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♪北風に消えた恋 1968.08録音
作詞:岩谷時子 作曲/編曲:宮川 泰
一般知名度 | 私的愛好度 | 音楽的評価 | 音響的美感 |
* | ★★★ | ★★★* | ★★★* |
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えっ、ザ・ピーナッツの持ち歌にこんなタイトルの曲があったっけ?
そう思うのが当然なんです。蔵出しオリジナル曲です。
「キングレコード創立60周年特別企画」として発売された10枚組のCD-BOXに
「未発表曲」として収録されて、初めて紹介された曲です。
その後の「ザ・ピーナッツ全集」6枚組にも入っています。
どちらのBOXもまだ購入可能な筈です。いずれは無くなるでしょうから、お早めに!
宮川先生はザ・ピーナッツのオリジナル曲を32曲も作曲しました。
そのうちの21曲は、岩谷時子さんの作詞です。(数え間違えてたらゴメンなさい)
すなわち、ザ・ピーナッツのオリジナル曲の代表的なコンビなのは周知の通りです。
もっとも、これが全部ヒットしたわけではありません。
でも、私は全部が大好きです。しかしながら、泣く泣く外せと言われれば圏外曲です。
この曲は、良くも悪くも宮川節です。まったく典型的な宮川作品。
メロデーもそうですが、際立って色濃いのがこのアレンジです。
宮川ファンから叱られるかも知れませんが、この編曲ではレコードは売れません。
あまりにも幼稚すぎます。
もうこの時点でのピーナッツは歌手としての品格があり、もっとハイセンスの筈。
これはピーナッツ自身が歌うのを拒んだのではないかとさえ思います。
私もこの歌を家のスピーカーから大きな音でかけたいとは思いません。
ちょっと気恥ずかしいのです。他所の家にこれが聞こえたらかっこわるいのです。
さて、ここからが肝心なところなのですが、それでも大好きなんですよ。
他人にはとても薦められないけど自分が聴くには、ほんとうに大好きなんですよ。
ウチの愚妻が、とか言っても奥さんが好きだし、自分ではその容姿も気に入ってても
他人に家内が一番可愛いなんて言えません。自分だけ良ければそれでいいのです。
もう全然品のないアレンジで、他の誰も真似したくないような無骨さ丸出しだし、
テレビ番組なんかで「珍曲」として紹介されてしまいそうな、おいおい、という感じ。
だけどこれ、先生は一所懸命に作って編んだに違いないのです。「適当に」じゃない。
大真面目にその時の最善の仕事をされたことと思うのです。
ところが先生は「自分が好きなように、自分が気に入るように」しか作れないという
アーティストなんだと思います。人がどう思うか、なんて始めっから考えていない。
そのくせ、人に褒められるのが大好きで、特に、ザ・ピーナッツに、これ最高!
なんて言われると天にも昇るような嬉しさだった、とか。
ピーナッツが引退する時にも、引退という形は形として、一年にいっぺんぐらいは
素敵なコンサートを一緒にやろうよ、そしたら、僕は寝ないでも書くからさ、と、
こっちまでが、うるうるするような発言をされていましたが、そんなにピーナッツの
歌が芸が宮川先生にとって貴重なものだったのか、そこを掘り下げたいと思うのです。
実は先生は大変に自己中心的な発想しか出来ない、そこがまた愛すべきお人柄である。
そのように私は認識しているのです。
他人へのサービス精神が旺盛なのではなくって、単に楽しいからそうしてるのでは?
と思うのです。ウケると面白くてしょうがない。自己満足の世界だと思います。
ザ・ピーナッツは比較的裕福な家庭に生まれて、基本的にのほほんと育ってしまった
普通のお嬢さんだと思うのです。だから、お世辞やおべんちゃらは言えないコンビ。
それだけに辛らつな感想もあったでしょうが、二人に、これ、素晴らしいアレンジ!
なんて褒められると、もう天使に言われたように感じられたのではないでしょうか?
先生のお仕事の陰には、その褒め言葉が何よりの原動力だったのではないでしょうか?
何時までたっても相変わらずピーナッツ、ピーナッツってテレビで言い続けるのは
先生の深層心理に、ああ、あの時は嬉しかったな〜という思い出がいっぱい詰まって
いるからではないでしょうか?
宮川先生がドリームボックスの監修をすることになって、キングレコードの倉庫から
発掘されたこの歌もきっと二人に気に入ってもらえる事を期待して作ったのでしょう。
結局、埋もれてしまったわけですが、曲そのものは、その思いが十分に伝わってくる
先生のけなげで一途な面がとても微笑ましくて悲しい程に愛らしい歌です。
投稿日:2003/07/05