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♪宵待草 1963.01
作詞:竹久夢二 作曲:多 忠亮 編曲:宮川泰
演奏:レオン・サンフォニエット
録音:1962.11.09 厚生年金会館
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
★ | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
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私も古い人間ですが、この歌は途轍もなく昔の作品です。
詩の原型が明治時代に作られ、詩改作と作曲が大正時代。
私はおろか母さえもまだこの世に生まれていない大昔。
解説などおこがましいのでWikipediaで検索して下さい。
夏の夕方に河原や海岸に開花する4枚の花弁の一日花。
一夜だけ花が咲くとはまた儚い、歌のイメージにピッタリ。
草花に興味がないせいか見た覚えがないけれど雌待宵草と
いう繁殖力旺盛な他の草の圧迫で現在では稀少だそうです。
待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな
いやーたったこれだけの詩なのに、ぐっと哀切な想いが濃いです。
俳句とか短歌のようで、多くをダラダラ書かなくても強烈ですね〜。
ただただ感心するしかない素晴らしい詩です。
遣る瀬ない釣り鐘草の夕の歌が あれあれ風に吹かれて来る
待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草の心もとなき
想ふまいとは思へども 我としもなきため涙
今宵は月も出ぬさうな
原詩はこういう風だったそうですがダイジェストにした後の歌詞が
最高です。長いと印象が薄まって、だからどうした、となりそう。
ザ・ピーナッツの他の歌も歌詞が短いのが殆どです。
メロディーもシンプルですぐ覚えられます。上手く歌えるかは別で。
LPもジャケット裏面に歌詞が全部印刷出来。歌詞カード封入不要。
古い曲なので、藤原義江、関屋敏子、李香蘭、松島詩子、藤山一郎、
高峰三枝子、東海林太郎さんなど多くの歌手が歌っており、私も
誰が歌ったのか知らなくても、歌そのものは良く知ってました。
どこで覚えたのかわからないのですが、日本のスタンダード曲ですね。
この歌はテレビで高尚な歌曲かオペラのように朗々と歌い上げると
いうシーンがあったりしますが、それってちょっと違和感あるんです。
声楽として聴くのもありとは思うけど、詩と曲の味わいという面では
悲恋の哀しみの沈痛が主題であり、なんにも慰めになるものもない、
月さえも出ない物悲しさの極み、もう本当にやんなっちゃうよね〜。
これは大きな声張り上げちゃ駄目でしょう。しみじみ歌うものです。
ザ・ピーナッツは暗く静かに歌っています。これでいいんでしょう。
でも万人にお薦め出来る標準的歌唱という感じでもありませんね。
「宵待草をザ・ピーナッツで」聴きたい方の為のレコードでしょうか。
「宵待草の味わい」を聴きたい方には倍賞千恵子さんあたりがお薦め。
こういうスタンダードナンバーを新たにレコーディングするからには
新しい魅力を付加するのも必要でアレンジャーの腕の見せ所でしょう。
この曲に相応しい暗いイメージの弦楽器旋律にギーコギーコという音の
ギロを重ね、チーンチーンと響くグロッケンシュピール(鉄琴)での
アクセントに、ポコポコというボンゴを加え独特のサウンドを奏でて
大変ユニークな前奏で、こんな宵待草はまず他では聴けません。
宮川泰さんはジャズ・ピアニストではありますが、邦楽関連が何故か
お得意のようで和魂洋才という感じです。
いつも面白く楽しいアレンジをするわけではなくて、雰囲気を壊すと
いう面はないのです。良く考えて味付けの使い分けをされていますね。
さて、ザ・ピーナッツの歌声ですが、可愛いカワイイとはいうものの
キャピキャピしたアニメの声優さんのような可愛らしい声ではなくて、
むしろ可愛くない声音です。可愛く聴こえるとしたら歌い方の工夫かな。
特に低い音域を歌う時はダークで陰鬱な響きになりますよね。
この歌では、そこの持ち味が活かされて暗くやるせないムードが横溢。
これと裏面の「北上夜曲」はかなり落ち込む悲哀に満ちた歌ですね〜。
悲しくなるから嫌だ嫌いだという気持ちにはなりません。
このような想いの経験が自身にないからかもしれません。
(2019.02.02投稿)