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♪草原情歌 1961.06
(中国民謡)
作詞:竜 俊南・青山 梓 編曲:宮川泰
演奏:キング・レコーディング・オーケストラ
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★* | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
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私が初めて買ったザ・ピーナッツのレコードのB面曲です。愛着があります。
中学二年生でしたが、それまでのザ・ピーナッツが歌う曲のイメージとは大きくかけ
離れているという印象を持ちました。
東宝映画「モスラ」の主題歌がA面なんだから、B面には、あのモスラーヤ、モスラー
が入るべきじゃないのか、むしろ、それがA面じゃないのか。
大人たちがすることの意味がさっぱりわかならくて困惑しました。
17年後の昭和53年になってやっと「モスラの歌/インファントの娘」のEP盤が
発売されたのは、当時、私と同様の子供だった人が、キング・レコードの責任がある
地位につく年回りになったからではないでしょうか???
そもそも何で中国の民謡を歌うのだろう。そういう類いのを歌ったこともないのに。
この疑問は、かなり後年になって、というより近年になって解けました。
あの時期はフォークソング・ブームの始まりのころだったのです。
この「草原情歌」は、「うたごえ喫茶」などで、よく歌われた曲だったのでした。
それを知ったのはNHKの昭和30年代を紹介する映像を見て、あ、そうだったのか、
と納得した次第です。そこまで気づかぬというのもかなり迂闊なアホですが。(笑)
そもそも私は、あのフォークソングという言葉が嫌いで、やや関心がなかったんです。
普通の歌謡曲と何が違うか。音楽的には何も特異点はないと私は思います。
売り方だけの特殊性をわざと持たせた商品体系に過ぎません。作られたジャンルです。
マイナー性を売り物にしておいて、しっかりメジャー・レーベルで売っているんです。
ステージではギターだけで歌うけど、レコードはオーケストラ付きで録音しています。
ほとんど詐欺のような看板だけの世界。専門の音楽家に任せるのではなく、自分達の
意思で自由に歌うなどどいうのだけど、何枚かリリースすれば専門の音楽家でしょ?
確かにレコード会社専属の作詞家、作曲家の手によらない、という面は新しいけども、
宮川泰だってレコード会社専属じゃないんだからネ。別段新味はないはずだけどな。
それにレーベルをよく見れば、編曲はプロがちゃんとやってるんだよ。あははは……
NHK−BSなんかで「フォークソング大全集」なんてのをやってて、私達の世代は
やっぱりフォークソングだ、なんて盛り上がっている。可笑しくてしょうがない。
けっこうつまんない歌を有り難がって聞いてるのは、かなり滑稽なものに見えます。
グループ・サウンズ・ブームしかり、これも同類項です。仕掛けた営業方針なだけ。
「花の首飾り」「モナリザの微笑」など、ちゃんとオーケストラの見事な演奏です。
「ブルー・シャトー」だって、森岡賢一郎編曲のオーケストラ・サウンドなんです。
これのどこが、グループ・サウンズだというのでしょうか? 耳が付いてるのか?
フォーク・ソングがダメ。グループ・サウンズがつまらない、などと言っているの
ではありません。ジャンルを分けること自体が無意味だと言ってるのです。
フォークでもグループ・サウンズでも「良いものは良い」。
「世の中には良い音楽と、そうでない音楽の二種類しかない」。
フォークもただの歌謡曲という呼び方でいいんじゃないの? どこがちがうの?
なにか新しいことをやっているというイメージを若者に持って買ってもらうがために、
編み出したメーカーの戦術に過ぎないものを、これでなければ、などと意気がるのは
単に踊らされていただけで、分別のつく大人になっても幻影が消えない人達です。
大体が「新しい音楽」「進んでいる音楽」なんてことを売り物にする場合100%が
インチキ商品と考えて差し支えない。
クラシック音楽の中に、大昔から既に存在する要素ばかりであって、新発明なんかが
出て来るわけがないんだから。
音楽は万国共通。「リズム」「メロディー」「ハーモニー」これで成立してるんだ。
その個々の要素が強く出る音楽ジャンルがそこにあるだけ。
私は愛知県の女性しか好まないからザ・ピーナッツが好き。そんなことはないだろ。
こういう意味のない区別、差別化が何故か音楽には多い。そんなに細分化したいのか?
「私は出身県にはこだわりません。良いと感じた異性が好きです」。普通そうだよね。
だったら「私はジャンルにはこだわりません。良いと感じた音楽が好きです」という
ようになるのが当然の帰結だと思うんだけどな。違うかなあ。
遠回りしましたが、私の中では「草原情歌」はフォーク・ソングという位置付けでは
ありません。中国の民謡を普通の歌謡曲のようにザ・ピーナッツが歌っているという
イメージでしか聞いたことがないのです。
言葉の使い方がそもそもおかしいので、本来の意味のフォーク・ソングではあるので、
民謡という意味なら合っています。
よしだたくろうは民謡歌手じゃないので、この場合は別のフォークソングとなります。
ややこしいネ。だからジャンル呼称なんて全く邪魔なんだよ。
モノラル盤で聴いていた時代でもそう感じましたが、歌声のエコー処理がとても強く、
お風呂場で歌っているように聴こえますが、ステレオ録音CDを聴いた途端に中国の
大草原のイメージとか、霧に霞んでいる大河とかのイメージが生まれてステキでした。
三橋美智也や春日八郎の伴奏ではお馴染みのキング・レコーディング・オーケストラ
という演奏表記がされたザ・ピーナッツの唯一のレコードでサウンドもちょっと違う。
昔ながらの伴奏のイメージに近い、オーソドックスな響きです。
宮川先生のアレンジはとても素晴らしい。ひょっとすると国内で出た同曲の編曲では
ピカ一ではないだろうか。
「北上夜曲」とか「祇園小唄」のアレンジも同様であって、現存するその曲の編曲中、
もっとも優れているのではないかと推察します。
ただの混声合唱団の歌声で「草原情歌」を聴いても、なんだかな〜と感じると思うが
この録音は音楽として聴き応えというものがあると私は感じます。
ボーカル・アレンジも大胆で、ここでしか聴けない面白いピーナッツもあるんです。
(2006.10.24記)