■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

ジューン・ブライド  1964.05
   作詞:岩谷時子 作曲・編曲:宮川 泰
   演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1964.03.13 イイノホール

    

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この曲を作られた頃の宮川先生は波に乗ってました。次々と名曲を量産しています。
この「ジューン・ブライド」も大変な名曲だと私は思うのですが、世間では一向に
流行する気配もありませんでした。
近年になって昔の曲が見直されて、リバイバル・カバーされたりもするのですが、
そういうのは昔もそれなりに流行った歌ばかりなので、再発見というほどのことは
なくて、単に昔こんなのがありました、というつまらない発掘に留まっています。
本当の耳や音楽の素晴らしさを感じる感性は大衆(愚衆)にはないのでしょうね。

ヨーロッパでは6月は結婚式日和なんでしょうが、日本は梅雨の季節なので、もし、
「ジューン・ブライド」が当たったら、結婚式場も喜んだと思うのですが、この曲の
ヒットはなくても、別のルートからだと思いますが、かなりこの言葉が一般化して、
6月の花嫁は幸せになれるというので、今では予約いっぱいの人気が出たらしいです。
自分が無知だっただけかも知れませんが、ザ・ピーナッツ「ジューン・ブライド」の
タイトルだけで、当時はその意味がわかった日本人は少なかったと思うのです。

岩谷時子さんと宮川泰さんは、この<6月の花嫁>という想定が気に入ったようで、
当時の日本ではあまり聴き慣れないこの言葉を歌にしようと思い込んだみたいです。
レコード発売には至らなかった「6月の花嫁」という作品も作り、録音まで済ませて
いたのに、なぜか発売はされませんでした。
今は、この未発表曲もCDで聴くことが出来ますが、作詞・作曲の設定は瓜二つです。
そうとうな思い込みをここに感じます。

詩も素晴らしいし、曲も素敵だし、アレンジも曲と一体化してメロディー・ラインが
歌の部分に直結するという編曲と作曲の分離のしようがない滑らかさも心地よくて、
ピーナッツの歌唱も圧倒的に可憐で、いかにもバージン・ロードを歩む花嫁さんの
イメージが伝わってくるし、嬉しく楽しい瞬間なのに、どこか哀感も滲み出るような
歌声がなんともいいない程いいんです。
演奏もゴージャスというのではなくて、弦楽器とピアノ主体のしっとりした荘厳さも
感じさせる仕上がりですが、奥に混声合唱団が隠し味に使われているところなどは、
大変贅沢な布陣でもあり、録音も全体にオフ気味で楽器の音を捉えるのではなくて、
全体の響きと空気感を見事に収録していて自然です。

こんなにも素晴らしい要素が組合わさっているのに、なぜ、流行らないのでしょうね。
私は、このストレスに30余年間、悩まされ続けました。
何故、みんなはわからないんだろう。ちゃんと耳が付いているのか? 心がないのか?
この曲に限りませんが、宮川先生がザ・ピーナッツに贈った歌は全部名曲です。
そんなことはないんじゃないの? それは貴方の感性が悪いだけ。断言します。
(こういうのを思い込みというのだろうか:笑)
(2005.5.15記)

このジューン・ブライドのレコード・ジャケットは専用に印刷されたものが
使われていまして、かなり力の入ったセールスを目論んだと思われるのですが、
その努力もあまり報われなかったようで残念な曲です。
せめて紅白で歌われるような評判が出たら良かったのですが....
「恋のバカンス」と「ウナ・セラ・ディ東京」の狭間に入った感じでした。