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♪二人はしあわせ  1961.02
 BLESSED ARE THEY
 源曲:FULTON,JACK/STEELE,LOIS 作詞:音羽たかし 編曲:宮川 泰
 演奏:シックス・ジョーズ

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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作曲家のドヴォルザークはとても人懐っこい音楽を書いた人です。
人嫌いの偏屈な人も多い作曲家の中でも夫婦円満で子煩悩な善人。
変人じゃないのですが、今でいう鉄ちゃん、鉄道マニアでした。
エピソードは色々あるけれど信憑性は怪しいので資料見ないで
記憶だけで書いてみましょう。

アメリカから音楽学校の校長さんになってくれないかとの依頼が
あったのだけど、鉄道線路の傍の家(駅も近い)から離れるのを
嫌がって、10倍以上もの高給なのになかなか行くと言わない。
子供を5人も養育するのにお金がかかるので奥さんが、
「ねえ、あなた、アメリカへ行く道中もいっぱい汽車に乗れるし、
アメリカの鉄道って沿線もいっぱいあるし、最新式の汽車もね。
だから行ったらきっと楽しいかも」と上手に説得した?

アメリカへ行ってみると黒人俗謡など土臭い音楽の中に故郷のと
同じような音調の音楽を色々聴くと、これは人類は同じなんだ、
なんて思うと同時に望郷の思いもつのったりしてこれが出来た。
交響曲第9番「新世界より」第4楽章
https://www.youtube.com/watch?v=tsi5eJp4EVY

新世界というのはアメリカのこと。
この音楽をテレビで風景付き映像でやると自由の女神とかモスラが
風圧で壊したあの有名な橋(調べろよ/笑)とか出て来るんだけど、
それより、この音楽は蒸気機関車が始動して走り出す感じだよなあ。
もちろん真面目な解説ではそんなこと一切書いてありませんが……
1分53秒あたりでシンバルが弱音でシャーンとなりますので退屈な
方はそこまで聴けばOKです。あれはブレーキだと思う人がいます。
この45分くらいのシンフォニーでシンバルが鳴るのはここだけで、
シンバル奏者は一回だけ小さく鳴らすだけという不思議な音楽です。
この交響曲は取材したアメリカの音楽要素がいっぱい入っています。

第二楽章の一部が「家路」という歌になって日本でも親しまれてる。
ホームシックでお家に帰りたいよ〜と一時帰省を申し出て許されます。
その家路の汽車に揺られながら浮かんだのがこの曲なのだそうです。
そう、ユーモレスクです。
https://www.youtube.com/watch?v=lUia8hzEMYQ

さて謎はここからです。
この北ボヘミア生れのドヴォルザークさんのピアノ曲からいきなり
ザ・ピーナッツの「二人はしあわせ」が生まれたとはとても思えない。
なにかしらポピュラー音楽化したモデルがあるんじゃなかろうか。
英語の歌詞があるんだから、誰かが歌ったんでしょうね。
そういうのを聴いた記憶がないので調べてはみたんですが分からない。
それでデキシーの演奏にヒントがあるかなとありましたよ。
https://www.youtube.com/watch?v=5m5jy4Pfldc

ユーモレスク弾いてるじゃありませんか。定番曲みたいな扱いです。
これデキシーランドジャズの源流とは何も関係がない筈でしょ。
だってジャズが生まれた時代はドヴォルザークさんがアメリカに住んで
いた頃より40年くらい後だった。まだジャズはなかったんですから。
なのでユーモレスクの節回しの原点の黒人俗謡とジャズの原点が一致
している音楽の血脈のようなものがあるのではないでしょうか?
だからデキシーでユーモレスクをジャズ化しても違和感が全く無い。
まるでユーモレスクがアメリカ産でもあるかのようです。

これで完全じゃなくともデキシーランドジャズのスタンダード曲として
宮川さんがアレンジしてザ・ピーナッツが歌ったという流れになる……
そういう感じがします。単にクラシックをアレンジした以上にしっくり。
更に気になるのがレコードジャケット裏面の記載事項。
BLESSED ARE THEYというタイトルのヒット曲はネットに見当たらない。
Steele-Fultonという文字列では作詞家/作曲家も見当たらない。
FULTON,JACK/STEELE,LOISという音楽スタッフは該当する記事があった。
恐らくこれの短縮名だろう。そしてこのスタッフはナットキングコールの
仕事もしている。ナットキングコールにとってデキシーはもう十八番。
だがディスコグラフィーを見ても、この曲らしきタイトルが存在しない。
もう戸籍調べは無理かもしれない。

ヴァイオリンの小品名曲として皆様よくご存知の“ユモレスク”が原曲です。
若い二人の夢と希望にあふれた青春を謳歌する歌に仕上げられております。

このジャケット記述だけでいいのかもしれませんね。

ところでユーモレスクってどういう意味でしょう。
滑稽味のある軽やかな器楽曲の短い作品、というフランス語のようです。
ユーモアというのと同じ系列の言葉なのでしょう。
固有のタイトルじゃないのでドヴォルザークさん以外の作曲家にも同名の
曲があるようです。「ドヴォルザークのユーモレスク」なんですね。
原曲も愛嬌があって、ほのぼのとした曲ですが、ザ・ピーナッツのもお洒落。

ユーモアとは違うけど、やたらに明るくて、この上なく軽やかに歌ってます。
演奏の仕方は違えども、基本的な目的はザ・ピーナッツの歌も同じです。
とにかく、これを聴いて気分が落ち込むなんてことはありっこないです。
曲の終り方が「シンデレラ」ではバイオリンがチュウですが、この歌の終りは
トロンボーンのブーです。やっぱりユーモア的なところがあるかな。

この曲の演奏、上手いね〜。
バンジョーがとっても魅力的。トロンボーンもめちゃくちゃ良い音でノリノリ。
米国の黒人葬儀じゃ埋葬後にこういう感じの演奏をしながら行進したみたい。
南北戦争だかの軍楽隊の楽器の払い下げがジャズの発祥だそうです。
マーチングバンドなどの編成はデキシーランドジャズに似合ってるしね。
東京ディズニーランドの楽隊です。
https://www.youtube.com/watch?v=pgaa5vXlY1A

あんまりかっこいいので、今の嫁さんと後に付いて行きました。(子供かよ)
で、一緒に写真撮ってもらっちゃった! (真似しないように/業務妨害だ)


二人はしあわせ。

(2015.07.23記)