■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

♪マイ・ハート・クライズ・フォー・ユー  1961.04
  MAY HEART CRIES FOR YOU
  原曲作詞作曲:パーシー・フェイス 訳詞:音羽たかし 編曲:宮川泰
  演奏:渡辺晋とシックス・ジョーズ
  バック・コーラス:ロイアル・ナイツ
  録音:1961.02.18
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★ ★★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

これが元祖かな?
https://www.youtube.com/watch?v=WPeK2hj02Xo

この曲調は個人的にはあまり好きじゃありません。なんか粘っこくて。
 ♪My heart cries for you
  Sighs for you, dies for you
  And my arms long for you
  Please come back to me
このメロディーがネバネバしてて嫌なんです。
悲しいのはわかったから、くどくどと押し付けないでよ、みたいな。
 ♪花咲くバラも枯れ果てて 窓辺に鳥の声も無く
  淋しく夜毎 君思う 君の去りし日より
ここの旋律はとってもいいんですが、またあの鬱陶しいのが来るし。

この曲、作ったのがあのパーシー・フェイスさんなんですねえ。
これが有名。沢山の名演奏のほんの一部。清清しいなあ。
https://www.youtube.com/watch?v=bz4DOlnh64Y

またここでいつもの脱線。
最近、というか大分前からムード音楽はオワコン化しちゃったのか
あまり聴けなくなったような気がします。
ハイレゾで聴いたら良いかも、と思って調べたのですが、CD規格の
音源をアップコンバートしたのばかりで、何じゃこりゃ、と思った。
近年の録音じゃないわけなので元はアナログテープ録音のはずです。
だけどマスターは当然、門外不出であろうから外盤の場合には企業が
自らチャレンジしない限りダイレクトにハイレゾ化は実現できない。

DSDは特に日本人の発明だから外国に音源があったら手も足も出ない。
だからCD規格のリアルPCM音源を日本で無理矢理アップコンバートを
するしかない。効果は無いとは言えなくともニセレゾであるわけなのだ。
お化粧すれば綺麗にはなるが、ザ・ピーナッツのスッピンの音源の美しさ
には到底及ばないであろう。ザ・ピーナッツのハイレゾは幸運の象徴。

ここでまた雑学的な知識を。
バックコーラスのロイヤル・ナイツの結成は昭和34年(1959年)で、
メンバーは、
 くすのせ堅志(上智大学、トップ・テナー)
 舟田均(東京芸大・声楽科、セカンド・テナー)
 舟田勝(東京芸大・声楽科、バリトン)・・・ふたりは兄弟。
 佐々木襄(東京芸大・声楽科、ベース)

ザ・ピーナッツがデビューしたころは、他のコーラスと合唱すると自分の
音がわからなくなってパニックになったとか。
ダークダックスと初めて共演したときは、こんなのと一緒に出来るかって
いう態度ではなくて、本当に親身になってザ・ピーナッツのパート歌唱を
教えてくれたのだそうです。可愛い子が困ってたらそりゃオジサンたちは
面倒みなきゃと思うのでしょうね。一生懸命やってるんだから。

http://peanuts2.sakura.ne.jp/omotya/mookduck.html
ダークダックスとはレコード会社も同じなので、あの「銀色の道」では
ご本人たち自身は一緒に6重奏で歌って録音したかったようなのですが、
諸般の大人の事情で同レーベルで別々に競作ということになったとか。
ザ・ピーナッツの歌にはバックコーラスが入っているのが割と多いです。
あの「恋のバカンス」でも入っていますが、それを再現する録音などは
カバーする場合、ほとんど省略されてます。いい味なんですけどねえ。

この曲というよりも、このアルバムなんですが、たった1日で録音している。
最終曲の「夢で逢いましょう」を除き、残り7曲が全部1961.2.18録音です。
ずっと後に出た「スタンダードだよ、ピーナッツ」では4日間かかってる。
これは凄くハードな録音じゃないかと思うのです。
まだそんなにキャリア豊富というわけではないのに凄く頑張ってるのですね。
しかし、どうもこれはこれが出来た理由がありそうなんです。

ひとつにはデビュー前からスタンダード曲には馴染んでいたようなのです。
またデビューしてからも趣味だし、勉強でレコードも良く聴いていた。


そして演奏が身内的存在であるシックスジョーズであったからだと思います。
実際、プロになって初めてフルバンドである東京キューバンボーイズの演奏で
歌ったときに、あまりのサウンドパワーで魂消てしまったという。
自分達の歌の音程やハーモニーがちゃんと出来てるのか不安になったという。
テープのプレイバックでスタッフから大丈夫だと言われてホッとしたとか。

そこへいくとシックスジョーズでの録音の場合はデビュー前からステージなど
多くの機会に舞台を踏んでいるので慣れていて歌いやすかったのでしょう。
ステージマナーなどは渡辺晋さんが厳しい目を光らせていたというし、音楽面
では宮川泰さんが完璧さを求めて来る。それでもそれは愛のムチであろう。
いわば家族であってファミリー的な温かさの中で歌える心理的安堵感は大きい。
19歳の娘が一日でスタンダードナンバーを7曲もレコーディングしちゃった。
これって凄い快挙じゃないかな。

スタンダード曲なんてのは世界中の歌手が歌ってるわけで、簡単にボロが出る。
比較されるのは当たり前なので、デュオとしての真価が問われてしまう。
若いということは怖い物知らずなのだろうが、渡辺晋さん、宮川泰さんたちは
それだけの実力がもう備わってるんだと確信していたのでしょうね。
第10回紅白歌合戦に出場したハイティーン歌手はザ・ピーナッツだけだもの。

ところでこのLPアルバム売れたのでしょうか?
そんなにヒットしたとは思えないのです。
ご本人たちがレコーディングしたくてスタッフもやろうやろうと盛り上がって、
もう好きなことやってみた、みたいな印象があります。商売抜きでネ。

(2015.07.30記)