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♪明日になれば
   作詞:安井かずみ 作曲/編曲:宮川泰
   演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1965.11.8

    初: 

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★* ★★★★★ ★★★★ ★★★★*

 テイク2: 
一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★* ★★★* ★★★★* ★★★★★

 テイク3: 
一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★* ★★★* ★★★★* ★★★★★

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この歌を聴くと反射的に妹のことを思い出してしまいます。(勿論生きてるけど:笑)
「お兄ちゃん、ザ・ピーナッツの歌の中じゃ、これが一番いい歌だね。私、大好き!」
と言っていたからです。私は男なのでピンときませんが乙女心に訴えるらしいのです。
妹は今の旦那と随分長期間付き合っていて、一体何時になったら結婚するのかな、と
周りをやきもきさせていたんですが、そんな当時の心境にフィットしたのでしょう。
私的には、いい歌だし、歌詞も素敵だし、切ない気持ちがいい感じではあるんですが、
一方では、これは羨ましい状況にある幸せな人の歌なんだよな、と癪に触ったんです。

だって ♪明日になれば あの人に会える のならいいじゃないか...くそったれが、
のろけてるんじゃないの? 勝手にしやがれってなもんだ。ああ..あほらし..(泣)。
楽しそうにアベックでいちゃいちゃしてるのを見ると後ろから石ぶつけてみたくなる。
ホースで水かけたくなる、式神遣わして呪い殺してやりたくなる(物騒だな:笑)。
彼女いない歴ン十年の怨念は凄まじく、幸せな恋の歌は苛立ちの歌でもあったのです。
この世の中で自分だけが幸せから見放されてしまっている。そんな錯覚がありました。
今にして思うと、あんまり思いつめてから異性に思いを打ち明けると、それは返って
怖がらせてしまうので良くなかったなあ、と思います。当たり前だよね。
今の人はもっと快活に出来るでしょうから、何の教訓にもならんでしょうけど。(笑)

この「明日になれば」の最初のバージョンはこれぞ宮川節とも言える感情発作的編曲。
いやはや、こんなに好き勝手に思いきりよく、よくもまあやったものです。
宮川先生以外ではこんなアレンジは思いもよりません。体裁を重んじると思います。
こう言っては身も蓋もないのですが、カッコ悪い位に思ったままやってる感じです。
だからこそ、ストレートにこちらに伝わってくるものがあります。凄みがあります。
正に最近の流行歌とは対極に位置する。見てくれは良くても中身が何にもないような
サウンドしか取り柄のない歌ではない、本物がここにあるんだといった存在感がある。

安井かずみさんの詩は他の歌でもそうなんですが、普通の人は心の中でそう思っても
口に出来ないもどかしさがあるのに、そこに切り込んでいる感性の素晴らしさがある。
とにかく、この「明日になれば」は、大変な名曲ではないのかと私は思うのです。
いずれ忘れ去られてしまう、というのでは本当にもったいない、残念だと思うのです。
宮川先生もこんないい曲なのに、何故、大ヒットしないのかな、と思ったのでは?

この作品のベースになる感情の表現には別のアレンジが相応しいのかなと思ったのか、
LP:ザ・ピーナッツのヒット・パレード vol.6 アラウンジ・ヨーロッパ
の最終曲に新アレンジで「明日になれば」を追加しています。
「アラウンジ・ヨーロッパ」なのに何でまた、と不思議に思う唐突さで入っています。
どうしても入れたかった..に違いない、と感じます。みなさんもそう思いませんか?
これは、ひっそりとひめやかに切々としみじみと(形容詞が長い:笑)歌ってます。
この歌は本来こうあるべきだったのかな、という感じがしました。
テイク2_1966.05のCDは:ポップスだよ ピーナッツ!〜Pops Peanuts〜です。
うん、これが極め付きか...と思っていたら....

またまた出ました新アレンジが、《デビュー10周年記念盤》のLPに再々登場。
ピーナッツ・ゴールデン・デラックス《ベスト・オブ・ピーナッツ》がそれです。
ここでは再びゴージャスなフルオーケストラでダイナミックさが復活しました。
どうしてもこんな風にやりたくなっちゃうのが宮川先生なのかしら(殆ど病気)。
世間一般にはどうであってもスタッフたちプロの評価では素晴らしい曲であると
信じられているからこそ、ベスト・オブ・ピーナッツの中の1曲となっている。
そしてもっとグレートにしようと盛り沢山の楽器を付加させ再録音している。
作り手側の思い入れはかなりのものではないのか、と思います。
金勘定ばかり、話題作りばかりの昨今では考えられない良心的な企画といえます。
こういう点でもザ・ピーナッツ・ファンは幸せ者だと感じてなりません。

このテイク3_1968.12のCDは未発売のようです。(見つけた方は教えて下さい)
私はLPからUSB経由でAD逆変換してCD-Rに入れて聴いています。
アナログ全盛期に独身貴族が揃えたレコード再生機材なのでクオリティは充分で、
普通のCD商品に遜色はないと思いますが、やはりマスターテープから作るのとは
わけが違うのでちゃんとした商品を買いたいところです。

遂に全てのテイクのCDが出揃いました。こりゃ夢かマコトか。
(2009.05追記)