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♪昨日の恋   1970.09
   作詞:岩谷時子 作・編曲:宮川泰 演奏:記載なし

  

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★ ★★★★

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2006年9月6日に発売された「ザ・ピーナッツ sings 宮川泰」に初めて収録
された初CD化曲。筆者はこのCDで初めてこの曲と対面した。

  1970年9月28日に産経ホールで催された「宮川泰リサイタル」の際に
  書き下ろされた新曲。作詞の岩谷時子も会場へ駆けつけ、宮川の晴れ舞台を
  祝った。同じ年の12月にアポロンから8トラック・テープのみで発売され
  た貴重なライブ音源が、36年の時を経てここに復活。もちろん今回が初C
  D化となる。

これが、CDに添付されていたライナーの全文であり、私もこれ以上の情報をこの
曲に関して持っていなかった。
さて、初めて聴いたわけだが……なんかなあ〜という感じ。
ものすごく下手なザ・ピーナッツの歌というのが第一印象。
こんなに出来の悪いザ・ピーナッツは聴いた事が無い。そういう意味で衝撃的だ。

きっと何かの事情があるのであろう。ライブ録音だからといってザ・ピーナッツの
歌がこんなに低いクオリティになるような歌手ではないのだから。
その事情とは恐らく二人に譜面や歌詞が届いたのが本番直前だったのではないかと
想像するのである。(あくまで推測にすぎないが……)
舞台では譜面を手に持ってか、譜面台を置いて、それを見ながらという情景が思い
浮かぶのである。

楽器を演奏する奏者の場合はプロであれば、ある程度は「初見」でもいける。
しかし、それは弾いた楽器が音を出すのであるから可能なのであって、歌の場合は
歌詞の理解と音符の解釈を同時に進行しなきゃいけないし、ソロの場合は初見での
演奏はまず考えられない。
ザ・ピーナッツがデュオでなければ間違って歌っているわけではないのだから全然
問題にはならないのであるが、とにかくニュアンスが揃っていないのだ。
これではザ・ピーナッツとしての魅力が発揮されていない。

普段、ザ・ピーナッツの歌声が揃っているのは、双子だから当たり前なんだろうと、
それを賞賛しつつも、何の苦労もなく合わせらていられるというのが通説だろう、
演出的に声を揃えてしゃべってみたりするから、なおのことそう信じているだろう。
しかし、この録音を聴くと、如何に合わせることに普段から腐心しているのかが、
わかろうというもの。
歌声を揃える。微妙なニュアンスまで揃える。これは練習の成果なのであって曲が
変れば、その都度、合わせることを練習するのだ、ということがわかる。

演奏はリハーサル一回でもやっていれば十二分だから、立派な演奏である。
オーケストラの編成も堂々たる陣容のようだから、歌が聴き劣りしてしまう。
残念な出来であるが、ザ・ピーナッツは天性の才能ではなく練習によって培われた
技術の発揮だったのだということが図らずも証明されたようにも思う。

ここで、掲示板に書いた内容をここに転載しておく。
過去の掲示板ログなど殆ど参照されることがないだろうと思うからです。

研究しよう ピーナッツということで、宮川先生の作曲年をグラフ化してみましょう。
 1959年(昭和34年)編曲のみ
 1960年(昭和35年)編曲のみ
 1961年(昭和36年)●●●●
 1962年(昭和37年)●●●●
 1963年(昭和38年)●●●●●●●
 1964年(昭和39年)●●●●●●●●
 1965年(昭和40年)●●
 1966年(昭和41年)●●●●
 1967年(昭和42年)●
 1968年(昭和43年)●●●●●
 1969年(昭和44年)編曲のみ
 1970年(昭和45年)●
 1971年(昭和46年)●
 1972年(昭和47年)編曲のみ
 1973年(昭和48年)編曲のみ
 1974年(昭和49年)編曲のみ
 1975年(昭和50年)●●

最初の2年間はザ・ピーナッツへの(以外にもですが)作曲作品はありません。
編曲のお仕事だけでしたが、昭和36年から作曲をザ・ピーナッツ向けに始めて、
これが評判良く、成功したので、コンスタントにオリジナル作品を書き続けます。
しかし、昭和43年でパタッと作曲が中断します。
この時点での最終のシングル盤は「恋のオフェリア/愛のフィナーレ」という名曲の
カップリングだったのですから、何故ここで中断してしまうのか私にはわかりません。

素晴らしい歌ばかり作っていた筈なのですが、大衆の好みには合わないとナベプロが
判断して、他の作曲家にザ・ピーナッツの歌の作曲を依頼するようになったもの、と
思うしかないのですが、結果として、まあまあ、それなりの曲が出来てきていたので、
方針が間違っていたと言い切れはしませんが、それが本当に良かったことなのか……
私には疑問です。後半も全部、宮川作品で占められていた方が私には魅力があります。

この「昨日の恋」は、そんなブランクの後なので、元レギュラー選手がベンチに居て、
代打で出て来て打席に入ったような感じで、一発できめろ、と言われたようなもので、
結果として、「いい当たり」にはならず、セカンド・ゴロで打ち取られたみたいです。
どうも、ザ・ピーナッツも宮川作曲も本来の調子じゃない曲のような印象を受けます。

(記:2006.9.12)