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♪舞妓はん音頭   1963.05
  作詩:岩谷時子 作曲:宮川泰 編曲:宮川泰
  演奏:レオン・サンフォニエット(琴、三味線入り)
  録音:1963.04.03
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★* ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

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いやはや、これはね〜大変な曲ですよ!
超絶名曲です。私がそうほざいても何の権威もありませんが。
とにかく凄い、すごすぎるくらい凄い。

何が凄いかって、そりゃもう凄まじい楽器の数だよ〜。
総譜(スコア)の総段数は一体何段あることやら。
レコード(CD)聴いててもどれだけの楽団員でやってるのやら
見当もつかない。どれだけの楽器が登場するか聴き分けも大変。
琴、三味線はすぐわかりますよね。
ストリングスはヴァイオリン、ビオラ、チェロでまあ決まり。
トランペット、トロンボーンはほぼ入っていそうなんですが、
わかりにくいのがホルンみたいな音です。
あれはトロンボーンじゃなさそうなんだよね。
あと木管、ピッコロ聴こえるしフルーツぽいのも聴こえる。
ベース、ドラムス、タンバリン居るよなあ。あとわからん。

しょっぱなからカッコいいよね。
琴をちょっとひっかけてからジャーンジャジャンジャンジャーン。
これ好き。琴が一拍先行するのって素晴らしいアイディアだ。
琴、三味線の使い方は絶妙だと思います。
純邦楽風だったり対位法みたいに離れたり、こういう和洋合奏の
編曲って音楽家なら誰でも出来るってもんじゃないと思うんだ。
宮川さんのお母様がお琴をやってたというのも無縁じゃないような。
良くわからないけど、琴、三味線の旋律は日本調の原則的な
定石をもちゃんと踏まえているのじゃないかとも感じます。

琴、三味線が添え物的とかバックの効果音のように使われるのが
多いのですが、舞妓はん音頭もうちら祇園の舞妓はんも中核の
旋律を担っています。ありそうでない稀有のシングル盤ではないか。
表裏の曲にそのように組み込まれているので私はこれが普通なのだ
と思っていましたが、宮川泰/萩原哲晶は極めて例外的で特別な
天才だったからではなかったかと今頃考えるようになりました。
現在でも日本調歌謡曲は作られているのだけれど、これ程の完成度を
持つ編曲はもう出来る人が居ないんじゃなかろうか?

何処で録音したのか表記されていないのでわからないのだけれど、
スタジオ録音ではないことだけは確かでホールトーンの残響成分が
奥行きを与えて広大な音場となってます。
歌謡曲の録音じゃなくクラシックのオーケストラの味わいがある。
これは借りたホールの管理人も何事じゃこれはと驚いたのでは?
もちろん同時録音なのでザ・ピーナッツも居るのだけど日本調の
楽器も並んでいるのだから一体どんな楽曲を録音するのかしら、と
首傾げたのではないかしら、うちら祇園の舞妓はん、と同日なので
そちらは萩原哲晶さんが指揮をされて、舞妓はん音頭は宮川さん。
お二人は大変仲良しだったと思うので、楽しいお仕事だったかも。

この収録には随分とお金がかかってると思いますよ。
ただでさえお呼びするととても割高な弦楽器奏者なのに低音楽器も
不足ない厚みで鳴っているので、豪勢だと感じます。
渡辺プロには自前の弦楽器楽団は居ませんから外注コストがかかる
ザ・ピーナッツなんだから金に糸目はつけるなという社長命令でも
出てたのでしょうか。
渡辺音楽出版(watanabe music)のロゴマークが付いたレコードは
ザ・ピーナッツでは初めてでした。
それにシングル盤レコードで総天然色(死語か)のカラージャケット
はクリスマス盤以来で、クリスマス盤よりも更に鮮やかで素晴らしい。
レコード店の店頭で初めて見た時はなんて綺麗なんだと魂消ました。
渡辺プロはこの映画・レコードにかなり力を入れたと思います。

それと映画の配給は東宝ですが、今はなき宝塚映画作品なのですよ。
宝塚に大きな撮影所があったんです。採算に問題あったらしいけど。
ジャケットにも宝塚映画主題歌と表記されています。
http://peanutsfan.net/MAIKO63.html
http://peanutsfan.net/LobbyCard2.html
http://peanutsfan.net/POPS6305.html
http://peanutsfan.net/H380501.html
http://peanutsfan.net/KE3807.html

全国ネットではないけれど、TOKYO-MXテレビの番組レギュラーの
中尾ミエさんが、うちら祇園の舞妓はんの思い出を語ってました。
https://s.mxtv.jp/goji/
別にこの映画について語ったわけではないが、ピーナッツさんと
三人娘の五人で舞妓さんの衣装を着て映画を撮ったのが楽しくて、と
私はすぐ、あ、あれだと気づきましたが、スタジオ内の人達は
ヘーってなもんで、全くご存知なかった。まあ、そんなものだ。
中尾ミエさんも長い芸能生活で色んな衣装着ただろうし、色んな
お仕事をそれは覚え切れないほど経験しただろうと思うのですが、
それでも、この記憶が楽しい思い出として蘇るのは、お若い時の
記憶は残りやすいし、舞妓を演じたのが楽しかったんでしょうね。

ザ・ピーナッツも女の子だから宝塚歌劇団なんか憧れてたでしょうが
背丈がちっちゃいから諦めてたでしょう。
ところが、舞妓さんとなると逆で長身だとおかしい。誰でも舞妓の
姿が似合うわけでもない。少女っぽさが欠かせない要素なのである。
前々年に「続々・番頭さんと丁稚どん」(松竹)で舞妓さんに扮した
ザ・ピーナッツを見て、おそらく渡辺美佐さんは、「まあ、可愛い!」
と余りに似合うので、これ、これだわ、と決めたんじゃなかろうか。
ザ・ピーナッツは「私と私」の映画でもバス・ガイドや売店の売り子が
似合う、その辺によく居るお嬢さんでちっとも美人じゃない。
だからこそ、美佐さんは何とか綺麗に可愛らしく見せてあげたい、と
親心のように腐心していたんじゃないかなあ。
渡辺プロの事務所がある三信ビル横の線路の反対側に当時の最高水準の
美容整形外科・十仁病院があったんだから整形しちゃえばいいんだけど
双生児だからね〜難しいだろうね。せいぜい瞼の脂取る程度かな〜。

さて、歌詞は宝塚つながりで岩谷時子さん。(宝塚歌劇団出版部所属)
宝塚から京都(河原町)までは阪急電鉄の宝塚線〜十三乗換〜京都線で
急行ならそんなに時間はかからない。阪急電車は綺麗で速いからなあ。
「都おどりはヨーイヤナー」と書かれてますが、ネットの情報などでは
都をどりはヨーイヤサーみたいですねえ。実際の舞台は映画で観ると
最後のとこは子供っぽい嬌声に跳ね上がるのでもうどうでもいい感じ。
「指切りげんまん紅がら格子」そう言えばジャケット写真のピーナッツ
指切りげんまんやってますね。紅殻格子の隙間から指切りするのかな。
「祇園まつりはコンチキチン」のコンチキチンは祇園囃子の鉦・太鼓の
特徴を表す言葉で、山鉾(ほこ)、宵山、駒形提灯などの言葉もネット
で検索すればビジュアルも含めてどんなものかわかりました。
ととんとんとん、とか、チョゴンゴンゴンって感覚がピンときません。
徹頭徹尾京都一色の歌詞ですが意味合いは伝わってもフィーリングは
ご当地の方でないと伝わってこない感じ。これは流行らないよ。(笑)

歌の聴かせ処は何といっても、
「わたしゃうぐいす、梅のねぐらで」「夢に結んだ番いのちょうちょ」
「忍ぶ恋路をしおらしや、しっぽり濡れて」
「想い焦がれて、寝る夜の枕に」
ここんとこでしょう。これ全部ヒデちゃん。エミちゃん。日出代さん。
あはは、みんな同じだけど、とにかくお姉ちゃんばっかりであります。
これはもう日本調の歌心みたいなのはお姉さんが上手いのでしょうね。
遊び半分なら交互に交代すれば面白いのでしょうが、本気モードでは
絶対にお姉さん一辺倒が出来が良い、プロフェッショナルな選択です。
遺伝子的素質は同一であっても、そこは人間の神秘なのでしょう。

曲の終焉の和音がズワワ〜ンと図太くホールに満ちるように響きます。
ここの奥行き感。いいよね。やったぞ、という終わり方。カッコいい。
レコード芸術って雑誌がありますが、ザ・ピーナッツの多くの録音中、
オーディオ的にも録音芸術と言えるくらい素晴らしい出来栄えでしょう。
ハイレゾでもリリースされているので濃厚な空気感も楽しめます。
(2019.03.12投稿)