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そうらん節      1960.04
 (民謡:北海道)
   編曲:宮川泰  演奏:東京キューバンボーイズ
   録音:1959.12.19

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★ ★★ ★★*モノ

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ザ・ピーナッツと宮川泰のコンビはこの民謡を二回もレコーディングしています。
まず最初は、1960年(昭和35年)の録音からレビューしてみましょう。

ザ・ピーナッツはデビュー盤こそ「可愛い花/南京豆売り」という現在ではどちらも
スタンダード名曲となっている舶来の演奏曲に日本語歌詞を付けて歌いました。
これで当時はジャズやラテンなどを歌うデュオとして認識されたことと思います。
それが、二枚目のシングル盤では「キサス・キサス/チャッキリ、チャ・チャ・チャ」
という和洋折衷のレコードを出しています。
「チャッキリ、チャ・チャ・チャ」は民謡の「ちゃっきり節」のラテン風アレンジ。

当時、これには音楽評論家たちは批判的であったようです。
素晴らしい素質があると思われるこの新人コーラスに日本民謡を歌わせるのは才能の
無駄遣いであり、民謡を素材にして渋いジャズ・アレンジの凝った楽曲にするのなら
まだしも、これではまるで、民謡のままであり、せっかくの歌唱力を活かしていない。
といった散々な風評であったように思います。
それだけ評論家の耳はザ・ピーナッツの可能性の大きさを評価していたからの叱咤で
あったと思われますが、渡辺プロの晋社長の考え方は常に大衆目線で考える方針で、
難しくはするな、ということは以後も徹底していたと思われます。

私は評論家とは逆で、この「チャッキリ、チャ・チャ・チャ」は素晴らしいと思う。
これがあってこそ、以後のザ・ピーナッツの人気は不動のものになっていったのでは
ないか、とさえ思っている。
レコード盤としても私はこのB面の民謡の方が断然好きだ。こっちの価値が80%を
占めているんじゃないかとさえ感じてしまう。それほどこの楽曲は魅力的だった。
宮川泰という人のアレンジが凄いなと感じたのはポップスじゃないくて、この民謡で
あり、ちゃっきり節の元の音楽を知っていれば、これがどんなに楽しく面白いのかを
理解出来る面もあると思う。

ちゃっきり節については後日レビューを書くので、これくらいにするが、とにかく、
これが良かったからこそ以後の民謡ラッシュに繋がったのではないかと私は思う。
新人歌手でありながら、デビュー7ヶ月目にして「可愛いピーナッツ」というLPを
リリースしたのは当時までの最短記録ではないかと思われ、人気が爆発し沸騰した
ことを物語っているのだが、その後、わずか5ヶ月後に民謡だけのLPを発売するに
至ったのは、民謡歌手上がりの演歌系の歌手でさえも困難なことをやっているのだ。
この「そうらん節」はそのLPアルバムに収録されたものです。

さて、その「そうらん節」ですが、これを聴くと前述の音楽評論家の批評を思い浮か
べてしまいます。これは「チャッキリ、チャ・チャ・チャ」などに比べても正統派の
直球のようなアレンジなので新味に乏しく当時としても古典的な構成になっています。
それだけ普通の日本人が聴いても違和感がない感じで、シンプルに洋楽器の編成では
こんな感じになりますよ、といった風情なのです。
このままの編曲でテレビの番組で民謡を歌っても大概の人はこの伴奏で歌える筈です。
そういう意味で、これは昭和30年代なんだな、という古いイメージがあるんです。
宮川先生の持ち味というより、もっと普遍的なふつうのアレンジのように聴けます。

この場合、ラテン・バンドの東京キューバン・ボーイズである必要はなさそうですが、
さすがに大編成なので音に厚みがあり、ドスの効いたサウンドにはなっています。
曲の最後の方はピーナッツのスキャットが入って来ますので、やっとピーナッツ風味。
そういう盤なので、これを是非聴いておく必要があるというほどのお薦め盤ではなく、
歴史的資料という面があります。一度はCD化して欲しいなとは思います。
これはモノラル録音です。

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♪ソーラン節     1970.06録音 1970.08発売
  (北海道民謡)編曲:宮川泰 演奏:記載なし
   音源:8トラック・カートリッジ・テープ(アポロン音工)
   CD:「お国自慢だ! ピーナッツ」 

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★ ★★★★

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さ〜てさて、この歌の二回目のレコーディングは、CDに付属のライナーによると、
1970年6月録音、1970年8月発売となっている。
前項の録音より、10年を経て、再び民謡を歌ったことになる。
ジャズやボサノバなどを身近な音楽として聴いてもらおうという意図は年月を経ても、
ザ・ピーナッツ=宮川泰コンビには不変のものなのであろう。

民謡なんか歌ってもしょうがないじゃないか、という世の常識はここには存在しない。
楽しく面白いことをやる。そんな意志の強さまで感じてしまうし、この両者に独特の
ブランド・イメージのような風格まで備わっていると思われます。
このお名前やジャケット写真がなかったら、誰がこの民謡アルバムを買うでしょう。
企画が通った時点で凄いなと思うし、CDで復活してしまうのも凄いことだと思う。
東海林さだおさんの漫画イラストも雰囲気があってなかなかいいじゃないですか。

渡辺音楽出版に版権があり、アポロン音楽工業(株)が製作した8トラックテープの
車載用のカートリッジでも同じような曲の並びのアルバムであったろうと思いますが、
一曲目に「ちゃっきり節」を持って来るのはレコードの発売と同じであったりして、
さすがにザ・ピーナッツの故郷の十八番なのかな、と思うと微笑ましいかったりする。
そして、2曲目に「ソーラン節」が登場する。こちらはカタカナ表記である。

10年前の録音とは全く異なるアレンジなのではあるが、非常に似通った共通性を
感じるところもある。それは、ソーラン節の持つ原始的エネルギーの尊重だと感じる。
つまり、あまり変化を付けないということ。民謡の持つパワーをそのまま活かしてる。
宮川泰ならばもっと面白いことを考えつくのであろうが、あえてそれを封殺している。
北海道留萌市のお生まれであるということも原曲のイメージを大切にする要因である
可能性も考えられる。だから、大切にしたいものが奥底にあるのかもしれない。

このアレンジならば、お爺ちゃんもお婆ちゃんもいっしょに歌うことが出来そうだ。
これは10年20年古いアレンジだろう。アルバムの中では古典的な印象を与える。
したがって、ザ・ピーナッツならではという付加価値は少ないのだ。
だが、それは決してマイナス面であるとは言えないと思う。どうしてもこのスタイル
で歌わせたかったのではなかろうか。ソーラン節というものはこういう曲なんだ、と
いった強い信念を感じるのである。
そういう意味でも全曲を通じて一貫したセンスで作られたアルバムという印象がなく、
バラエティに富んでいて、悪く言えば散漫な感じもある。

じっとステレオの前で聞き耳を立てるのが普通は良いのだが、このアルバムはやはり
ドライブのお伴に適切ではないかというイメージを私は持つ。
そういう意味で、本来の商品としての企画は巧みであり、特に若い人じゃなくても、
お金持ちの爺さんのカーステレオの収納ボックスに、北島三郎の演歌なんかと一緒に
収まっていても違和感がなさそうである。演歌のような深刻さがないだけに、早朝の
出勤時に聴いてもいいだろうし、お休みに海岸線をドライブしたりする場合などにも
ぴったりではなかろうか。そんなわけで、ザ・ピーナッツも結構多用途なんである。
(2006.10.27記)

2009年1月21日 遂に待望のCD化が実現しました。バンザ〜イ。

このCDには上記2バージョンが収録されています。