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マッダレーナばあさん  1961.05
 ILA MONNA MADDALENA(イタリア映画「歌え!太陽」挿入曲)
   原曲:Misa-Pallavisini-Massara
   作詞:音羽たかし 編曲:宮川 泰
   演奏:シックス・ジョーズ・アンド・オーケストラ

   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★* ★★★★* ★★★★★

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 映画「歌え!太陽」は「ボラーレ」その他でわが国にも人気の高い
ドメニコ・モドゥニョ主演の明るい音楽ドラマです。
 南国の太陽に輝くイタリアのこの美しい風と、明るい歌の饗宴に
心暖まる恋の物語で、「しあわせがいっぱい」「マツダレーナばあさん」
のニ曲共この映画の主題曲として挿入され、又、イタリアで流行の波に
乗っているハイティーン歌手のミーナ(「月影のナポリ」)が特出し、
話題をまいています。…………シングル盤ジャケット解説より…………

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底抜けに明るい歌です。抜群の開放感。植木さんの歌みたいだ。
元歌はこれ。↓
https://www.youtube.com/watch?v=HGVG1RX1S3M

イタリアじゃ前年に公開されてたんですが、日本公開に合わせ来日。
昭和36年4月にザ・ヒット・パレードにも出演。

こちらの記事もご参照下さい。(一番下の方です)
http://peanutsfan.net/ML3605.html

ピーナッツが来日するミーナの新曲を
 来日するミーナは近く公開される「歌え太陽」のプレミア・ショウに
 顔を出すためはるばるお母さんと二人で来日するわけだが、キングと
 この映画を配給する東亜映画が全面的にタイアップし、ピーナッツは
 同映画中で歌われている「マッダレーナお婆さん」と「幸せがいっぱい」
 の二曲をレコーディングした。「マッダレーナ」は「月影のナポリ」を
 思わせるヒット性の曲でピーナッツが新しいカラーを出している。

どうもジャケットが映画のパンフレットみたいなのはこういう理由なのか。

ザ・ピーナッツ盤もミーナのに良く似ております。
ただし全く同じじゃなくて宮川さん流のアレンジでやってます。
おそらくフィーリングだけ頂いたという感じでしょうね。
クラシック音楽じゃないのでオリジナル楽譜等入手出来るはずがなく、
レコードなどを聴いて採譜することから始めるのでしょうが、どうせ
なら自分のカラーでアレンジしちゃおうと思ったのかもしれませんね。

新しい流行歌がすぐに(オリジナルじゃない)カラオケなどで再現さ
れるのは採譜屋さんというお仕事があるかららしいのです。
音楽学校出身で絶対音感がある人が断然有利らしいのですが、この時
代にそういう職業があったとは思えないので宮川さんの一貫した仕事。
ちなみに現代の科学力をもってしても自動採譜は不可能だそうです。
パソコンに取り込んだ楽曲の音程だけ変えるツールはあるらしいけど
それもあくまで支援ツール。結局人間の耳だけが頼りになるのです。

珍しくシックス・ジョーズ・アンド・オーケストラなんていう表記に
なっておりA面もそうですが、演奏の趣は大分異なります。
A面の「しあわせがいっぱい」ではクラリネットとサックス、つまり
木管楽器のハーモニーを活かしてグレンミラーみたいな美しい響きを
奏でていますが、こちらの曲はブラスセクションが大活躍です。
このような応援をインペグ屋(スタジオミュージシャン紹介業)から
呼ぶのはもっと後の時代からじゃないかと思うのでナベプロのバンド
なら日程調整も楽だし直接のコストにならないからね。(月給制)
それに宮川さんの言うことも良く聞いてくれそうだし。

ザ・ピーナッツも吹込み緊張感ゼロでノビノビ楽しく歌ってます。
まだシャボン玉ホリデーに出る前なんですが、コミカルな歌もいける。
A面の「しあわせがいっぱい」のバラードも見事で私は好きでしたが、
この頃、ザ・ピーナッツはマンネリだとか言われていたと思います。
たしかに、この盤は十七歳よさようならに続いているので似た傾向で、
今一つパッとしませんよね。ファンは聴くのですが……。
ザ・ピーナッツさんが後年、3年毎にスランプがきたようなお話を
どこかでされていたと思うのですが、この後にモスラ映画とスクスクが
ドーンと来るので、これでスランプ?脱出。

実際のところレコードの売れ行きはどうだったのでしょうか?
裏付けるデータがどこにもないので、書籍等の資料から推測してみます。

(A面タイトル)      (私的推測ヒット状況)
 可愛い花         ★★★★★★★★★★★
 キサス、キサス      ★★★★★★★★★ 
 情熱の花         ★★★★★★★★★
 乙女の祈り        ★★★★★★★★
 悲しき16才       ★★★★★★★★★
 月影のナポリ       ★★★★★★★★★
 パパはママにイカレてる  ★★★★★★★★
 ルナ・ナポリターナ    ★★★★★★★
 十七歳よさようなら    ★★★★★
 しあわせがいっぱい    ★★★
 インファントの娘     ★
 スク・スク        ★★★★★★★★★
 今池音頭         ☆(地域限定販売?)
 あれは十五の夏祭り    ★
 ペピト          ★★
 コーヒー・ルンバ     ★★
 イエロー・バード     ★★★★★
 いつも心に太陽を     ★
 ふりむかないで      ★★★★★★★★
 君去りし夜        ★
 夕焼けのトランペット   ★★★★
 私と私          ★★
 モスコーの夜は更けて   ★
 イエスサリー       ★
 さいはての慕情      ★
 手編みの靴下       ★★
 レモンのキッス      ★★★★
 若い季節         ★
 祇園小唄         ★
 恋のバカンス       ★★★★★★★★★★
 舞妓はん音頭       ★
 東京たそがれ       ★
 悲しきカンガルー     ★
 キャンディ・ムーン    ★★★(B面ドミニク)
 ジューン・ブライド    ★★★★
 青空の笑顔        ★
 ウナ・セラ・ディ東京   ★★★★★★★★
 ブーベの恋人       ★★
 好きになっちゃっちゃった ☆(B面曲でバックコーラスのみ)
 スーヴェニール東京    ★
 かえしておくれ今すぐに  ★★★★
 あなたの胸に       ★
 かわいい小鳥       ★
 乙女の涙         ★
 愛は永遠に        ★
 シュガー・キャンディー  ★
 ローマの雨        ★★★★★
 東京ブルーレイン     ★
 恋のフーガ        ★★★★★★★★★★

まだまだ続くんだけど……ざっと、こんな感じでしょうか?
売れてない盤もいっぱいありますが、ザ・ピーナッツのレコードは出せば
確実にある一定数は売れるんだそうです。それで十分な収益が確保可能。

そもそもザ・ピーナッツのレコードやCDがどれだけ売れたのかという
数字が公表されたことがないんです。
大雑把にレコード販売枚数積算で1000万枚以上とか、CDを含めると
1750万枚だとか……本当にはっきりしないんです。それでいいけど。
そもそもオムニバスアルバムにザ・ピーナッツの歌って結構入ってるし、
アポロンのカセットのアルバムも売れてるので枚数ではわからないかも。
引退してからもレコード出てるし、CDなんかに至っては現役時代より
アルバム種類が膨大な数になってる。おまけにネット配信でも売れてる。

最近じゃハイレゾ音源でも売れてる。すでにアルバム6種類に至ってる。
ハイレゾで初めてこの曲を聴いたという人がいても不思議じゃない。
まあ、はっきり言って、この歌は売れてなかったと思う。
ミーナとか呼んだって話題にもならなかったんじゃないかしら。
でも、CDで聴いてみると無価値/無意味な感じはしない。
ハイレゾの高解像度化にも耐えられる魅力の奥行きの深さが感じられる。
ザ・ピーナッツの録音は繊細なんだよね。ニュアンスにこそ魅力がある。
なにが繊細かと言うと空気感。録音会場の空気が振動してる。
昭和の空気の缶詰めを開けたみたいな。心地よい大昔の音だなあ。

(2015.08.09記)