■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
♪ヘッド・ライト 1963.06
Des Gens Sans Importance
作曲：Joseph Kosma 作詞：岩谷時子
編曲：宮川泰 演奏：オールスターズ・レオン
録音：1962.12.17
| 一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
| ★ | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
Des Gens Sans Importanceというのが原題で直訳すると
しょうもない人々という意味らしく、ストーリーもまた
どうしようもなく切ない物語で無料でも観たくない映画だ。
一応、ネット動画を紹介しておきます。
https://m.youtube.com/watch?v=ef55eXSP_kc
https://m.youtube.com/watch?v=KjUQD6XMfV0
名画であり名曲なのだそうですが、薄気味悪さ横溢で
これをリメイクした邦画もあるそうで、気がしれない。
ヘッドライトという題名は日本で付けたのでしょうが、
トラックの運転手が主役なのでこれは良いタイトルだ。
でも、これを紹介するのは私もそうだが鈴木啓之さんも
その気にもならなかったようでCDアルバムの曲目解説
で完全スルーしちゃってる。
書き洩らしというよりも意図的に触れたくもないなと
いう感じではなかろうか。私はそうに違いないと思う。
シャンソンの名曲「枯葉」も作ったジョセフ・コスマと
いう作曲家のこの音楽はオンド・マロトノという楽器が
フィーチャーされていますが、この曲以外でも現代音楽
などで使われてる変り種の電気楽器です。
ちょっと似てる効果として刑事コロンボの音楽があるが
あれは全然違う楽器でそもそも刑事コロンボのテーマと
いうものではなく刑事コロンボも含むミステリー番組の
シリーズテーマ音楽なのだそうです。
元のサウンドトラックはお化けが出てきそうな陰鬱な
音楽であり、ザ・ピーナッツが歌う歌詞も堕胎手術で
命を失った二十歳のクロチルドさんが化けて出てきて
想いを回顧してモノローグしているイメージがあります。
いつも夜明けに私を呼んだ
やさしい声が聞こえる
ともしび掲げ手をさしのべて
私に恋を教えたあの声
幸せは私のてのひらにいたのに
呼んでる声は夜明けの帰らぬ夢
陰惨な映画の救いのないテーマなのに天上に昇華した
ような詩にしまうのは流石に岩谷時子さんですね。
そして、この曲をカバーして歌うことへのチャレンジは
凄く果敢な試みではないかと驚きます。
私が知らないだけで他に歌った前例があったのでしょうか？
後年のアイドル達にはとても出来ない挑戦でしょうね。
アルバムタイトルはポピュラースタンダードなのですが、
これはポピュラー曲の範疇を超えているような気がします。
映画が公開された時点では私は９歳なので観てるわけないし、
ザ・ピーナッツのこのアルバムを買ったのは高校一年生で、
レコードを聴いても、好きも嫌いもなくなんだかわからない
消化不良の歌だったと思います。
アルバム全体の情報量自体圧倒的でインターネットもない時代、
曲目解説も無しに愛好するには敷居の高すぎる歌でしたね。
今でも相変わらず好きなナンバーではありませんが、この曲を
カバーして歌っている事実にはとっても感心しています。
もうこの頃からザ・ピーナッツや宮川さんは安全運転をしない
冒険するチャレンジチームであったんだなと称えたいと思う。
十数年前、ザ・ピーナッツ・オン・ステージのCDが発売された
際にその内容に驚きの声がネットで拡まったことがあった。
プログレの「エピタフ」を始め、こんな曲をザ・ピーナッツが
カバーしていたという史実がTwitterなどのSNSで駆け巡った。
三年前くらい前のプログレッシヴロックを即ステージで歌ってた。
その驚愕でそのCDはよく売れたみたいだが、これって1956年の
流行り歌ではない映画のBGMを1963年にボーカル曲に変貌させ、
アルバムに収録したチャレンジは、同質の意欲作と言って良いの
ではないだろうか。当時はネットもSNSもなかったから話題に
なることはなかったわけですが。
当時の社会的な環境はよく知りませが、この陰惨な映画も社会の
最底辺の人々のドロドロした普通は映画テーマにしたりはしない
暗い部分をモノクロの映像美でヘッドライトの明るさと対比させる
ような挑戦をしたのかもしれない。
まあ、いずれも独りよがりになる恐れも多分にあるけれど、ただ
流行れば良い、売れればよいという風潮とは違う、職人気質の
ような気負いが共通して感じられます。
ザ・ピーナッツの歌としてはマイナーな曲にも色々な味わいが
あるわけで油断が出来ないのであります。
（2019.03.19投稿）