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♪プランタン プランタン    1961.3放送
   作詞:岩谷時子 作・編曲:宮川泰
   演奏:シックス・ジョーズ
   

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★★★★ ★★★★★

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この曲も生まれた背景などについては、こちら↓を先にご覧下さい。
http://peanutsfan.net/KICS1408.html

このCDの解説にも書いてありますが、1961年3月に放送されたこの曲は、
ピーナッツのオリジナル曲としてはもちろん、判明している宮川の作曲遍歴でも
もっとも古い作品にあたります。ということで、宮川さんの処女作となります。
これを聴いた人はまず第一印象として、なんと少女趣味というか乙女チックで
これでは女学生愛唱歌のようではないかと感じられると思うのです。
ここには生い立ちの秘密のようなものが秘められているように感じます。

ネット記事で宮川さんがお母さんについて語っている部分を抜き書きしてみますと、

子供当時のエピソードとして、お母様がいつも子守歌を唄って下さったそうですが?
「あれはうるさくてまいったなぁ。(笑)皆んなが寝て、電気を消してから『ローレ
ライ』とか、女学生愛唱歌集なんかを唄いだすんですよ。(その頃は)うるさいなぁと
思ったけど…おふくろだからしょうがないかって。(笑)僕がもうプロになってからも、
皆んなが寝静まると自分の趣味で唄いだすんです。それが非常に心に残っていて……
面白いおふくろだなぁと思っていました。」

これですよ、きっと。柔らかい子供の脳への刷り込みなんでしょうよ。
あまり一般的には宮川さんのイメージとは方向が違うように思われるかも知れないど、
宮川さんの作る曲は本質的に学校の音楽の時間に教えられる数々の名曲と構成が同じ。
つまり、斬新ではなくて非常に古典的な骨格から成立しているのです。
音楽形式というものは、初めに形式があって、それに倣って確立されたものではなく、
自然発生的にクラシック音楽などでも形が出来て来たのです。
だから宮川さんの作品には構成的に無理がない。極めて自然であって、人間の感性の
根幹を成しているものとすんなり合致するのです。例外はひとつもありません。

それと作詞をされた岩谷時子さんは、神戸女学院を出て宝塚歌劇団出版部に就職し、
この曲の作詞をされた時点では越路吹雪さんと上京して東宝文芸部に所属してました。
宝塚歌劇というのは、あの手塚治虫さんも影響を受けているように一種の幻想空間。
少女趣味の極みであり、乙女心の象徴でもあります。
このお二人が妖精のように可愛らしいザ・ピーナッツに作品を提供するとどうなるか、
それは、こうなるのでしょう。必然性がこんなに感じられるのは当り前じゃないかな。
むしろ「恋のバカンス」などの方が、ちょっと変わったのをやってみようよ、という
挑戦であったように思うのです。

宮川泰さんにはもうこの時期から関心が深くて、私には大変な有名人でありました。
そりゃレコード盤を買ってくれば、どれにもお名前があるんだから当然でしたよ。
ザ・ヒット・パレードではザ・ピーナッツからは眼を離しませんが、宮川さんにも
着目していました。ピアニストですからね。今から思えば贅沢な番組です。
そういえば渡邊晋さんのベースのアップって多かった。社長を撮ってどうするの??

早朝のラジオ番組だったという背景もあったと思いますが、ほのぼのとした健康的な
作品が多かったと思います。四季に因んだ歌も多くあったと思います。
このCDに収められた歌だけが良いというわけでもありません。氷山の一角ですから
他のが聴けないのは勿体ないことですが、ままならないことは世の中によくあること、
こうして聴けただけでも最高に恵まれているし、人の心を掴んだからこそこのように
個人的に大切な思い出として録音テープを残されたのでしょう。

なんでもお金お金という今のご時世では起こり得ない、あの時代だからこそ残された。
流行らせなきゃ金にならない、といった世界とは隔絶したピュアな温もりの桃源郷が
ここにあります。岩谷時子、宮川泰、ザ・ピーナッツでなきゃ成り立たない世界です。
「プランタン」とは「春」のことですが、ザ・ピーナッツと同じで一卵生双生児の
女の子を主人公にした小説「小春日和」のこともちょっぴり思い出しました。
この本の詳細はこちらを↓↓↓ご覧下さい。
http://peanuts2.sakura.ne.jp/omotya/koharu.html

(2009.01.02記)


<付録>
この「ニッポン放送だよ、ピーナッツ」の収録曲の多くは皆様と同じで、リアル
タイムでたくさんの思い出があるわけじゃなくて、初耳という曲が多いのです。
その為、あまり書く内容がありませんので、付録で短期連載コラムをおまけで
付加します。

ザ・ピーナッツ萌え〜(その1)

なんだか若者に媚びるように「萌ぇ〜」なんて書いていますが、実際ファン心理と
いうものを表現するには、こんなに適切な言葉が過去にはなかったと思うのです。
若者文化というものは決して無視出来ない、無視しちゃいけない発明発見があり、
関心を持って勉強すべき世界だと私は思います。

実は昨年、「電波男」(講談社文庫/本田透著)という591頁もある本を買った。
本田透ってアニメ映画にもなった漫画「フルーツバスケット」の主人公のお名前と
一緒だなあ(そういうことを知ってる60過ぎの爺さんも珍しいか)なんて思って
いたが、無関係らしい。
この本は「オタクによるオタクの勝利宣言書」なのだそうだが、中身が執拗に濃く
大変興味深い。用語解説の類いも実に充実しており、なんでそういう言い方をする
のか本質的な理由が鮮明にわかる。一種の現代用語の教科書でもあった。

人間の脳なんてものは100年前だって殆ど同じであろうし、若者とは言いながら、
頭脳構造は私と何も変化したり進化したりしているわけではない。
だからオタク文化というものは決して新しいものじゃなく、自分が歩いて来た道の
単なる「言い換え」に過ぎないということもわかった。
構造もそっくり同じ事をやってるのだ。歴史は繰り返されているだけなのだ。

SF→ロボットアニメ→キャラ萌え(一般的オタクコース)
SF→特撮映画→小美人萌え(=ザ・ピーナッツ・ファン・コースの一種)

なんとまあ、ぴったり一致するのであろう。新人類なんて言葉もあったけど結局は
人間の考える事、やる事、変化はないのである。

<以下>ザ・ピーナッツ萌え〜(その2)へつづく。