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♪太陽のかけら    1966.05
   作詞:七野洋太 作曲:M.Holm 編曲:宮川泰
   演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1966.02.22 文京公会堂
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★

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この曲はもう完全に過去へ追いやられてしまっているような感じがあります。
どの世界でも、やたらにジャンルごとに詳しい人がいるものです、そういう範疇かも。
懐メロ・ポップス番組でも、まず歌われたことはありませんしCDなども出ていない。
その意味ではザ・ピーナッツのCDは貴重な文化遺産になっているかもしれない。
あんまり詳しくは覚えていませんが、当時はそんな特殊な歌ではなくて、他の歌手も
歌っていたように思うのですが、ザ・ヒット・パレードの中だけだったのかなあ?

他の随想でも書いたことですが、このアルバムには飛び抜けた大ヒット曲は入っては
いないので、ザ・ピーナッツ・ファンの人でもLP盤は高価だから二の足を踏んだり
することがあったように感じます。私のような狂気一歩手前に居る人は買ったのかも。
ジャケットも高級感にちょっぴり欠けるような面もあり、本当に売る気があるのかと
訝ってしまうような淡々としたレコードでありました。
もう既にザ・ピーナッツの人気と実力は世間的にも定評のあるところであったわけで、
余裕なんでしょうが、油断というか、もっと緊張感を持ってほしい気がしたものです。

前年に出たLPの「アモーレ・スクーザミ」もそういう面があったように思いますが、
ザ・ピーナッツの歌が好きな人は買うでしょうし、そうでない人はお呼びでない、と
割り切ってしまっているような妙に自信たっぷりの作りであって、サービス精神風の
要素がないのです。たとえあと200円高くなってももっと装幀などを凝ってほしい。
そんな安っぽい感じを払拭してほしいものだと思いました。

そういう面では、デジタル化されたCDアルバムは本当に安っぽい。
実際に、LP二枚分が入っていて、2000円なんだから、タダみたいなものです。
しかし、音質は良い。
とかくデジタルはアナログに及ばないなどというが、私は素晴らしいものだと思う。
現在アナログのプレーヤーを持っていない人は無理してレコード盤などを買い求める
必要はないとさえ思える。
新品のレコードが供給される時代ならともかく、中古のレコードを買うような必要は
こと音質に関しては無意味だ。ノイズを聞くのが好きだというなら好きにすれば良い。

さあ、もう脱線しちゃおう。
では、レコードとCDはどちらが優秀なのだろうか。
それぞれ長所と短所を持っているが、総じてCDに軍配が上がることは間違いない。
しいてCDの欠点を上げれば、高音域が2万ヘルツで急激にカットされていること。
レコード盤は符号化しない物理的なものなので3万ヘルツくらいまで伸びている。
原理的には無限に伸びるのだが、カッテイング・マシンの性能上、限界はあるのだ。
しかし、デジタル信号のように完全に無の世界とはならずなだらかな減衰となって、
自然な響きとして人間には感じ取れるといわれている。

CDに収録出来る周波数の上限は2万ヘルツであるが、この周波数の音色が実際に
人間が聞き取れるものではない。若くて耳が極端に優れていなければ無理である。
年齢とともに高い音は次第に聞こえなくなってくるため、通常の音量では私自身が
試してみると、13000ヘルツまでしか聞こえなかった。
では、十分なのか、2万ヘルツまで出ていれば音楽を聴くのに不足はないのか、と
いうと、それはまた何とも言えない。ここが面妖なややこしいことなのである。

実際の音楽を人が聴く場合には、その聴こえない領域の音波が無いとダメなのだ。
単音としては聴こえなくても複合された音波には含有されていなければ気付くのだ。
これが人間の耳の摩訶不思議なところであり、実際にも簡単に体験できることだ。
現実に、CDのフォーマット(規格帯域)では自然音の収録が万全ではないことを
設計段階からメーカー側は気付いていて、あくまで妥協の産物として送り出した。
そこで、音の美食家(オーディオ・マニア)のために、もっと高音域まで収録して、
かつ音波の捉え方を変えたデジタル変換を行ったスーパーオーディオCDを開発し、
SACD規格として商業ベースに乗せることになったのだ。
CDで十分ならば、こんな開発をする筈がない。

じゃあ、これで万々歳かというと、どうもそうではないらしい。
世の中はそんなに単純ではないのだ。
たしかに、SACDは規格自体は優位にあるし、マルチチャンネルという別の意味の
原音再生(音の場としての再現)も可能とする夢のフォーマットである筈なのだが、
ど〜も思ったほどには「音が良くない」のだ。
それは何故かといえば、どこにも誰も書かないが「コスト」が問題なのだと断言する。

そもそもが、これはアナログ時代から何も変っていない事実なのであって驚くような
事象ではない。
アナログ・レコードの再生においても妥協を許さない高度な性能を発揮出来る機器は
途方もなく高額になってしまうのだ。そんなことはわかりきっているはずだ。
お金をかければ良くなるとは限らないが、お金をかけなければ良くならないのは事実。
メーカーの技術者はどうすれば音質が良くなるか、なんて、とっくにわかっている。
そうじゃなけりゃプロじゃないだろうが。
だけど、現実には商品を開発するのだ。どうしても妥協せざるをえないのだ。

だから、これが最高だとは思わなくても、現実として、これだけ良い音で鳴らせれば、
お客様にもなんとか満足して頂けるのではないか、という商品を作る。
そんな一例がこれだ。
↓↓↓
http://www.accuphase.co.jp/model/dp-500.html

このようなCD専用のプレイヤーでCDを聴けば、SACDなんかを凌駕する音質が
聴けるであろうし、そんじょそこらのアナログ・プレーヤーで鳴らした音とは雲泥の
差として聞き取れるであろう。豊富にお小遣いのある方はどうぞお試しを。

じゃあ、SACDなんか無意味なのかといえば、そうじゃない。
上記のCD専用プレーヤーの2倍以上の価格であれば、SACDの良さが発揮されて、
そこで初めて、アナログ盤やCD盤との差別化も可能となるであろう。
すなわち、
普及価格帯(一般家電製品の世界)で、音の違いをアナログとデジタルを比較したり、
SACDがかけられるからといって、音がいいかも、なんて思い込むのは大間違いだ。
話のネタとしては面白く、ネットでも、やっぱりアナログはいいね、なんて寝言風に
ほざいている輩が多いが、どのレベルでその判断をしているのだろう。

現実に我が家にもSACDコンパチブルのプレーヤーがあるのだが、SACD層での
再生とCD層の再生のいずれも、CD専用機にははるかに及ばない安物なのだった。
結局、カタログでなにが書いてあろうとも、安物は安物で音の味わいなんて問題外。
ザ・ピーナッツのレコードが聴きたいとか、SACD盤を出してほしいとかといった
願望はそういう環境面が整ってからのステップアップだろう。
まずは、今のCDをもっと高度な「CD専用」プレーヤーで聴くことが先決。
まあ、騙されたと思って、聴いてごらんなさいよ。目が醒めちゃうから。
(2007.2.6)