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♪ダンチョネ節  1963.01
   神奈川県民謡
   編曲:宮川 泰 演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1962.10.16 杉並公会堂

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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♪三浦岬でヨ  どんと打つ波はヨ
 可愛い男のネ 度胸試し ダンチョネ
♪泣いてくれるなヨ 出船の時にゃヨ
 沖で櫓櫂がネ 手につかぬ ダンチョネ
♪沖の鴎にヨ  潮どき問えばヨ
 わたしゃ立つ鳥ネ 波に問え ダンチョネ

ザ・ピーナッツのLPでは単に民謡という表記しかありませんが三浦岬という地名が
どの辺りになるのかを知る意味でも神奈川県民謡とここでは書いてみました。
また「三浦岬でよ」という歌詞の他に「三浦三崎でよ」というバージョンもあります。
京浜急行に乗って終点の「三崎口」まで行き、あとはバスなどで三浦半島の突端まで
行く事が出来ます。美味しいマグロを思う存分食べることが出来ますよ。

「ダンチョネ節」といえば古いところでは小林旭さんの十八番(オハコ)でしたし、
新しいところでは八代亜紀さんの「舟唄」(新しくなかったかな)の挿入節でも有名。
 ♪沖のかもめに 深酒させてヨ
  いとしあの娘とヨ 朝寝する ダンチョネ
まあなんてお見事な歌詞なんざんしょ。と思ったら、阿久悠なんですね。さすがだ。
そういうわけでローカルな民謡というより日本中の人が知っている歌なんです、これ。

元歌は「勇波節」といい、古謡の三崎甚句とも関連があるとネットで知りましたが、
 ♪三崎港にドンと打つ波は 可愛いお方の度胸定め
こういう歌詞があって、確かに似ているようにも思いますが、地元ではダンチョネ節
とは別の歌として今も歌われているようです。
さて、
民謡と言えば「方言」がつきものですが、神奈川県生まれの私でもダンチョネという
言葉の意味が判りません。
これもネットで調べてみると「断腸ネ」らしいのです。びっくりしたなあもう。
断腸の思いを歌っているというわけです。方言じゃなかったんだ。

場所柄から現在でも横須賀に海上自衛隊の基地がありますし、戦時中は「特攻隊節」
という異名で歌われていたらしいです。これはまさに、断腸ネですね。
 ♪沖の鴎と飛行機乗りは どこで散るやらネ はてるやらダンチョネ
 ♪俺が死ぬ時ハンケチ振って 友よあの娘よネ さようならダンチョネ
 ♪弾は飛び来るマストは折れる ここが命のネ 捨てどころダンチョネ
 ♪俺が死んだら三途の川で 鬼を集めてネ 相撲とるダンチョネ
 ♪飛行機乗りには娘はやれぬ やれぬ娘がネ 行きたがるダンチョネ
ザ・ピーナッツが歌っている歌詞はここまで悲壮でもなく暗くもありません。
恋仲のカップルとか伴侶が海に漁に出る時の無事を祈る気持とか遠洋漁業での別れの
切なさのような恋情面での断腸の想いを歌っております。

宮川さんのアレンジも弦楽器をうねらせて明らかに海洋の風情を音楽にしています。
ビオラ・チェロの類いの中低音が大波を感じさせバイオリンの音色とフルートの音が
波頭に立つ飛沫のような感覚を抱かせて、いかにも波の上という感じを音楽にしてい
ます。リムスキーコルサコフのシェエラザードを彷佛とさせる面さえ感じられます。
楽器の使い方は弦楽器と木管楽器に絞り込んでいてモノトーンに近く海の青さ一色と
いうイメージであり、華やかさを意図的に排除しているようにも思えます。

本当に残念なのは、今まで一度もCDになっていないことです。
私個人としては幾分かのスクラッチノイズ(針音)が伴ってしまうもののLP盤での
鑑賞にさほどの不満はないのですが、より多くの人達とこの録音を聴く歓びを共有し
たいと思うし、デジタル化したサウンドの明晰で細密な響きも聴いてみたいものだと
思います。マスターテープには素晴らしい品質の録音が残されているはずなのです。

ザ・ピーナッツはCMタレントではないのでCMソングをCDでリリースする以前に、
また、ザ・ピーナッツは映画俳優ではないのでサウンドトラックをCDでリリースす
る以前に、歌手として、きちんとレコードのためのレコーディングをした録音素材を
優先的にデジタル化すべきではないかと思います。
これは単なるマニアの戯言ではない筈です。猛省をキングレコードに望みたい。

(2007.9.1記)


→ 2009.02 祇園小唄のLPがアルバムそっくりCD化されました。