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♪ポケット・トランジスター     1962.01
   
POCKET TRANGISTOR
   原曲:
Keller-Kolber 作詞:音羽たかし
   編曲:宮川泰 演奏:シックス・ジョーズ
   録音:1961.11.2 イイノホール
  
 

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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このレコードを買って初めて聴いた時の感想は、何じゃこれは、でした。
演奏も歌詞も歌やセリフもとんでもなく跳んでいるからです。
それまでにラジオなどで曲そのものは知っていたので、このレコードの異様な
感じが際立っていたのです。こんなのありぃ、です。
まず、歌詞を見てください。

 あたしは オマセでチビな ポケット・トランジスタ―
 いつも鼻声して 若い男の胸をくすぐるの
 あたしは ポケット・トランジスタ―・ガール
 “ウフン 私って そうなの”

 鼻歌 歌えばボーイフレンドが
 ニッコリ笑って ウインクする
 あたしは オマセでチビな ポケット・トランジスタ―
 いつも鼻声して 若い男の胸をくすぐるの
 あたしは ポケット・トランジスタ―・ガール
 “でも 私のせいじゃないのよ”

 散歩の時には また大変
 あたしの後ろに また一人
 あたしは オマセでチビな ポケット・トランジスタ―
 いつも鼻声して 若い男の胸をくすぐるの
 あたしは ポケット・トランジスタ―・ガール

 あたしは あなたのポケット・トランジスタ―・ガール
 月夜のデートも あなただけ
 あたしは オマセでチビな ポケット・トランジスタ―
 いつも鼻声して 若い男の胸をくすぐるの
 あたしは ポケット・トランジスタ―・ガール

 Oh,he just couldn't resister
 With her pocket transistor
 I didnユt play the hit parade every night,
 Oh,he just wouldn
't resister
 With her pocket transistor
 When he need the moon so big and bright.

“ウフン 私って そうなの”とか“でも 私のせいじゃないのよ”なんて
こういうセリフ、原曲には入ってないでしょ。(笑)
また、ピーナッツの言い方が面白いんだなあ。大傑作だよ、これ。
そして重要なことは、ザ・ピーナッツ盤は自身のことをポケット・トランジス
タ―・ガールだとして歌ってること。
当時はトランジスター・グラマーという言葉も流行っていてオマセでチビなと
いう弱点ポイントが逆に自己の魅力になっていること。
そうなんだよね。女の子は小さいことがチャームポイントにもなるんです。

原曲はアルマ・コーガンという英国の人が歌っています。
そのバージョンもカバーなんだそうですが詳しくは知りません。
英語は何度も書きますが全く苦手なんですが(英語だけじゃないだろ/笑)、
多分こんなことは歌ってないと思うのです。
これじゃ漣健児さんが得意の超訳のようなものです。漣健児さんだけが本来の
歌詞とは違う意訳を超えた作文をしていたのじゃないのだと思いますね。

この曲のカバーで有名なのは森山加代子さんのバージョンでしたが、
「私の持ってる小さなポケットトランジスタ 毎晩ヒット・パレード聞くの」
なんて歌詞だったと思うのですが、ラジオはラジオだったのです。
訳詞は漣健児さん。正攻法です。対抗馬的な飯田久彦さんの歌では、
「あの子 ちっちゃな可愛いpocket transistor まわるい大きなお目め」
こちらでは彼女のことをpocket transistorだと歌ってるわけです。

流行ったのはカヨちゃんとチャコだったと思いますが、実は伊東ゆかりが
15歳の時にシングルA面でリリースしています。
もっと早くからレコード歌手だったのですが、お休みしてて再復活という
感じだったようです。注目なのは、この時の歌詞がザ・ピーナッツの歌と
同じだったと思うのです。聴いた覚えがあるんです。
思うのです、じゃ怪しい記憶なのですが、入手してまで確認するのも大変。
つまりザ・ピーナッツのために書き下ろされたのではなくて伊東ゆかりの歌詞の
お下がりだと思います。(思います、この多発がこの随想群の特徴/笑)

思いますではない事実として、カヨちゃんとチャコ、ゆかりのレコード発売は
前年の7月。つまり、ザ・ピーナッツのこの歌は競合盤ではありません。
半年遅れですからヒット争いのレースには加わっておりません。
ザ・ピーナッツ・ファンのために懐かしいのを録音してみました、みたいな、
アルバムだけへの収録曲です。
それに怪しい記憶ではザ・ヒット・パレードでは英語で歌ってたような…

そういうことで思い切ったアレンジになっているんだと思います。
もう飽きるほど世の中に流れた曲なので、度肝を抜いてやろうと宮川さんが
考えたのは、この方の資質として頷けるのではないかしら。
なにか電波信号みたいなカタカタカタ…という音。なんだこれは???
ラジオの祖先はこれだ、みたいな。凄いなこれ。ブッ跳んだアレンジ!
原曲はもっと穏やかですよー。しかし、これ遊んでるよなあ。
とにかく楽しさは比類がありません。こういうの好き。

(2015.08.11記)