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♪夢去りし並木道   未発表だった音源
The Boulevard of Broken Dreams
   作詞:音羽たかし 作曲:Harry Warren 原曲作詞:Al Dubin
   編曲:宮川泰 演奏:シックス・ジョーズ ウイズ ストリングス(推定)
   録音:1960.12.15
 

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
未発表 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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ハリー・ウォーレンが作曲し、アル・ドュービンが作詞した名曲で、
映画『ムーラン・ルージュ』1934年の主題歌として使われました。
(このCDの解説では作詞者と作曲者が入れ違っております)
ユーチューブに映画の動画がありました。(消えるかも知れませんが)
https://www.youtube.com/watch?v=NNq_mIkb-wg

ザ・ピーナッツのこの歌は凄い。圧倒的。寒気がするほど衝撃的です。
CD代金2000円はこの歌のためにだけ遣っても惜しくはないでしょう。
もしCDが廃盤で入手不可であれば、アイチューンストアで150円で
単曲購入できます。是非聴いてみて欲しいと思います。

他の曲でも言えることだとは思うのですが、この曲でしか聴くことができない
ザ・ピーナッツの歌唱が聴けるのです。特にそこが際立っております。
もともとザ・ピーナッツはつぶやき系じゃなく熱唱系なのではありますが、
これは熱いです。がなりたてるんじゃなく、生命の息吹で歌い上げてる。

このアレンジはポールアンカの「君は我が定め」風だと思います。
ロッカバラードというのでしょうか、昭和30年代に流行ったアレンジです。
ジャジャジャ ジャジャジャ ジャジャジャ ジャジャジャ ジャーンといった
3連符を決め手にしちゃいます。途中でもピアノが同じ音形で弾いてます。
そこへベースが、ボン ボ ボン ボボ ボンと循環コードで支えております。

「恋のバカンス」でも最初はスローなロッカバラード風だったそうなので
こういうアレンジだったのでしょうが、渡辺社長から、それじゃ物真似に
なっちゃうだろ(You Are My Destinyと同じじゃないかということ)と
言われて、4ビートのジャズ風にしたら、それが良かったとのこと。
したがって放っておくと宮川アレンジはこの曲のようになるみたい。(笑)
なので恐らくこの曲には編曲のコピー元は無いでしょう。
1934年の曲を宮川さんが1960年の流行に合わせて仕上げたと思われます。

☆ピーナッツ・ホリデー☆に「涙の並木道」の謎のコーナーがあります。
http://peanuts-holiday.jp/KICX-3129.html

「夢をあなたに」のLPの見本盤レーベルに「涙の並木道」が印刷され、
英題もThe Boulevard of Broken Dreamsですから、この曲に違いないです。
ところが実際にはIT'S BEEN A LONG, LONG TIMEが入っていたわけです。
これはどういうことなのでしょう?

収録曲の中では「夢で逢いましょう」が先行LPに入ってたので再収録。
この曲は1960.8.11録音でテレビ番組「魅惑の宵」のエンディングテーマ。
その他の「夢をあなたに」のLP収録曲は全部1961.2.18。
この「夢去りし並木道」の録音日は1960.12.15。タイミングが合いません。
結局、シングル盤にもならず、LPにも収録されない結果になっています。

キングレコードとナベプロのスタッフはこの録音が素敵だと思っていたに
違いありません。だからなんとか日の目を見させようと「涙の並木道」と
いうタイトルでLPへの収録を企画したのではないでしょうか?
でも、恐らく渡辺社長の鶴の一声でIT'S BEEN A LONG, LONG TIMEへと
収録曲が変わったのではないでしょうか?
この頃の渡辺社長のカンは冴え渡っていたそうです。正解でしょう。
たしかにLP全体が懐古調の懐メロポップスを古典的な演奏で統一されて
アルバムとしての出来映えは素晴らしいと思います。
ここに(当時としては)最新流行のビートでの演奏は違和感を与えます。

さて不可解なのは「夢去りし並木道」のタイトルです。
一般的タイトルは「夢破れし並木道」。Broken Dreamsですからね。
どうせ固有のタイトル付けるなら「涙の並木道」で良かったんじゃないの?
直訳じゃないけど意訳だよね。「何々し」なんて古臭いんじゃないかなあ。

ところで、ザ・ピーナッツが引退するその頃、有名な楽曲著作権問題が起き、
「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」という歌が外国の有名曲を
パクって作ったに違いないということで米国の出版社から提訴されました。
その有名曲というのがこのThe Boulevard of Broken Dreams。
たしかに部分的、全体的にも似てはいます。違いはホクロ有無(こらこら)。
結局、無罪となったんですが、まあグレーっぽい感じはありますね。

その問題の「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」がどういうわけか昔の
カラオケでは歌手=ザ・ピーナッツとなっていたんです。
この歌はたしか日野てる子が最初に歌い、カバー盤がうじゃうじゃ出ました。
でもザ・ピーナッツはカバーしてません。
なのにカラオケの歌手別索引ではザ・ピーナッツの持ち歌扱いなのでした。
全く不思議な現象ですが、先行してた「ウナセラディ東京」と混同したのか?

最後に、この録音、凄く生々しくていいんですよお!
マスターテープがタイムカプセルから出てきたようで、使用されないまんま
のテープの方が音が活き活きしてる感じです。
未発表曲以外でもあまりベスト盤なんかには入らないザ・ピーナッツ・ファン
しか聴かない曲も同様に音質が瑞々しいような気がするんです。
といっても、気のせいレベルではあります。

(2015.07.21記)