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♪小さな喫茶店 1970頃
In Einer Kleinen Koditorei
訳詞:青木爽(作詞:E.Neubach)作曲:F.Raymond
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
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この曲は古典的なコンチネンタルタンゴが原曲であり、日本でのカバーもまた古く、
昭和10年に、中野忠晴という方が歌ってヒットしたのだそうです。
中野忠晴ってどんな人なのかなと調べてみるとウィキペディアで詳しく出てました。
ディック・ミネとともに、アメリカのポピュラーソングを戦前期のわが国に広め、
和製ポップスの基礎を築く。なんて書いてあります。戦後は歌手活動を辞めていて
作曲をされていたそうで、三橋美智也が歌った「達者でナ」「赤い夕陽の故郷」。
若原一郎の「おーい中村君」。松島詩子「喫茶店の片隅で」などを作られた。
キングレコード所属(戦後)なのでザ・ピーナッツの先輩になるのかな。
「小さな喫茶店」は、ドイツ生まれのタンゴということになります。
タンゴといえばアルゼンチンタンゴという本場ものがあるわけですが、もっと広く
ヨーロッパ全体で自由な演奏形式で愛好されたのがコンチネンタルタンゴ。
自由なということですから金管楽器まで入ったっていいわけでダイナミックです。
タンゴというとすぐアルフレッドハウゼとかマランドなどの楽団名が浮かびますが、
彼等はみんなコンチネンタルタンゴの範疇の人達です。
通の人達はアルゼンチンタンゴの演奏形態でないとイヤだとか思うのでしょうけど、
私は何でもありの方が面白くて好きです。
タンゴ全般に詳しいわけではないので断定しませんが、旋律を二つ重ねて聴かせる
技が多用されているように感じます。それがとっても上手いなあと思います。
日本でも長唄なんかで三味線と歌が違うことをやっていたり油断ならない面もあり、
これはとっても知的な遊びというのか、お洒落な感じがします。
ずっと昔のことですが、音楽について、あるエピソードに遭遇しました。
「君が代行進曲」というマーチをご存知でしょうか?
これは文字通り、国歌「君が代」を行進曲にアレンジしたものです。
ところが、私の両親は、どこに「君が代」が入っているのか、わからなかったのです。
短い前奏のあと、すぐに「君が代」が、ユーフォニウムなどの中低音担当金管楽器で
朗々と奏でられています。全コーラスを奏でて、トリオ(中間部)を経て、もう一度、
繰返されます。ちなみにトリオは「来たれや来たれ」という軍歌が入ります。
「君が代」演奏と同時に装飾旋律がクラリネットなどで華麗に演奏されるので、つい、
耳がそっちに引っ張られるから、「君が代」が聴こえなくなるんですね。
ちなみに両親は「軍艦行進曲」のトリオに「君が代」が入っていると思ってたらしい。
そう言われると、ちょっぴり似てはいますが、こちらには「海ゆかば」が入ってます。
お馴染みの「海ゆかば」ではなく、東儀季芳作曲の同名異曲なのでご注意。
マーチといえば昔、ラジオのニッポン放送やラジオ関東のナイター中継で流れたのが
とっても良くて、あれ、なんという曲なんだろうと、レコードを色々買いました。
結局、「ロネーヌ行進曲」「サンブルとミューズ(フランス分列行進曲ともいう)」
ということがわかって、嬉しかったです。
日曜映画劇場(淀川さんが出てたやつ)のエンディングテーマの惑星以前のテーマが
「ソー・イン・ラヴ(So in Love)」という曲だとわかった時も嬉しかった。
http://ww2.ctt.ne.jp/~a-k/disc/gould_soin.html
こういう例は多いですね。関係ないことに深入りしちゃったかな?
あ、なにを言いたかったかというと、ザ・ピーナッツのハーモニー面の評価のような
違う旋律を同時に味わうという聞き方が、どうも日本人には苦手なのかも知れません。
この辺りの機微を宮川さんもピーナッツも心得ていて、ユニゾンと見せ掛けておいて、
ここぞ、という時だけ、ハーモニーを忍ばせて来るというしたたかさがあるようです。
安心させておいて、どきっとさせる、この兼合いが上手いんだなあ。
話を戻しましょう。
タンゴは日本人が割と好きなリズムのようで、黒猫のタンゴとかダンゴ三兄妹など
このリズムで作られた曲がけっこうヒットするようなのです。
でも、ザ・ピーナッツの「小さな喫茶店」はタンゴのリズムで演奏されていません。
弦楽器の序奏にそういう風味を残していますが軽快にお洒落な装いで演奏されます。
これも昭和44年発売のアポロンの8トラック・テープが元の音源のようです。
アポロンの「歌謡百年大全集」のために、この録音をしたのだろうと確信します。
編曲や演奏の記述がないので、誰がアレンジしたのかは不明です。
わざわざこの曲に傾注して歌われた様子ではなくて、シャボン玉ホリデーの中での
一コマで歌われているような感じを抱きます。
シャボン玉での歌は良い意味で力みがなく、さらっと歌うことが多くて小気味良い
感じが好ましかったように記憶してします。でも、商品となるとちと変わってくる。
歌い尻が「パア!」なんていう調子なんだから、パロディとまでは行かないまでも、
もっと軽くあっさりとでいいんじゃないかと思うのですが、どうも、ちゃんとした
録音だという意識があるからか一生懸命に歌ってしまうようなのですね。
意識して、さっぱり味で、という気持ち程度はあるようなのですが、根が真面目人間。
熱気が歌に充満してしまう。聞き応えが生まれてしまうのです。
まあ、これは、しょうがない。ザ・ピーナッツの持ち味なんだよね。
こういうのを聴いていると、植木等さんが、一連のヒット曲を冗談ぽく歌い上げてる
芸というものは、実は大変なことだったんじゃないかなと思います。
ちゃんと堂々と歌える人だからこそ、ご苦労されたのではないかしら。
妙な方向に感想が脱線してしまいました。(毎度のことですが……)
(2007.09.27記)