ザ・ピーナッツ sings 宮川泰 (2006.9.6発売)
宮川泰作曲作品に駄作はない。ザ・ピーナッツ向けでは名曲率=100%である。
大袈裟に言っているのではない。私は本気で、正気でそう思っています。
「ザ・ピーナッツ sings 宮川泰」収録曲の個人的短評です。
CD1
01.シャボン玉ホリデー
言わずと知れた「シャボン玉ホリデー」のテーマ。前田武彦の作詞。
02.スク・スク・ドール
スクスクのリズムを広める作戦曲。ピーナッツへの青島幸男の作詞はこれだけ。
レコード盤表記は中村八大単独。著作権上は二人の合作という不思議な曲。
03.あれは十五の夏祭り(スク・スク音頭)
岩谷時子と組んだニッポン放送今月の歌で視聴者からリクエストの多かった曲。
04.山小屋の太郎さん
岩谷時子と組んだニッポン放送今月の歌。2曲目のレコード化。
05.ふりむかないで
岩谷時子と組んだニッポン放送今月の歌。3曲目のレコード化。
岩谷時子さんの詩が初ヒットした曲。国産第1号ポピュラー曲と称された。
ザ・ヒット・パレードでザ・ピーナッツ成人記念曲としてテレビ初登場した。
06.二人の高原
岩谷時子と組んだニッポン放送今月の歌。5曲目のレコード化。
のちに映画「私と私」挿入歌となったが、曲調がその度に進化した曲。
07.手編みの靴下
岩谷時子と組んだニッポン放送今月の歌。4曲目のレコード化。
のちに詩を変え園まり「逢いたくて逢いたくて」(編曲:森岡賢一郎)となる。
08.わたしの心はうわのそら
民放の単発テレビドラマの挿入歌だったような気がするが、記憶違いかも。
作詞は竹内伸光と音羽たかしの合作。
09.加茂の流れに捨て扇
映画主題歌の予定が変更されたようだ。LP「祇園小唄」に収録の初CD化。
10.恋のバカンス
解説無用。不滅の大ヒット。
11.こっちを向いて
シャボン玉ホリデーのチーフ・ディレクター秋元近史さんの作詞です。
12.舞妓はん音頭
宝塚映画(東宝配給)『若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん』主題歌。
宮川先生のアレンジの最高傑作と私は評価しております。
13.二人の幻想
同上映画のミュージカル・ファンタジー挿入歌。隠れた名曲。素晴らしいです。
録音マスターテープが見つからず、サウンドトラックから収録。音質は最悪。
14.東京たそがれ
後年の「ウナ・セラ・ディ東京」の原曲。ユニゾンでの歌唱が聴きどころ。
15.好きな好きな人
恐らく渡邊晋社長の判断で発売見送りとなったものと思われる。幻だった曲。
CDアルバム:ザ・ピーナッツ・ドリームボックスに初めて収録された。
16.キャンディー・ムーン
安井かずみとコンビを組み始めての初回作。ファンタジックの世界だ。
17.六月の花嫁
これも恐らく渡邊晋社長の判断で発売見送りとなったものと思われる。
後年の「ジューン・ブライド」と制作意図は同一だが、曲調は異なる。
メンデルスゾーンの結婚行進曲のメロディーも引用された幸せを感じる曲。
18.ジューン・ブライド
岩谷時子さんの素敵な詩と素晴らしいメロディー、そして一体感のある編曲。
こんな名曲が流行らなかったのは如何に大衆が愚か者揃いであったかを証明。
音感に優れた若者によってあらためて現代に蘇ることを密かに期待している。
19.好きになっちゃっちゃった
藤田まことのバックコーラスという役回りだがコントなどで鍛えた掛け合いの
面白さが絶品。これもザ・ピーナッツだから出来たクオリティの高さが光る。
20.ウナ・セラ・ディ東京
格調高い東海林修編曲で新たな趣となった。一方、地味すぎるという声もある。
大衆はマヒナスターズ版を好み、販売数ではこちらがザ・ピーナッツを圧倒。
現在では、ザ・ピーナッツの曲としてのイメージが定着。大衆はいつも阿呆。
CD2.
01.青空の笑顔
演歌では絶対に聴けない生きる喜びと楽しさのようなものを感じる大らかな曲。
02.マイ・ラブ
初めて聴いた時に背筋がぞっとした。身体が慄えた。宮川泰は神かと思った。
作詞・作曲・編曲ともに”お告げ”にしたがったとしか思えない神秘作。
03.幸せを呼ぼう
東宝映画のモスラシリーズ第3作『三大怪獣地球最大の決戦』挿入歌である。
小美人は「モスラ」をもって嚆矢とする。これはマニア向け。音質も悪い。
04.あなたの胸に
園まり風味のザ・ピーナッツ。大変な名唱だが妙に生々しい女性を感じさせ、
若者は悶々とし高年齢層は血圧があがります。実際に園まりもカバーしてます。
05.明日になれば
安井かずみの大傑作。メロディーも素晴らしい。何故ヒットしないかわからん。
06.あの空の向うには
岩谷時子さんと宮川さんにはなにかこの抒情にかけるものがあったようです。
リリースが見送られましたが、殆ど同じ情景と感情を活かして「愛は永遠に」
となって復活した。
07. 愛のかけはし
未発表曲になった曲だが、日中国交正常化などの何らかの世情を反映させた
メッセージソングなのではと思われるが、成立ちは不明である。
08. 愛は永遠に
「あの空の向うには」の世界に再チャレンジした曲。清潔感あふれる愛を歌い、
浄化された魂を歌いあげた意欲作だが、あまりに俗世間と断絶した曲だった。
09. 銀色の道
NHKテレビ「夢をあなたに」でダークダックスが歌った。塚田茂さん作詞。
レコードはザ・ピーナッツが先行発売だが、ご親戚のような関係で流行った。
10. しあわせの花を摘もう
これもNHKテレビ「夢をあなたに」で生まれた曲。躍動感と哀愁が結実。
健康的で清々しい世界観、人間はこのように凛々しく生きたいものである。
11. 愛のフィナーレ
多くの歌手の競作となったが、ザ・ピーナッツのひたむきな歌唱が他を圧倒。
この歌は技巧で歌う歌ではない。魂で歌うのだ。その心根の真剣さで勝った。
12. 愛の果てに<アンナ・カレーニナ>
デビュー10周年記念LPで企画された「世界名作シリーズ」中の一曲。
なかにし礼の作詞。芸術の香り漂う孤高の世界への挑戦。重たく感じるかも。
13. 北風に消えた恋
宮川泰が好きで、岩谷時子が好きで、ザ・ピーナッツが好きという3拍子が
揃っている人向け。まずヒットする要素が感じられない未発表曲。でも好き。
14.たった一度の夢
宮川さんのメロディー&サウンドの最終進化形とも思える集大成曲。
チェンバロの通奏低音に乗せて繰り広げられる壮大な音のドラマが凄まじい。
あまりの名曲ゆえ、他人に薦める気が失せる。私だけで独り占めしたい気持。
15.恋のオフェリア(LPバージョン)
私的には、ザ・ピーナッツの代表曲です。これぞ宮川、これぞピーナッツ。
デビュー10周年記念LPで企画された「世界名作シリーズ」版を収録。
こんな素晴らしい世界の発展を中断させてしまうなんて。ここからナベプロ
がダメになったとしか思えない。渡邊晋さんの才能も限界が来たのだろう。
16.昨日の恋
世界の損失/世紀の愚行=ナベプロ宮川作品疎外?期間中だったが、運良く
「宮川泰リサイタル」の際書き下ろした新曲のライヴ音源が残っていた。
これの初CD化。練習期間がなかったせいのか、やや未消化な感じがする。
17.ロンリー香港
流行るような曲を書けば使うとでも言われたのか、宮川さんが必至になって
人懐っこいメロディーを作ったという感じ。幾分世俗的だが、腐っても鯛。
18.よこがお
宮川さんにはもうザ・ピーナッツの作曲はさせない方針だったのだろうが、
最後くらいはやはり花を持たせようというところか?
そのおかげで、こんな素晴らしい曲が残った。よかった。よかった。
19.浮気なあいつ
同上。こういう凄い作曲ができる人を何故長期間使わなかったのかなあ。
空白の6年間は世界七不思議に加えても良いくらいだ。人類的損失だった。
もう時間は戻らない。無念である。爽やかな引退ソング。