映画「旅愁(原題セプテンバー・アフェアー)」の主題歌と
して使われたものですが、1930年代のミュージカルのナンバーなのだそうです。
歴史的名曲という存在なのでしょう。ジャズでも古典として扱われています。
ザ・ピーナッツもスタンダード名曲カバーという位置付けで歌ったものと思います。

外国曲を歌う場合、全部日本語訳(中には訳というより作もありますが)で歌う場合
と、部分的に原語で歌う場合もありますが、この歌は全部英語で歌っております。
このように全部を原語で歌うケースでは、原語でなければニュアンスが伝わらなくて、
良さが生きてこないことが多いと思われますが、詩としても名作であることもあり、
そのままで歌うことが相応しいと判断されてのことと推察します。

横文字からきしダメの私としては、ネットの翻訳サイトのお世話にならざるをえない
わけですが、直訳となってしまうので、本来の感覚はちょっとわかりづらいです。
――5月から12月までは、まだ日がある。でも9月から12月までは、もうすぐ。
なんて月日のたつのは早いのだろう・・・だからこそ、この9月の輝ける日々を、
愛するあなたとともに過ごしたい――
これでは、今ひとつピンときませんね。

ようするに、一年間を人の一生に喩えているのでしょう。
9月ころといえば、もう50代くらいに相当するのではないでしょうか?
若い頃はプロポーズを何回も断わられても自分には泣きながらも待つ時間があった。
それは楽しみでもあったけれども、もう人生の秋を迎えようとしている今からの時間
はとても貴重なものだ。二人の愛は時を経てワインのように成熟しているのだから、
もう待つ必要はない、これからの貴重な日々を二人で過ごそうじゃないか。いいだろ?
こんな感じの曲ではなかろうかと思います。洋風の「君といつまでも」みたいな?

アレンジは名匠宮川先生ですが、宮川先生の編曲のセンスが良いところは曲に応じて
料理法を変化させている点だと思います。
うんとハメを外した方が面白い場合と、曲の旋律をあくまで活かして編曲は支え側に
廻るという発想の転換が巧みで、いつもサービス過剰なことをするわけじゃない。
この曲では、じっくり名旋律を堪能して頂きましょうという意図で、凡庸ではないが、
編曲が際立つことを抑えているように感じます。

ザ・ピーナッツの歌も何ら楽曲の進行の流れを阻害することなく極めて自然に流麗に
歌っており、歌唱力を誇示するような技巧的な変化をつけているわけではありません。
しかしながら、確かなアレンジに支えられた、この時代でのセプテンバー・ソングを
創出していることは間違いなく、古臭いイメージというものは感じさせません。
「宮川/ピーナッツ」コンビによる本物のプロの名人芸と評して良いと思われます。
聴かなくても生きていけますが、聴けばもっと人生が豊かになる、そんな感じです。

ところが、このレコードは残念ながら未だCDになったことがありません。
CMソングやら映画の挿入歌までCD化されているザ・ピーナッツの歌では奇妙な
結果になっているのです。どうもCD化には「運」のようなものがあるようです。
A面がヒット・ソング・コレクションのような構成のアルバムであったがために、
同じような構成のものと曲がダブることを懸念して見送られるようなのですね。
この曲が収録されているLPアルバムには下記の3曲の未CD化曲も同居してます。
  イエスタディー  
  男と女  
  アンド・アイ・ラブ・ヒム(別バージョンのCDは存在する)
是非、何かの機会にCDでお目見えすることを期待したいと思います。

私個人としては愛聴盤の状態が大変良いため、特にCD化がされなくても困ることは
ありませんし、AD変換で私製CDも作って、これでも聴いています。

「ザ・ピーナッツ・メモリーズBOX」というDVD付きの10枚組CDアルバムが
出たときに、シングル盤オールコンプリートが実現しましたし、超レアな音源までも
CD化されました。
これのLPターゲット・バージョンを「メモリーズBOXー2」として出せないかな、
とか、思ってしまうのですが、どんなものでしょうねえ。

税金のことは詳しくないのですが、聞くところによるとCD商品の在庫を抱えてると
棚卸し資産と看做されて税金をとられるとか?
音楽はお金儲けのためだけに存在するわけではないのだから、ザ・ピーナッツの歌の
ようなものは文化遺産として税制面でも優遇されるような風にならないのかしらネ。
そうすれば売り切りじゃなく、常にどの曲も在庫がある、というようになると思う。
勝手な寝言かなあ。
(2006.10.19記)

2009.03.25「ザ・ピーナッツ オリジナルLP紙ジャケット・コレクション」にてCD化実現。